【閑話】追放女神の転生
──5年前。
「被告、イオリテ・アースリード。貴様を神々の座から追放する」
「なっ……何故じゃあッ!?!?!?」
最上位天界に、女神イオリテの絶叫が響き渡った。
──女神、イオリテ。彼女はかつて地球人だったテツトを異世界へと転生させた女神であり、地球人の信仰心向上やその魂の輪廻転生、解脱へと導くことを主な業務としている神の一柱だった。
そんな割と重要なポジションにいたイオリテであったが、しかし、今の彼女は神々の暮らすその世界の法廷に立たされて、他の神々の呆れのまなざしにさらされていた。
「追放だとっ!? 我は別に、何にも悪いことなど──」
「異世界の天界への無断侵入、その現地人との会話、その世界で禁則事項とされている情報の漏洩……」
「ギクゥッ!?」
裁判長を務める男神の言葉に心当たりがあったのか、イオリテが言葉に詰まる。
「それはっ、我たち神の不手際のフォローのためというか、なんというか……」
「理由など問題ではない。神はむやみにその声を地上の民に聞かせてはならぬというのに……ましてや、一個人のためになど言語道断である」
「でっ、でもじゃぞっ!? そんな、少し規則を犯したくらいで追放などとは……さすがにいくらなんでも罰が重すぎるじゃろっ!」
「元来、神の責任は重いものだ……」
「ぐぅ……!」
「女神の座を渡すのが早すぎたようだな。地球人の信仰心も貴様が地球担当の女神となってから急速に薄れておる、別の神に代える必要があるだろう」
「わ、我は追放されて……どこへ行けというのじゃっ!」
「……イオリテ、貴様は1から人というものを学び直した方がよい。ちょうどよく、貴様がこの前に干渉した異世界に人手が足りないようだな?」
「まっ……まさか……!?」
「……あの異世界の魔王はどうやら力を持ち過ぎている。人類側へともう少し肩入れをした方がよかろう。イオリテよ、貴様自身が転生をし、あの異世界を救う手助けをしてくるのだ」
「いっ──いやじゃあっ!!! せっかく女神までステップアップしたというのに、また人間からやり直しなんて──」
「さあ、行け。世界を救う功を為して神格を磨いてくるがよい」
「いっ、いやっ──ぎゃぁぁぁぁぁあああッ!!!」
──こうして天界から、一柱の神の魂が地上に降りて(降ろされて)くるのだった。
* * *
「──ほ~ら、イオちゃ~~~ん。おめめパチパチできまちゅかぁ~?」
珍妙な猫撫で声が聞こえて、イオリテは我に返ったように意識を覚醒させる。
「……あう?」
「あらあらぁ~、イオちゃん、お返事してくれたんですかぁ~? エライエライでちゅねぇ~?」
状況が飲み込めず、イオリテはシバシバとする目を開く。目の前にいたのは黒い修道服に身を包んだ年配のシスターだった。どうやらイオリテは横になっているらしく、シスターはこちらをニコニコ顔で覗き込んでいる。
……この者は誰なのじゃ? ここはどこで、我はいったいどうなって──。
「おめめパッチリでちゅねぇ~? 私の顔が見えるかなぁ~?」
「あうぅ……」
……見えとるわ、ナメとんのか? 我を誰だと思っておるのじゃ。この神眼によって人々の業を見抜き、輪廻転生の先を仕分けてきたハイクラス女神じゃぞ?
そう言いたいものの、しかし、イオリテの喉からは何故か上手く言葉が出てこない。
「ここがイオちゃんのおうち、【イース】の修道院ですよ~~~! お兄さんお姉さんもいっぱい居て賑やかな場所ですからね。みんなでイオちゃんのお世話をしてあげますよぉ~!」
「あうあぅあぅ~~~」
シスターに抱き上げられそうになったので、イオリテは抵抗しようとジタバタ体を動かそうとして──振り上げた己の手の小ささに気が付く。それはまるで……赤子の手。
「イオちゃん、元気いっぱいでちゅねぇ~~~!」
シスターに軽々と体を持ち上げられて、とうとう、イオリテは察した。
「あぅ……」
……我、赤ちゃんになっちゃったのじゃ……。
──城塞都市【イース】。元女神イオリテが赤子の状態で転生したのは、帝国南東における最大都市であった。それはまだ魔王軍と帝国の戦争が始まる前のこと。
それから5年の月日が経ち、5歳となった彼女がその神格ゆえの魔術の才能を開花させたとき、
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
今週は時間が足らずメインストーリーがあまり書けていないので、こちらのエピソードを閑話として先に投稿しました。
思わせぶりな更新ですみません・・・
次はちゃんとまとめ更新します。
次回の投稿日はたぶん4/7(金)になるはずですが、近況ノートでお知らせしますのでご覧いただければ幸いです。
それでは~。
(もしお時間がありましたら、作者の現在連載中の他作品・過去作をぜひ!)
↓連載中(3/31時点、あと5話で完結)
王城モブ衛兵に転生したので姫をさらおうとする魔王軍を撃退したら勇者のハーレム要員から次々に惚れられた件。あ、姫は俺が守ってるんで俺様系自己中勇者さんはどうぞ勝手に魔王退治の旅へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862674056840
↓完結済み
魔王軍の落ちこぼれ四天王に転生したので最弱なりに知恵で勇者たちを倒してたら魔王女に惚れられました。他の四天王たちには悪いんだけど多分あと1000年はお前たちの活躍は無いと思う。
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