どこか見覚えのある魔女っ子(9 / 9)

さて、謎のゴーレムを倒し終わった俺たちは、それからイースの街へと入り込んだモンスターの掃討戦と怪我人たちの救出作業へと移った。


ゴーレム以外はそれほど強いモンスターも居らず(とはいえ、適正討伐ランクS相当はチラホラいた)、街中の戦闘は数十分程度で完了した。


「……シショー、見つけた」


「ん? ああ、ロジャ!」


今後どう動くかについてを俺と女神様で相談していると、ようやくどこかへと行っていたロジャが姿を現した。


「どこにいたんだ? ひとりでフラリと歩いていっちゃったってジャンヌが言ってたけど……強い敵でも居たのか?」


「……」フルフル


ロジャが首を横に振る。……別に強い敵が居たわけではないのか。


「じゃあなにを?」


「……変なヤツを相手にしてた」


「変なヤツ?」


「……シショーとジャンヌの、ストーカー」


「ストーカーッ!? っていうか、俺もっ!?」


びっくりした。思わず声を張ってしまう。いや、だってジャンヌにストーカーが付くのは分かるよ? めちゃくちゃ可愛いから。でも俺も……? そのストーカーどういう性癖をしてるの? まあとにかく、


「あのな、ダメだよロジャ……そういう変質者は相手にしちゃあ」


「……ごめんなさい」


「いや、謝る必要は……それで、ロジャは大丈夫だったか? 変なことはされなかったか?」


「……ん、たぶん」


「それならよかったけど……で、そのストーカーは? まだ俺とジャンヌをつけ狙ったりしてないだろうな……」


「……大丈夫、もういないから」


「そうか、追っ払ってくれたんだな。ありがとうな、ロジャ」


ロジャの頭を撫でてあげると、ロジャはくすぐったそうに目を細めて喜んだ。




──それからまだ余力のあった俺たちは、ジャンヌの力で傷が治り気力も回復した複数の冒険者チームたち、それと女神様とも協力し、イースの外壁を囲むようにしているモンスターの大群とも戦うことにした。


さすがに時間はかかったし体力的にも消耗したけれど、日が暮れる頃にはモンスターたちを率いていたアイス・ゴーレム、ヘル・ベロス、ゴルディウム・ガーゴイルたちを討ち取り、脅威の9割を排除することに成功。他の街から物資支援を受けられる状態にまでなり、城塞都市イースは1日にして救われた。




* * *




街に襲撃の痕を残しつつも夜、ジャンヌの能力によって怪我人も死人も回復し、イースは落ち着きを取り戻しつつあった。


「本当に、なんと感謝を申し上げたらよいものか……! モンスターたちが街を跋扈したときには、もうダメかと……」


都市長は俺たちに特に深く何度もお礼を言ってくれ、Sランク冒険者チームへの推薦状を出してくれた上に、イースの高級宿屋に「もういつでも何度でもお泊りください! お金なら全部出しますので!」という破格の待遇っぷりだった。


「女神様もいっしょに泊りますか?」


「いや、いい。我は今は修道院に住んでいるゆえ……帰らねば皆、心配するからのぅ」


「女神様、街の人たちにめちゃくちゃ可愛がられてますもんね」


「うっさいのじゃ。まったく、見た目で判断する者ばかりで困ったものよ……」


女神様は心底めんどうくさそうにため息を吐くけど……でも、ゴーレムたちから命懸けで街の人たちを守っていたところを見る限り、女神様の方だって街の人たちに愛着がわいていそうだ。


「じゃあ、また明日お会いしましょうか」


「あー、うむ。あと、テツト。その……」


「はい?」


「きょ、今日はその、助けてくれて、ありがとうなのじゃ……」


女神様は紅く染まった照れ顔でそう言うと、プイッとそっぽ向いて走り去っていってしまう。


「……まあ、そりゃあんな【ツンデレのじゃ口調ロリ】、可愛がられるに決まってるよな」


女神の背中を見送りながら、そんなことを思ったのだった。




* * *




「「「おぉ〜!」」」


さて、俺たちに都市長からあてがわれた宿屋にやってくると、まずその広さに驚いた。幸運なことに今回の襲撃の被害は無く、ベッドシーツひとつを取ったって金貨ほどの価値がありそうなほどの高級品。部屋まで運んできてもらえるご飯も一級品なうえ量も多く、


「ボク、こんな美味しいの初めて〜!」


シバは手当たり次第料理に手を伸ばし口に頬張り、


「あっ、コレ好きです……あっ、でももちろんテツト様のことが1番好きですよそれはもちろん不動の1位です!」


ジャンヌは俺に別ベクトルのフォローを入れながら舌鼓を打ち、


「……もがもがー」ピトーッ


ロジャは飼い猫のように俺の腕に体を引っ付けながらも、無心でご飯を口に運んでいる。みんな、思い思いに楽しんでいるみたいだった。


「はぇ〜〜〜、みんなよく食べるのですよぉ〜〜〜見ていて気持ちが良いのですぅ」


ご飯を口に運ぶ俺たちの様子を見て、マヌゥは感心したように息を吐き──


「──って、マヌゥっ? あれぇ!?」


「へぇ? あっ、あれっ?」


いつの間にか、俺の背後にマヌゥが居た。……俺と融合していたはずなのに、いつの間にか解けたのかっ? 


「確か、1ヶ月は融合したままって話だったんじゃ……」


「わ、私も、突然のことで何がなんだかなのですぅ〜〜〜!」


……もしかしたら、今日の1日で生命エネルギーを使い過ぎたから、とかかもしれない。たくさん戦ったからな。


マヌゥも驚いているようだし、いったいどういう条件で融合と分離が起こるのかはこれからいろいろ検証していく必要がありそうだ。


……まあ、とにかく融合が解けたなら何よりだ。別に融合中も不便は無かったけど、それでも生活の隅から隅までをマヌゥに見られてしまうのはちょっとね……?


「はぁ、よかったです。無事にマヌゥさんとの融合が解けたようで……」


「ホントにね~!」


ジャンヌとシバも、ホッとしたようだった。


……そっか、害は無いって分かってても、やはり少しは心配をかけてしまってたんだな。ふたりとも優しいな。


「これで気兼ねなくテツト様とまた交わえるというものですね」


「だよね~~~!」


……ん? なんか心配のされ方、ちがくね?

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