原初の沼
──テツトがオグロームへと向かうのと同時刻。
帝国からは遠く、北東の大地に広がる大きな森。訪れた者は二度と帰らないゆえに、【精霊の森】と呼ばれたその奥地にて。
「──精霊女王様、この森への魔王軍の攻勢が弱まっているようですが……こちらから反撃の一手を打つべきでは?」
「ならない……それは」
中性的な少年の姿をした家臣による言葉に、精霊女王と呼ばれたその雪を被ったように白い少女は首を横に振った。
「だって、かもしれない……何かの罠。それに、居るのだろう……まだあの
「はい、それは……まだ居ますが……」
「勝てない……我々ではヤツには。対抗策が無い……この世の
少女はフゥとため息を吐く。
「……せめて、話は別なのだけれど……【原初の沼】に
「それは例の……神話のですか?」
「……そう」
少女は頷いた。
──この世界に伝わる神話。【歴史の精霊】によって書かれた聖典の序説には、ごく少数の者しか知らない隠された文があった(以下、一部を抜粋)。
『世界にはまず、
『神は
『1日をかけ、
『2日をかけ、沼は空と大地、海を創り出した』
『3日をかけ、大地は山と木々を──(以下、略)』
それは、世界創造にまつわる文だった。この世界において、沼とは【この世すべての事象の起源】だった。この一節で現れる【沼】、それこそが──
「【原初の沼】……ウワサ通りであれば、それはこの世の理を生み出したモノであり、すべての理の外側にあるモノ。それゆえに原初の沼と縁のある精霊の前には、この世の理を超えようとする
「そう」
家臣の言葉に、精霊女王の少女は頷いた。
「しかし、ほとんどが消失した……【原初の沼】にまつわる精霊は」
「確か数万年前にこの森を出て、それっきりなのでしたよね……?」
「そう。たぶん、滅んだ……外界で」
「だとすれば……精霊女王様、我々はこれからどうすればよいのでしょうか?」
家臣からの問いに精霊女王の少女は腕を組み、考え……
「……解決しないかな……1万年くらい寝てたら、勝手に……」
「精霊女王様……あんたってヤツはねぇ……」
精霊ゆえのマイペースさと他力本願な女王の姿勢に、家臣は大きなため息を吐いた。
──そんな感じで、精霊の森は今日も人知れず滅びの危機に
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
第3章スタートです。
たくさんの応援・フォロー・☆評価など、ありがとうございます!
★1点ご報告です。
本作、性表現の件で運営様に怒られてしまいました。しかしながら直ちに素直にごめんなさい&本文修正を遂行した結果、許していただけました。
その修正対応により、一部のエピソードの表現内容を2023/04/20付けで変更しております。ご承知おきください。
なお、この修正によるストーリーや設定には一切の変更が無いため、読み直しなどは必要ございません。
いろいろとご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、引き続き本作をお楽しみいただければ幸いです。
以上報告でした。
次の本編【奪還作戦 後編】は4/28(金)に投稿予定です。
日が近づいたら改めてこちらも近況ノートで報告します!
また、
「おもしろかったよー」
「次も楽しみだよー」
と感じていただけた方は、ぜひフォローや☆評価もよろしくお願いいたします。
来週もまた引き続き物語をお楽しみいただければ幸いです。
それではっ!
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