第5話
理不尽なことに振り回された時とか
じっとりした暑さで寝苦しい夜とか
私のなかにある残酷が
なけなしの優しさを凌駕する
そんなときはアタマの中で
壊して壊してコワシテ
自分のたいして大きくもない手で
壊して壊してコロシテ
飛び散る赤をなんとかこの視界に入れ
そこでやっと息をつく
妄想の世界は返り血で真っ赤で
どこで傷を負ったのか
傷をつけたはずの手からの血液で
さらに世界を赤く染める
ああ、いい景色だ
ニンマリと笑みを浮かべながら
私は赤い世界に浸る
そして手に入れた安らぎの中に
透明な涙が墜ちていくのを見る
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