第二十五稿 だって……幸せな気持ちになれるんだもん ★

「私の知ってるビジネスホテルとは違う……!」


 遠坂さんが口元に手を当てて唸る。


「うわー、なんかすごい。ねえねえ、すごくない? とにかくすごいところ決定!」


 語彙力の壊れた私は、この興奮を伝えるべくスマホで写真を撮っている。


 そんな感じで、部屋に入るのと同時に私達はそれぞれに反応を示した。

 想像していたのは、あからさまにピンクピンクしていてそういったムードの漂う一室だった。けれどここは、明るくおしゃれな雰囲気に包まれていて普通に女子会などができそう。

 間違いなく、私のラブホテルというものへの勝手なイメージが壊れた瞬間だった。


「さ、日向。脱いで脱いでお風呂いこ~」


 早速、濡れた体を温めようと遠坂さんの衣服を脱がせてあげた。家のとは違って、浴槽は広々としていて2人一緒に入っても余裕がある。


「ふあ~、泡風呂って初めて!」

「よし、あがったら備品とかチェックしてみよう……」

「ずいぶんと興味津々だよね日向も」

「このあと使えるものがあるかもしれないしね」


 彼女はじいっと私を見つめながら答えた。

 その様子から察するに私に何かをするつもりなのかもしれない。


「日向ってさ、いつもこういう時積極的だよね。どうしてなの?」

「前にも言ったけど、れながされるのを待ってるからだよ」

「え、私が?」

「やっぱり気付いてないんだ。いつも期待してるような顔してるし、何してもまったく抵抗しないでしょ。だからだよ?」


 くすっと彼女は笑っている。


「ねー、それって私が誘ってるように見えてるって事?」

「だったら今日はれなが私を攻めてみる? 私は別に構わないけど……」


 本当にできる? と、その目線は語っているようだ。


「あ、言ったね? よーし、見てなよ。私だってやればできる子なんだから!」


 そう意気込んでお風呂を出て、私達はバスローブに身を包みくつろいでいる。

 遠坂さんが室内を物色している傍ら、大型のテレビを点けるとすぐに映像が流れてきた。


「うわ。あ、あんなの入るんだ。私には絶対無理かな!」

「れなでもよく濡らせば大丈夫なんじゃないかな。今度試してみようか?」

「え、日向ってそういうの持ってるの?」

「れなだって興味がないわけじゃないよね。どうなの?」

「まあ、うん。人並みにはあるけどさぁ……」


 などと画面を見て感想を言い合ったりしていると、遠坂さんがバスローブを少しずつ脱ぎ始めた。彼女は私の目の前までくるととして離れていく。私はあからさまに挑発されている。


「日向ぁー、えいっ!」


 テレビを消したあと、意を決して勢いよくベッドに押し倒すと彼女はやっぱり笑っていた。


「笑うつもりはなかったんだけど……ごめん。今のタックルさ、猪かと思った」

「え、ひどーい!」

「それでこのあとはどうするつもり……? もしかしてこれでおしまい? 代わってあげようか?」


 その言葉と表情にあてられたように、ちゅっちゅっと何度も口付けをして舌先で彼女の口内をまさぐる。それから時間を掛けてじっくりと彼女と混ざり合った。


「れなって本当キスが好きだよね」

「だって……幸せな気持ちになれるんだもん。日向はそういうの嫌?」

「そうじゃないけど、口じゃないところにもキスして欲しい」


 そうして、首筋を始めとして彼女の敏感な部分に舌を這わせると吐息が大きくなっていく。

 私が夢中になっていると、体を大きくびくんとさせた彼女は頬を赤く染めていた。


「れな、あとは私に身を委ねてくれればいいから……」


 反対に押し倒されて、結局私は火のついた彼女のされるがままになっていく。

 彼女のしなやかな指が触れると体中に熱が帯びていく。


「こういうの好きだよね」

 耳元で囁かれたまま、息はあがり頭がぼーっとした状態でもう何も考えられない。


「はーっ、はーっ……。ねえ日向、なんかいつもより激しくない……?」

「ごめんね、まだ足りない。でもやっぱりれなは悪い子だよ。まだまだおしおきしてあげるからね」

「あっ……。今はちょっと待って」


 その言葉が届くはずもなく、こうなった彼女はもう止められない。

 私達は深夜に及ぶまでお互いを求め続けた。

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