ロリ脱却同盟(1 / 2)

帝国最北端の街、オグローム。北の山から流れる川は澄んでおり、街の中央にはその水に育てられた豊かな緑を活用して作られた大きな公園がある。


そんな一角で、


「第1回ロリ脱却同盟会議~~~!」


チャイナ服姿でベンチに腰掛けるその少女──メイス・ガーキーは高らかにそう宣言した。


「──はぁ?」


その隣に座り、牛乳を片手に蒸しパンを頬張っていたイオリテが怪訝そうに顔を歪める。


「なんなのじゃ、いきなり……」


「せやから、ロリ脱却会議」


「はぁ……だからそのロリ脱却会議が何なのじゃ、と聞いとるんじゃが。くだらん話ならこの蒸し立ての蒸しパンが食べ終わった後にして欲しいのじゃ」


「その【オグローム限定ほっかほか蒸し立てパン】を奢ったのはわらわやないの。ちょっとくらい話に付き合うてや」


「これは買収だったのじゃっ!?」


「そうや? 知らんかった?」


「知るか! そういうのは先に言っておくもんじゃろうが!」


イオリテはひとしきりツッコミを入れると、大きなため息を吐いた。


「……で? ロリ脱却がなんじゃって? なんで脱却する必要があるんじゃ?」


「あ~……イオちゃんはそうか、そこからなんやねぇ」


メイスはやれやれといった風に肩を竦めると、


「ほら、わらわたちもテツトお兄さんとエッチしたいやない?」


「──ぶほッ!?!?!?」


率直すぎる問いかけに、イオリテが飲みかけの牛乳を噴き出した。


「あらま、大丈夫?」


「なっ、なっ、なぁッ……!?」


「『な』?」


「な、なんでそんなこと訊くんじゃっ! 別に我はそ、そんなことはぜんぜん、少なくとも自分からなんて、思ってないし……! だって我、元女神じゃし……!」


「女神って……そないな下手な冗談で誤魔化さんでええんよ? めっちゃ分かりやすいんやし」


「誤魔化しとらんッ!!!」


「ふ~~~ん」


勢いよく否定するイオリテに、メイスはニヤニヤと頷いた。


「はいはい、分かった分かった。イオちゃんは別にお兄さんとエッチしたいとは思っておらんと」


「そっ、そうじゃっ!」


「でもテツトお兄さんの方から求めてきたら? それでもイオちゃんは拒否するん?」


「──ッ! そ、それは……」


「ん? それはなんやの?」


「それは……求められるのは、その、やぶさかではない、というか……」


「ふむふむ、なるほどやね」


メイスは満足げにウンウンと頷くと、


「テツトお兄さんは強大な性欲リビドーの持ち主や。もしかするとシバさんたち4人では相手が足りひんこともあるかもしれんやろ? そんなとき……わらわたちの力が必要になることがあるかもしれん」


「それは、まあそうかもしれんが……でも言っておくが、テツトは本当に幼子には興味がないんじゃぞ? それをいったいどうやって……」


「せやから、ロリ脱却同盟が必要になってくるんや」


メイスは真剣な面持ちでイオリテの肩を掴む。


「なあ、イオちゃんお得意のゴッド魔術でわらわたちの姿を大人にはできへんの?」


「そんな都合の良い魔術が使えるわけないじゃろ」


イオリテが呆れ顔でため息を吐く。


「ま、我が女神の力の全てを振るえる状態じゃったらできんこともないがな」


「そうなんか……残念やわぁ。わらわたちは精神年齢的にはもう充分にレディなわけやし、体さえ大人になればテツトお兄さんを悩殺のうさつできると思うたんやけど……」


「そんな、単純な……」


と言いつつ、そう言えば今テツトと毎晩のように契り合っているシバやジャンヌ、ロジャ、マヌゥたちは全員、幼子のときにテツトと出会った少女たちだったんじゃよなぁ……とイオリテは思い至る。


そう考えればワンチャンスある気がしないでもなかった。まあ、いくらイオリテでも年齢の操作は本当にできないので歳を重ねるのを待つしかなかったが。


「他に何かいいアイディアはあらへん?」


「んー……アイディアというか、それ以前にそもそもの疑問なんじゃが」


牛乳をチビチビと飲みつつ、イオリテは首を傾げる。


「メイス、お主はキョンシーじゃろ? 大人の体に成長することができるのか?」

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