ロジャと戦ってみよう(2 / 2)
「──フッ!」
ロジャは鋭く吐き出した息と共に軽く跳ぶとギュルンッと宙で体を捻り、すべての攻撃を避け切った。それは剣士の動きではない……まるで、獣。そして、その体勢から繰り出されたのはおよそ剣技とは呼べない、しかし強力なカウンター。
「かはっ!?」
「ぐっ……!」
ヴルバトラは蹴り飛ばされて、俺はロジャの大剣でのカウンターを何とか防ぐ。とはいえ、それでも数メートルはノックバックさせられる。
「……ははっ。やっぱりダメだったか」
「……」ゾクゾクッ
……とはいえ、ロジャはすごく楽しそうにその髪を逆立たせていた。久しぶりの受け身に戦闘本能が刺激されたらしい。
「……シショー、もっと!」ワクワクッ
「はいよ」
追い求めた標的を目の前にして垂涎する獣のようなその笑み、そしてほとばしる闘気。ロジャの放つプレッシャーに振動する空気がビリビリと俺の肌を打った。
「……ヴルバトラ? まだやれるか?」
「ああ、当然だっ」
──そうしてチームアップした俺とヴルバトラで、ロジャに挑む戦いが続いた。
「テツト!」
「ああ、任せろ!」
俺がフォローしヴルバトラが攻撃し、またその逆もしかり。
「ヴルバトラ!」
「ああ!」
まさしく
「……むぅ」モヤッ
そんな息ピッタリな俺とヴルバトラに対峙するロジャはどこか表情が雲掛かる。多少は苦戦させることに成功している……ということだろうか?
「テツト!」
「ヴルバトラ!」
俺たちは絶えず、滞りの無い連携でロジャへと向かう。
……ああ、気持ちが良い。なんて動きやすいことか。
ロジャにはなかなか届かずとも、しかし俺たちの心は固く結ばれていた。思えば、俺はこの10年間ほとんど独りで剣を振るってきたし、ヴルバトラもきっとまた俺とは違った意味で孤高の存在だった。だからこそふたりで共に戦うこの瞬間が──楽しい。
「……テツト、貴君の心が私の中に入ってくるようだ」
「俺もだよ」
俺たちの剣技は次第に鋭さを増していき、ロジャの大剣を弾くほどになっていく。俺たちはまた一段階進化したのだ。ロジャもそんな俺たちを何だか攻めにくそうに──……アレ?
「……」ムッスゥ……
大剣を振るうロジャは、なんだかこれまでになく不機嫌そうだった。いつの間にか、ロジャから放たれていたプレッシャーも消え失せている。
……いったい、何が? でもこれはチャンスでもある。
「ヴルバトラ!」
「ああ!」
ヴルバトラは【辻斬り】でロジャへとスキを作る。
「任せろテツト、私が貴君の全てを支えてみせる!」
「……フンス!!!」ムカチーンッ‼
ヴルバトラの言葉に、強く反応を示したのはなぜかロジャの方だった。ロジャは大剣で大きな風を巻き起こしてヴルバトラの攻撃全てを無効化したかと思うと、獣のように俊敏に俺に飛びかかってきた──大剣を放り出し、素手で。
「シショーーーッ!!!」
「ふげぇっ!?!?!?」
ロジャのタックルがまともに俺の胸に突き刺さり、そのまま仰向けに転がされる。
「シショー~~~……」スリスリ
「……ロジャ?」
「……」フガフガ
ロジャは俺の胸に顔をこすりつけたり臭いを嗅ぐように顔を埋めたりして、ギューっと抱き着いてきた。
「い、いったいどうしたというのだ、コレは」
ヴルバトラが慌てて駆け寄ってくる。ロジャはそれを感じ取るや、ムスッとした表情に涙目でヴルバトラを振り返る。
「……ヴルバトラだけシショーと仲良いの、ズルいっ! シショーは私のシショーなのっ!」ウルウル
「もしかして、
「……」ムギュー
それきりロジャは抱っこ人形と化してしばらく動かなくなってしまった。
──そうして、今日の手合わせは中止となった。
ロジャはそれから丸一日俺に引っ付いて離れず、風呂やトイレにまでついて回ってくる始末だ。もちろん夜に寝る時も。
「シショー、いっしょに寝る……」
「はいはい」
まあこれはこれで、小さな頃のロジャを思い出すようで可愛いものではある。昔も、どこへ行くにも俺について来てほしがってたりしたからなぁ……。
「……」スヤァ
色んな意味でロジャには敵わないな、と改めて実感しつつ、俺は俺の腕を離さずに眠るロジャの頭を撫でるのだった。
==================
お読みいただきありがとうございました。
今回はここまでです。
次回はシバにフォーカスしたお話を上げられたらと思ってます。
またよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます