雪華香理論

第1話

雪が降るときは、決まって透明の香りがする。




空気の濁った灰色の街は、


倦怠のにおいを常に纏っている。


ただ、年に一度あるかないかだけど、


如月の何処か1日だけ、


白く儚い夢が香るのだ。


空を見て、


暗い雲の一片に意志の強い光を感じると、


空気がすぅっと澄んできて、


持ちうるもの全てを情緒に振った結果、


感情が欠落したような冬の透明な趣きが、


鼻腔を鋭く貫いて、


甘い寂寥を残して、


あ、と今いちど空を見上げると、


白い精霊が舞い落ちている。


色のない世界が透明に色付く。 


音のない世界が鈴の音で満ちる。


無機質な世界が精霊の破顔でほころぶ。


たまの一瞬のご褒美である。


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雪華香理論 @k-y-o-

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