夜を過ごす(with ヒロインズ)※性描写あり

ご飯を食べ終わるやいなや、それは始まった。


「ごっ──しゅじぃ~~~んっ!!!」


シバが正面からぎゅーっと抱き着いてくる。


「ご主人がマヌゥと合体? 融合? してからずっとデキなくて寂しかったよぉ~~~!」


「いや……でも3日しか経ってないぞ?」


「3日は長いよ~! レスだよ~!」


「いや、レスではないと思う……」


──デキる、デキない……いったいなにが? それはもちろんエッチなこと全般である。


俺はマヌゥと融合して以来、なるべく他の女の子との性的交渉を避けてきた(ロジャとは裏路地で思わず致してしまったが、マヌゥは酔いつぶれて寝てたのでノーカンだ)。


「私も3日は長いと思います。やはり神への祈りは朝、昼、晩と行うべきですし、性交もまた然るべきかと」


「いや、『然るべきかと』ではないんだよな。ジャンヌさ、もしかして1日3回もエッチしようとしてる? あと俺は神ではないと何度も」


「いえ、聖典にもこないだ書いたところです。『特に晩にはテツト様の精水せいすいで1日のけがれをみそぐべし』」


「もう書き出しちゃってるのっ!? あとその文章、【聖水】であるべきの文字が絶対に間違ってるよねっ!?」


ジャンヌの中で俺が神であることが既成事実化してきてしまっているので何とかしなければならんな……。そんなことを考えていると、ジャンヌが、おもむろに俺の背中に抱き着いてくる。


「あの、ジャンヌさん?」


「前方はシバさんの守備範囲のようでしたので、後方は私が守っておこうかと」


「なにそれ、どういうルール?」


ツッコミを入れつつも、しかし俺にどうにかしようという意思はない。


……とりあえず俺はいまシバとジャンヌに挟まれて、直立上体のままサンドイッチされているわけだが……美少女ふたりに正面と背中から挟まれるなんて、ご褒美以外の何物でもないでしょ?


「……」ムー


「……ロジャ、えっと……」


「……」ムスー!


ロジャはそんな俺たちの周りをぐるぐると回って、しかし今の俺の体のどこにも抱き着くスペースはない。だが、そんな程度のことでへこたれるロジャではなかった。


「……」キリッ


ロジャは両手を大きく広げてジャンヌとシバの腰辺りをガバッと掴むと、


「……!」グイッ!


「うわぁっ!?」


なんと大岩でも持ち上げるかのようにでもして、シバ、俺、ジャンヌを3人まとめて抱え上げた。


「……フンス!」トテトテ、ポイッ!


「げふっ!」


そうして部屋にあったキングサイズのどでかいベッドへと俺たちを放り投げた。弾みでシバとジャンヌが俺から離れる。


「……!」キラーン!


その一瞬のスキを、ロジャは見逃さない。


「むふーーーっ!」フンス フンス!


「ぎょはぁッ──!」


ロジャ、俺の上へと水泳選手も真っ青なほどの綺麗なフォームで飛び込んでくる。


「~~~!」ブチュゥ~~~


ロジャは俺の体に上るなり情熱的なキスをしてきてくれる。ダイレクトに俺に伝わる柔らかな体の感触、エスニックで女の子らしい甘い香り、それらはとても素晴らしいものだ……けど、さすがに全身で飛び込まれるのは痛いよ……。


「ちょっとロジャ~~~! ズルいよ、ボクが先に唾つけたのにぃっ!」


「そうですよ! 乱暴すぎます! 私の治癒のキッスでテツト様を癒しますから、そこをおどきなさいっ!」


「……イヤっ!」


3人の美少女が俺の上でくんずほぐれつをしている。何というか……最高。


10年前の転生の日、【モテる】ことだけを考え、そして【モテる】ことを諦めた……そんな俺にとって、こうして女の子たちの引く手数多あまたの状況はそれ自体が至高の快楽なのだ。とはいえ、


「3人とも、ちょっと落ち着け」


いつまでもその光景を放置し眺め続けるような悪趣味ではない。……だって、それじゃ嫌なヤツみたいだ。俺は別に、女の子たちが俺を取り合う様を見て愉悦に浸りたいワケじゃないから。


……だいたいそんな俺ひとりの頭の内側で楽しんで、だからなんだというのだ。やはり、楽しいこと、嬉しいこと、気持ちの良いことはみんなで共有すべきだと俺は思う。


ゆえに俺は、はばからない。


「俺、みんなのことを──抱きたい」


「「「……ッ!!!」」」


どんな時でも、正々堂々、欲求には素直であれ。


「代わる代わる抱きたい」


「「「……ッ!!!」」」


「まとめて抱きたくもある」


「「「……ッ!!!」」」


「抱かせてもらって……いいだろうか」


「「「も……もちろんッ!!!」」」


嬉しいことに、俺の言葉に3人が一斉に頷いてくれた。


激しく尻尾を振りながらおすわりしていたり、身だしなみを整えて正座で祈りを捧げていたり、獲物を狩る鷹のような獰猛な瞳で俺を凝視していたり、三者三様にベッドの中央に並んで俺を待ってくれる。


「みんな、ありがとう。それで──マヌゥ。マヌゥは今日は、どうだろう?」


「──えぇっ!? わっ、私も……ですかぁっ!?」


ビクッと、マヌゥが肩を跳ね上げる。


マヌゥは、食事が終わって3人との絡みが始まってからというものの、ずっと所在なさげにウロウロとしていた。今も、俺たちと同じベッドから少し離れた位置で立ち尽くしている。


……肩を縮めて見つからないようにしていたようだけど……いや、無理よ。だって光の粒子で輝いてるし、そうでなくても肉感的なダイナマイトボディの存在感が半端ないのだから。


「俺は、マヌゥのことも抱きたい」


「わっ、私……でもぉ……」


「あ、もちろん無理強いしようなんて考えてないよ。たださ、マヌゥ……もしかして融合してしまったことを気にしているんじゃないかって思って」


「っ! ……は、はい。そうなのですぅ……」


マヌゥはしょんぼりと肩を落とす。


「思いがけずとはいえ、まさか融合してしまうなんて……そんな知識もなく、とてもご不便とご迷惑をおかけしてしまいましたのでぇ……っ」


「いや、それはさ、考え無しでエッチし続けた俺だって悪いし……というかあの時は興奮し過ぎていたからとはいえ、無責任なことをしてしまって申し訳なかったです、本当に……」


「うっ、受け入れたのは私ですぅっ! それにすごく嬉しかったのですよぉっ! だから、テツトさんが謝るようなことじゃ……!」


「いや、それでもホラ、妊娠とかもあるから……もちろん責任はとるつもりだけどもさ、でも新しくできる人の命に対して、責任を取ればいいって問題でもないから……」


「……? 精霊は妊娠しないので大丈夫なのですよぉ?」


「えっ」


……マジで?


「あっ! ご主人、ご主人っ! あのねぇ、ボクも言いたかったんだ。フェンリルも神獣だからね、自分の中で子種の選別……もとい避妊ができるの。だから外に出さなくていいんだよ~~~!」


……えっ、シバもっ?


「私は聖女ですので、体内に入ったテツト様の素晴らしき生命の源たる精水は魔力に変換可能です」


……ジャンヌまでっ! まさか、そんなに便利なことが!


「……」ジー


「ロ、ロジャはさすがに……俺と同じ人間だしな? どうにもできないよな?」


「……筋肉で体内にバリアが張れる、から……大丈夫……」


「まっ、まさかの力技で解決っ!?」


これまで、俺の方でできる限り妊娠の危険性は下げてきたつもりだったのだが……まさかの必要なかった説が浮上してしまう。この女の子たち、いろんな意味でハイスペックすぎる……!


「とにかく……マヌゥ。マヌゥが俺とエッチするのが嫌だってワケじゃなかったのは安心したよ」


「そっ、そんなこと思ってたら最初から受け入れてませんよぉっ! ただ、また融合して、迷惑がかかってしまったらと思うと……」


「それは大丈夫だろ。ヴルバトラによれば無意識に契約しちゃったのが原因みたいだし、そのことにさえ気を付ければさ。それに……俺は別にマヌゥと融合してて迷惑だなんて思ってなかったぞ?」


「えっ……?」


「というか、むしろお互い好き合ってたからこそ融合しちゃったわけだろ? だったら俺はむしろ嬉しいけどね。マヌゥが俺のことを好きでいてくれてさ」


「……! わ、私もですぅ……! 私も、テツトさんが私のことを好きでいてくれて、嬉しいのですぅ!」


「そっか。ならよかった。融合なんてさ、またしちゃったらその時考えればいいだろ? 融合するにせよしないにせよ、これから俺たちはずっといっしょにいるんだから」


「……! はっ、はいぃっ! いっしょにいますぅっ! もちろんなのですぅっ!」


マヌゥがようやく顔を上げて、その笑顔を見せてくれた。うん、よかったよかった。


──さて、話もついたことだし、それじゃあ……!


「さっそくやるとしようかっ! まずはシバっ! いいでしょうかっ!?」


「もちろんだよっ! いつでもキてっ、ご主人っ!」


シバが服を激しく脱ぎ捨てたので、それにならって俺も服をコンマゼロ数秒で脱ぎ捨てた。


「テツト様っ、子種が尽きそうになったら私の【聖女の回復セイント・ヒール】がございますっ!」


「……チューする……」ムチュー


「わっ、私はテツトさんに生命エネルギーを供給し続けるのですぅっ!」


シバ以外の3人も、臨戦態勢の俺を全力で応援してくれる。


……なんて良い仲間たちだろうっ! 常に側に居て支えてくれる、俺はこんな素敵な女の子たちに出会えて、本当に幸せだ。


彼女たちの想いも乗せ、俺はシバへ向けて足を踏み出した。


「ありがとう、みんな。イッてくる!」


「「「イッてらっしゃい!」」」


声援を背中に受け、俺はシバに覆いかぶさった。


……ああ、素晴らしきかな、異世界生活。




──しかし、俺がまだこの果てしない【モテ】の坂道を登り始めただけに過ぎないことを知るのは、もう少し先の話だ。




※内容修正について

修正日 :2023/04/20

修正内容:性表現の省略

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