夜を過ごす(with ロジャ)※性描写あり

俺の体を担いだロジャが降り立ったのは町の路地裏の一角。ロジャはそこで俺の体を降ろして、乱暴に壁に押し付けて──貪るようにキスをしてきた。


「……ッ」チュウチュウ


「……んむっ、ちょっ、ロジャ……!」


「……ッ!」チュルルルルルルルッ


「~~~ッ!!!」


舌が入ってくる。激しいキスだ。突然の出来事に、俺はロジャの体を押し返すこともできない……っていうか、ロジャの力が強くてまったく押し返せない。ビクともしない。


「シショー、ゴメン……でも、いっぱいいっぱい……チュウしたい……ッ!」


「んむむむむぅ~~~!?!?!?」


「……まだ。もっと、もっと。シショーを、ひとり占めしたいの…!」


「はままままっ!?!?!?」


俺はもはや、されるがまま。俺の口の中をロジャの舌が高速でかき回す。……うおォン、これじゃまるで人間攪拌かくはん機だ。うっかりメレンゲの気持ちが分かってしまいそうになる。


「うぅ……」


……ヤバい、頭がクラクラする。押し付けられるロジャの肉体からはエスニックな甘い香りがして、注ぎ込まれる唾液からは先ほどまで飲んでいたのだろうワインの味が……って、まさかっ!


「ロジャ、お前もしかして酔って……!?」


「レロレロレロ」


「んふぅぅぅぅッ!!!」


舌を根本から思いっきり吸われて、そのあまりの気持ち良さに俺は腰が砕けてしまう。……ヤバい。ナニコレ? キスってこんなに気持ちいいもんだったっけ?


「シショー、スキ、スキ、スキ……!」


「ちょっ、ちょっと待ってっ!? その先は──」


ロジャが俺のことを完全に押し倒して、上に乗ってくる……この体勢は、ヤバい。例のあの行為が始まってしまう──町中なのに! 夜の路地裏とはいえ、少し先には表通りがあり、多少は人の行き来がある。いつ誰が入ってくるかも分からない。


「ロジャっ、せめて宿とか、室内で……!」


「シショ……!」


ロジャはまるで聞く耳も無い。


……ああヤバい、このままでは野外で、実の弟子と、緊張感と背徳感にまみれた行為になだれ込んでしまう! 怒涛のキスの連続で俺もそろそろ理性の限界だし、下半身は臨戦態勢に入ってしまっている。


「くぅ……!」


……ここまで、か。


もう、抵抗できない。抵抗したくない。なるようになれ、だ。


「シショー……」


ロジャの手がゆっくりと俺の体をなぞり、そして覆いかぶるようにその体を倒して──しかし、ロジャは俺の胸にその顔をうずめただけだった。抱き着いてくる。ぎゅっと、赤子が母親にするように、強く。


「……ロジャ?」


「……ずっと、ずっとさみしかった」グスッ


「ロジャ、お前……泣いて……?」


ロジャの、俺の胸元の服を掴む力が強くなる。


「……村のみんな、私に優しくしてくれた。みんな私の家族になってくれた……でも、シショーはシショーだけ。私を助けてくれたのも、剣を教えてくれたのも、ひとりきりにしないでくれたのも、シショーだったから……」


空からわずかに覗く月の光に照らされて、その頬に伝う涙の線が見えた。でも、それは決して悲しい涙ではない。


「……あったかい。久しぶりの、シショーのカラダ……」


「……そう、だな」


──そういえばすっかり忘れていた、この熱を。ロジャは昔から体温の高い子だった。


「懐かしいな、ロジャ……お前は、ひとりでは寝たがらない子だった……」


「……うん」


奴隷組織からロジャを救ってからの半年間の旅の最中、ロジャは夜になるとよく俺の毛布に忍び込んできた。毛布の中、俺に背中をくっつけて寝る様がどこか猫に似ているなと思ったものだった。


「……シショーのあったかいカラダが、好きだった」


「俺も、丸まって寝てるロジャが可愛くて、好きだったよ」


「……ん。私もシショー、スキ。ダイスキ。だから、シショーのことを少しも忘れたくなくて、シショーが行っちゃってからはずっとひとりで寝てたんだよ……」


「ロジャ……」


「……もう、ガマンしなくていい? またいっしょに、シショーと寝てもいい……?」


「そんなの……当たり前だっ!」


「あっ──!」


俺は起き上がると、ロジャと体勢を入れ替える。ロジャを下に組み伏せるように、しかし優しく、俺が上になる。


……もう、ムリ。このロジャはあまりにも愛おし過ぎる。溢れる欲情が抑えきれない。


「シ、シショ──」




「──あれ? 今なんか、こっちの路地から音しなかったか?」




「──ッ!?」


ロジャの肩がビクンと跳ねた。


……表通りの方から聞き覚えの無い男の声が聞こえたから? いや、違う。ロジャの唇を、今度は俺の方から奪っていたからだ。


ロジャに嫌がる素振りはない。俺はロジャの服に手をかける。




「──なあ? 今の音、聞こえなかったか?」


「──そうか? どうせネコかなんかだろ?」


「──人の声っぽかったんだけどなぁ……」




冒険者だろうか。表通りを歩く2人組と思しき男たちの会話を小耳に、俺は音を立てないように、ロジャの素肌を少しずつ月の光の下にあらわにしていく。




「──どうする? いちおう見ておくか?」


「──そうだな。覗くくらい、大した手間じゃないし……」




近づいてくる足音。しかし、そんなもの気に留めていられない。ロジャの体は、どんな宝石よりも美しく、俺の目を釘付けにしていた。


ジャリ、と。小石を踏む音が数メートル先に聞こえる。




「──おーい、2人とも、いつまで巡回してるんだ?」




突然、2人組とは別の男の声が表通りに響いた。




「──もう飲み始めてるぞ、さっさと巡回終わらせちまえよ」


「──おいおい、待っててくれって言ったろ!?」


「──急げ、酒が無くなっちまう!」




路地裏を覗こうとしていた2人の男たちは、慌ただしく遠ざかっていった。


「シショー……早く……」


「うん。でも静かに、な」


少しの声さえ漏らさぬように深い深いキスをして、体を重ねる。そうして、その暗く静かなその路地裏で、俺とロジャはひとつになった。




※内容修正について

修正日 :2023/04/20

修正内容:性表現の省略

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