ロリ脱却同盟(2 / 2)
「キョンシーである
「おお、有るのか」
牛乳を飲む手を止め、イオリテは耳を傾ける。
……イオリテはいちおう地球担当の元女神、異世界の魔族についての知識は薄かった。ゆえに今後再び女神の座についた時の糧になるかも、と自分の知らない情報に対して少し貪欲になっていた。
「で、それはいったいどんな方法なんじゃ?」
「生命力あふれる男、つまりテツトお兄さんの
「聞くんじゃなかったのじゃっ!!!」
「濃く粘性の高い
「生々しいっ!!! いちおう我は食事中だということを忘れるなっ!?」
「なんや、そんなに毛嫌いするもんでもないやろ? ビジュアル的にはイオちゃんの持ってるそのミルクを飲むのと同じようなもんや」
「おえぇッ!? 飲み物に例えるなっ! もうコレ飲めないじゃろ!!!」
「ええ、もったいない」
メイスはイオリテから受け取った牛乳を一気飲みする。
「ただな、コレにはひとつ問題があるんや」
「問題だらけの間違いじゃろ?」
「それはな、結局テツトお兄さんとのエッチが必要になるってことや」
イオリテのツッコミは無視して、メイスは大きくため息を吐く。
「テツトお兄さんとエッチがしたいから
「それは真面目な顔して
「せやから、現実的に考えればふたつ目の方法に取り組むしかないんや」
「我のツッコミはことごとく無視でいくんじゃな? それならもうツッコまんぞ。サッサと言え。ふたつ目の方法とはなんじゃ?」
「ふたつ目の方法、それは【魔力操作】や」
「魔力操作……って、この前の戦いでテツトがやっていたヤツか?」
「まあ、広義の意味ではそうやな」
メイスは言いつつ、手のひらを上に片手を前に出した。するとボウッと、その手のひらの上に炎が立つように禍々しい魔力が現れる。
「これは魔王様の魔力……魔族の源となっている負のエネルギーや。
「……つまり、魔力操作によって体の構成を
「そうや」
メイスは頷いた。しかし、その表情は晴れていない。
「でもな、これにも問題があるんよ。そんな高度な魔力操作が
「……魔力操作に関してはそれこそテツトやロジャが超一流ではあるがのぅ」
「ま、できひんやろね。だって、自分の魔力を操るんというのと他人の魔力を操るいうんわ全く別の技術やろ?」
「そうじゃな。魔力は体の中を巡る血液のようなもの。他人の魔力を使えというのはつまり、他人の背中に手を当てるだけでその血液の流れをコントロールしろと言っているようなもの……つまり、限りなく不可能に近いことじゃ」
「せやろ? せやから、どないしたらええんやろか……」
メイスが空を仰ぐ。残念ながら(?)、イオリテの中にその答えとなるものはなかった。他人の魔力を操るなんて、それこそ神から与えられるチート能力か
「……あれ? 他人の魔力を、操る……?」
イオリテの頭によぎるものがあった。
「イオちゃん? どないしたん?」
「メイス……呪術神って、呪術神の正体ってなんじゃ?」
「え?
「なあ、魔王とは……お主ら魔族が言うところの【全ての魔族の源となる魔力】、その総称じゃろ? そこに意志なんてものはあるのか? お主が裏切ったと察知してお主を罰すような意志は存在しておるのか?」
「……聞いたことはあらへんけど」
「じゃあ、それはつまり、何かしらの意志がある何者かがメイスの中の魔力を操ってメイスの中に呪術神を構成した……ということではないか?」
「……! そうや、確かにそうや。
「そうじゃな。つまり、ソイツはもしかしたら他人の魔力を操作する力があるかもしれんということじゃ」
「その誰かの力を借りれれば、
メイスは勢いよく立ち上がったかと思うと、イオリテへと抱き着いた。
「うおっ、なんじゃ急に!?」
「おおきにや、イオちゃん! これで
「……まったく、テツトとまぐわりたい一心でそこまで必死になるとは……エロの生み出す活力ときたら絶大じゃな。」
イオリテは呆れ顔でメイスの背中をポンポンと叩いた。
「……でも、アレやな。これで
「我はよい。10年もすれば自動的に体は成長するんじゃからな。それより……メイスよ、お主なぁ。課題はまだあるじゃろう?」
「えっ? なんやろ?」
「決まっておろう。魔力を操作できる何者かの正体がわからんのと、ソイツを捕まえなければならんということじゃ」
「ああ、そういえばそうやね。魔力を操作できる何者か、か……」
メイスは腕組みをして考える。
「やっぱり、テツトお兄さんが
「そうじゃな、我もそう思っておったところじゃ」
イオリテは食べかけのままだった蒸しパンを全て頬張って、言う。
「まあ、次の目的が決まっておらんのだったら提言してみたらいいんじゃないか。謎の魔族の少女を探しに行ってはみんか、とな」
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今回はここまでです。
短編2つでした。
次回はロジャにフォーカスを当てたお話になります。
長編に関しては次は【精霊の森編】を予定していますが、まだしばらく準備に時間がかかりそうです。気長にお待ちいただければと思います。
また来週よろしくお願いいたします。
それではっ!
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