非モテ俺、【女の子にモテる】転生特典もらっても非モテ。もうモテ路線は諦める。それより子供たちが困ってるみたいだし助けに行くとするか（10年後、何故か急にハイスペック美少女たちにモテ始める）

奪還作戦 前編（7 / 7）

「沼……だと……ッ！？」

俺の叫んだ言葉に、ドグマルフズは表情を歪める。

「まさか、貴様の精霊……【原初の沼】と縁（えにし）が……！？」

「ハァッ！？　【原初】っ？　なんだそれは知らんッ！！！」

知らんが、でも攻撃が通るならば──勝てる。

「マヌゥ！　準備はっ？」

『はいっ！』

俺の手に握られるのは、黄金色に輝く西洋風の剣──【百戦百勝の剣（エクスカリバー）】。これは、ドグマルフズへとまったく攻撃が通用しないと分かったときから少し時間をかけて、俺のイメージにある効果の剣をマヌゥに沼の中で生成してもらっていたものだ。

……ドグマルフズが【無敗】だなんだって言ってたからな、対抗するなら百戦百勝──つまり、【常勝】だろう！

「ハァァァ──ッ！」

俺は脚に溜めた生命エネルギーを爆発させるようにして、超加速でドグマルフズの背後を取る。そして振るう──百戦百勝の剣（エクスカリバー）を。

「俺が、個で圧倒されるなど……あってたまるかぁッ！」

ドグマルフズが俺の動きに反応し、黒剣を振るう。しかし、百戦百勝の剣（エクスカリバー）は止まらない。その黒剣を容易く打ち砕く。

「セェェェイッ！」

「ぐはっ！？」

剣を振るった勢いをそのまま乗せた俺の回し蹴りがドグマルフズの体の芯を捉え、大きく吹き飛ばす。……どうやら、沼の上でなら打撃でもダメージが入るようだ。

「……ッ！　ならばッ！　こうすればいいッ！」

ドグマルフズは翼を広げ、大きく飛び上がった。

「俺が近距離戦しかできないとでも思ったかッ！？　さすがの貴様の精霊も、この空までは沼で覆えまいッ！」

「……ああ、そう考えるだろうな。だからお前が空中へと逃げるだろうと、【俺たち】はそう読んでいたよッ！！！」

ドグマルフズが逃れた宙の、さらにその上空がキラリと輝いたかと思うと──極大のビーム魔術がドグマルフズを飲み込み、地面へと向かって撃ち放たれた。

「──なぁッ！？」

「フハハハハハハァッ！！！　さっきは良くも我のか弱い体を地面に叩きつけてくれおったなぁ、魔王軍の手先めッ！」

イオリテだ。イオリテが上空から光り輝く一撃を放っていた。

「女神の怒りをとくと知れぇいッ！」

「いっ、いつの間に空に……！」

「そんなもん、さっきテツトが叫んでおったからに決まっておるわっ！　『コイツは、沼の上だと攻撃が通るようになるんだッ！』ってのぅ。それが我に向けた合図なのは明らかじゃろうて！」

……そう。イオリテ、よく気が付いてくれたよ、ホント。戦闘中にバカみたいに分かりやすい合図を出すわけにもいかないからな。

だから俺はあたかも【弱点を発見して興奮したバカ】みたいに大きく声に出して、ドグマルフズの弱点を明らかにした。その意図を、後方に退避していたイオリテは正しく汲（く）み取ってくれたわけだ。

「くっ、クソ……！　こんな光線ごとき、跳ね返して……！」

「フハハハァッ！　抵抗なんぞ一切合切（いっさいがっさい）、無駄なのじゃッ！　我のこの攻撃は世界最強なのじゃあッ！」

それはイオリテによる神魔術、【エクストラ・ウルトラ・ゴッドバースト】。イオリテが言うに『超最強威力のスーパービーム神魔術なのじゃ！　相手はたいがい死ぬが、我もその反動でバーストが少しの間撃てなくなるのじゃ』なのだそうだ（壊滅的なネーミングセンスと効果は置いておいて、威力はロジャの本気の一撃並みに高い）。

「ぐっ……こんなことがあって、いいワケ……！　俺は【無敗】を手に入れ、ようやく、ようやく……総司令官（ここまで）に至ったのだぞ……ッ！」

そしてとうとう、ドグマルフズの体は地面──マヌゥの展開した沼へと押し付けられる。

……これで、再び攻撃が通る状況になった！

「今じゃテツトッ！」

「分かってる！　ありがとう！」

俺は、百戦百勝の剣（エクスカリバー）の大きく振りかぶり、跳ぶ。そしてドグマルフズへとひと息に迫る。

「これで終わりだッ！」

「クソッ……！　しかし、ここで俺が倒れようとも、魔王様の能力（チカラ）があれば……！」

「知るかッ！　何が来ようが、俺たちは敗けんッ！」

光り輝く剣が、ドグマルフズの首を刎（は）ねる。その頭と胴体が2つに分かれると同時、その体は塵のように消失した。

「……ふぅ。なんとか、勝ったな……」

『お疲れさまでしたのですぅっ！』

「ああ、マヌゥもお疲れ様。今回も助かったよ」

俺は百戦百勝の剣（エクスカリバー）を担ぎ、額の汗をぬぐう。

「テツト、お手柄じゃったのぅ。さすがに今の相手は……お主以外では倒せんかったじゃろう」

「まあ、そうだね。ただ本当にお手柄だったのは俺っていうか……マヌゥの方だと思うけど」

『？』

マヌゥは俺の中でキョトンとした反応をしているが……しかしやはり、あの沼といい、想像したものを思い通りに何でも創り出せる能力といい、凄まじいチートだと思うんだよな。精霊とか精霊じゃないとか、そんな種族差を抜きにしてもだ。

……確かドグマルフズはそんなマヌゥのことを【原初の沼】の縁（えにし）がどうこうって言ってたけど……結局なんだったのだろうか、それは。

「しっかし、今のはさすがに魔王軍の幹部級じゃろう？　もしワーモング・デュラハンとやらがこのレベルの強さであれば、ヴルバトラとやらの方は相当厳しい戦いになるのではないか？」

「ッ！　そうだった！　こんなところで油を売ってる場合じゃなかった！」

俺たちはオグロームに向けて、再び走り出すのだった。