奪還作戦 前編(3 / 7)
──待機部屋に来て1時間。
俺とマヌゥは互いを求め合い、何度目かの絶頂を迎え、ようやくその行為を終えた。
「マヌゥ、契約の準備は……?」
「大丈夫なのですぅ」
互いに汗だくの肌を重ねたまま、俺たちは言葉を連ねる。
「作戦が終わるまでの間……俺に力を貸してくれマヌゥ」
「よっ、喜んで……誓いますのですぅ」
すると、以前と同じ──マヌゥの体が光った。直後、マヌゥは俺の体へと吸い込まれるようにして消え、俺の体に光り輝く粒子が宿った。
「成功、か……」
『はいぃ。以前と同じ感覚ですぅ』
つつがなく融合が成功する。これでまた、俺はマヌゥの光の粒子──生命エネルギーを使うことができるようになったハズだ。
……この前の行為中のことをがんばって思い返した甲斐があったな。俺が何かを頼み、マヌゥがそれに対して『誓う』と言ってくれたら契約が成立するみたいだ。
「今回は時間制限……というか作戦が終わるまでっていう制約を設けてみたけど、それが正しく機能するか確かめたいところだな」
『ですねぇ』
マヌゥと脳内でそんな会話をしていると、
「ごっ主人~~~! 来たよぉ~~~!」
シバたちが食堂から戻ってきたようだ。この待機部屋へとはその鼻で、俺たちのニオイを頼りにしてきたのだろう。
「うわぁ……! 部屋、すごいニオイがこもってるよ……」
シバは舌なめずりをしつつ、俺たちを見やる……っていや、マヌゥは今俺の中にいるわけだし、俺を見てるのか。
「ご主人、ボクたちもそのぉ……イイかなぁ?」
「いや、今はマヌゥと融合中だから……」
『私は別に気にしないのですよぉ?』
「……じゃあまあ、1回くらいならいいぞ」
「やったぁっ! うわぁ~~~いっ!!!」
シバが俊敏な動きで俺に向かって飛びこんでくる。マヌゥと融合中のため、シバの動きは何とか目で追える……キャッチ。
「あ、そういえば……」
「どうした?」
「さっきまでドアの前にヴルバトラが立って居たけど、ご主人に何か用事だったのかな?」
「えっ……?」
「なんか足をモジモジさせてて息も荒かったし、顔も赤かったし……でも声をかけたら『なんでもない』って言って走ってっちゃったよ」
……おかしいな? ヴルバトラは1時間前に俺たちをこの部屋へと案内してくれてから、すぐに自分の部屋に帰ったはずだったけど。
「まあ、あとで食堂にでも行けば会えるだろうし……用事があったならその時聞けばいいか」
──ちなみにその後、俺はイオリテを除くみんなと3回ずつエッチしたので、食堂へは行き損ねた。
* * *
──帝国による作戦開始1時間前のこと。
オグロームの街。ワーモング・デュラハンが居城とするその建物の広間に、魔王軍総司令官であるその魔族……ドグマルフズはいた。
「──というわけだ。対帝国の優先度が急激に上昇した」
「【魔力波警戒レベル超級】……それほど突然に生まれるモノなのカ……? 帝国との戦争が小休止してまだ数カ月だゾ……?」
ワーモング・デュラハンは宙に3つ浮かぶ自身の頭のひとつ、司令塔のソレの表情を訝しげに歪めた。
……ワーモング・デュラハンの記憶によれば、確かに先の戦争でいくつか強者は居た。七色に輝く魔術を使う者、そして勇者。そんな彼らでも魔力波警戒レベルは小級であり、自らと同格程度なのだ。それ以上の者など、目にしたことがなかった。
「お前も知っているだろう、いつだって
「……【無敗】の
ワーモング・デュラハンの言葉に、目の前のドグマルフズは得意げになるわけでもなく、笑みすら浮かべずにただただ頷いた。
「俺は上を目指しても敗け続ける半生だった。だが、それでもありとあらゆる手段によって無敗を求め続けた結果……唐突にこの境地に至った」
「その力に目覚めて数カ月で当時の【絶死】の
「そう、先が読めない。ゆえに今の帝国を圧倒している状況がこれからも続く保証などどこにも無いのだ。だからこそ、圧倒している今……余剰戦力すべてを動員して帝国を潰す」
ドグマルフズは自身の手のひらに拳を討ちつけながら、ニヤリと牙を剥く。
「突如現れた超級の敵は俺が直々に始末する。【無敗】ゆえに、俺が敗けることはない。すなわち、時間さえかければ勝利するのは絶対に俺だ」
「俺はどうすればいイ?」
「ワーモング・デュラハン、お前はこのオグロームで俺の代わりに司令官を務めろ。もしもオグローム市街で戦闘になる場合は……さっきお前にやったソイツらを使え」
後ろを振り返る。ニヤニヤと、よっぽど自身の実力に自信があるのだろう魔族・モンスターたちが不敵な笑みを浮かべていた。
「【全10体】……すべて次期の幹部候補たちで、対帝国戦線とは別の戦線に向かう予定の者たちを引き抜いてきた」
「獣王国、精霊の森、海神庇護下国、竜の里の戦線からカ……? 反感を買っただろうニ」
「他の戦線を厳しくしてなお、今この時に帝国を堕とすことに意義があると判断した」
ドグマルフズは決然とした表情で言った。
「そうカ……まあドグマルフズがそう言うのであれば信じよウ。それデ、そのせっかく引き抜いてきてもらったコイツらだガ……使えるヤツらなのカ?」
「──アンタの頭、ひとつ潰して証明してやろうか?」
幹部候補のひとり、牛の頭を持つ巨大な魔族がワーモング・デュラハンを挑発するように前に出てきた。
「使えるか使えないかだったらアンタには使えないだろうね。なんせ、オレの方が強いだろうしなぁ……アンタの器にゃ納まり切らねぇのさ」
「……とんだ跳ねっ返りが紛れているようだナ。どれ、立場を分からせてやろうカ」
「やれるモンならやってみろよ、首無しのオッサン」
「──やめろ、お前ら。魔王軍の威光に泥でも塗るつもりか?」
ドグマルフズが間に入ったことで、その2体は不満げにではあったが互いに離れた。
「オグロームの防衛戦力としては充分なくらいだろう。幹部候補を上手く使って守りを固めろ。俺は連れてきた魔王軍のモンスターたち……【全5万】を率いて1時間後、帝国を攻める。仮に超級がオグロームに来たらその遅滞に努めつつ俺を呼び戻せ」
「……チッ、結局このオッサンの下かよ……」
牛頭の男は舌打ちをしたが、それ以上は逆らわなかった。
「さて、状況を開始するぞ。帝国は
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