夜を過ごす(with ジャンヌ)※性描写あり

──目が覚めると、そこは暗い場所だった。


「……んん……?」


あれ、知らない天井だ。えっと、ここはどこ……? なんだか記憶がすごく曖昧だ。


「……」


なんだっけ……? 俺、昨日は酒でも飲んでたんだっけ……?


妙に頭と体が重たい気がした。寝すぎた感覚に近い。体を起こそうとして……俺は、俺の寝るそのベッドにもたれかかるようにして寝息を立てるジャンヌが居ることに気が付いた。


「あっ、そうか……」


ジワジワと記憶が思い返される。俺はそういえば戦っていたんだ。何やら濁った苔みたいな色をした呪いの塊と。そうしてジャンヌを取り返したんだった。それから……ああ、そうだ。最後の最後で疲労感に押し負けてその場に倒れ込んだんだったっけ。


「じゃあ、そのままずっと眠り続けてたのか」


たぶんここは宿だろう。いま部屋に姿は無いみたいだけど……シバが俺を運んで来てくれたに違いない。


「ジャ……」


ンヌ、と。きっと俺にずっと寄り添ってくれていたのだろう彼女を起こそうとして俺は身を固めた。


「……ッ!?」


あれ? なんか俺の下半身……違和感が……?


「ね、寝起きだからか?」


ペラリ。布団をめくってみる。


「!?!?!?」


俺は下に何も履いて無かった。ズボンも、パンツさえも。上半身はちゃんとシャツを着ているのに、下半身がスッポンポンだ。そして、俺の局部は何故だかめちゃくちゃ元気になっている。そりゃもう、痛いくらいに……っていうか、


「痛っ……イタッ、イタタタッ!?」


本当に痛い。いや、めちゃくちゃ痛いッ!? 激痛! なにこれなにこれっ!? いったいどういうことっ? 俺の局部がミシミシと音を立てて今にも破裂しそうなんですがっ!?


「ハッ……!」


俺の悲鳴(?)を聞いて、ジャンヌが目覚めた。


「テツト様……! ついにお目覚めになられたのですね……!」


「えっ、あっ、うん。ただちょっと待って、今は少し待って? お願いだからこっちを見ないでくれ……!」


激戦を制した後ヒロインの横で主人公が目覚めるシーンというのは、通常ゲームやマンガにおいては感動的なものだろう。しかし、今の俺のシチュエーションは違う。


──目覚めたらヒロインジャンヌの目の前で、下半身スッポンポンで、しかも局部をめちゃくちゃ膨らませている状況なのだ。通報ものの失態だろう。


「テツト様、ソレは……!」


「いや、違うんだ。コレがいったいなんでこうなっているのかは俺にも分からない状況で、痛っ、イタタタタッ!?」


言い訳の途中で局部の痛みが再燃してくる。いや、ホントに何なんだっ!? こんなの、これまでの人生で経験したことがない……!


「──ご奉仕が足りなかったのですね、申し訳ございません……!」


「えっ?」


いま、ジャンヌ、なんて言った? 『ご奉仕』? どういうこと……?


「し、失礼します、テツト様」


ジャンヌは言うやいなや、ベッドの上、俺の体の上にその軽い体を載せてくる。


「ちょっ……!?」


「お、起きていらっしゃると、さすがに緊張いたしますね……」


「待って待って、なになに、これどういうヤツ……!? なんでそんな当然のように俺にまたがってくるの……!?」


「あっ、し、失礼しましたっ! そ、そうでしたね、えへ……その、まずは今の状況を説明しなくてはなりませんよね……?」




──ジャンヌの説明によると、俺は丸1日以上眠っていたらしい。しかも淵緑カエラズの呪術神と戦ったことで、知らずの内に脳に対して重大な損傷を受けており、一時は死にかけてすらいたという。




「……常人なら数日で精神を狂わせるだろう体験を、テツト様は体感上ではありますが、しかし何十年という単位で強いられてきたのです。結果として、脳の一部に変異が起こっておりました」


「へ、変異……」


「なので、それを治すために私の全力の【聖女の回復セイントヒール】を使ったのです」


聞くところによるとその能力の効果は【ありとあらゆる病・ケガ・不調を完全治癒させ、英気を充足させる】というもの。


……これはとんでもないチートスキルと言っていい。もちろん回復魔術はこの世に存在する。しかし、それは病気を治す種類のもの、ケガを治す種類のものなど、ジャンル分けされるのが普通だ。


それを一度で全ての効果をあわせ持ち……なおかつ、英気の充足という滋養強壮効果まであるとは、破格の性能過ぎる。


「私のこの【聖女の回復】は、死後1時間以内の死人をよみがえらせることすら可能です」


「す、すご……!?」


「ただし、その力をもってしても一度ではテツト様の状態を好転させることはできませんでした。それだけ何十年という歳月によってテツト様の脳にかけられた負担は大きかったのです。ですから、私は【聖女の回復】を何度もテツト様に重ね掛けし……結果として脳の変異は完治させることができました」


「そうだったのか、ありがとう。ジャンヌのおかげで俺は救われたんだな……」


「……な、何を仰るのですか。救っていただいたのは私の方ではありませんか」


ジャンヌは俺からの礼に戸惑いながら、俺の手を両手で握って……微笑んだ。


「私はテツト様に会えたら、もう後は死ぬものとばかり考えておりました。なのに……本当に、本当にありがとうございます。私は何度も何度も、テツト様に助けてもらってばかりで」


「ジャンヌ……そんなことはない」


「テツト様……いいえ、そんなことこそ、ございません。私はテツト様に、いくら感謝を申し上げても申し上げ切れません」


「いいんだ。俺がジャンヌを助けたいと思ったから助けただけさ」


「テツト様……」


「ジャンヌ……それで、だ」


スッ、と。俺は自身の下腹部を指差す。正確にはそこまで伸びてきている局部を。


「それで、その、どうして俺の局部がこんなことになっているのか、それを説明をしてもらえると嬉しいんだけど」


良い雰囲気のところ、スマンな。ずっと下半身がスッポンポンでスマン。ただ、今もなおミシリミシリと破裂しそうなほどのデカさになってて怖いんだよね……。このままだと脳の変異によってではなく局部の爆発によって死に至りそうですらある。


「テツト様、それは【聖女の回復】の副作用です……」


「副、作用……?」


「はい。【聖女の回復】の能力には病やケガを治す他に【英気の充足効果】があります。英気、それすなわち……【精力】でもあります」


すなわち、こういうことだ。俺の脳を回復するためには【聖女の回復】を何度も俺に対して重ね掛けするしかなかった。脳はそれで次第に回復していったが、しかし最初の1回目で満たされ切っていた精力はどんどんと俺の体に溜まっていく一方だった、と。


「膨大な精力を抱え続けているテツト様の局部は限界に近いです。このままでは肥大化を続け、最期には……」


「こ、怖い怖いっ! なんだ、俺はいったいどうすればいいっ!?」


「もう、選択の余地はございません。テツト様──私と致しましょう」


……い、致すっていうのはつまり──いやいやいや、待て待て待てっ!?


俺はとっさにジャンヌを止めようとするが……ん? 


「……とうとう、この時が……!」


ジャンヌに嫌々とした様子はない。むしろ、乗り気にすら見える。そう、なのか? ジャンヌもまたシバと同じように、俺に対して敬愛の念を抱いてくれているとかではなく、俺のことを純粋に異性として、性的に好いてくれている……そういうことでいいんだろうか?


……で、あればだ。


「あのさ、ジャンヌ」


「あっ、えっ、はいっ!?」


「その、もしジャンヌが嫌じゃないのであれば……普通にしないか?」


「えっ……普通にするって……」


「だから、そういう行為を、さ」


ジャンヌが、その顔をめちゃくちゃ赤らめる。


「ふ、普通にっ……いえ、でも私なんかが、そんな……」


「だからさ、『なんか』じゃないって。俺はさ、最初に成長したジャンヌのことをひと目見て、すごく可愛くなったなって思った」


「わっ、私が……!?」


「ああ。だから建前とか言い訳とか、そんなものは全部無しにして、俺はただ……ジャンヌとしたいなって思う。だから、お願いだジャンヌ。どうかジャンヌのことを抱かせてはくれないか」


「……テ、テツト様……! そんな、お願いだなんて……」


ジャンヌは顔をずっと赤くしたまま、意を決したように、震える唇を動かした。


「こちらこそ、お願いいたします。どうか、私を──!」


返事を聞くやいなや、俺はジャンヌを抱き寄せて、自分の下へと押し倒す。


俺とジャンヌはそうして、結びの一夜を迎えることになった。




※内容の修正について

修正日 :2023/04/20

修正内容:性表現の省略

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