淵緑の呪術神(1 / 8)※性描写あり

俺がシバと行動を共にするようになってから3週間が経とうとしていた。


「ご主人~~~朝だよ、おはよぉ~~~!」


元気いっぱいのシバの声が鼓膜を打った。目を開ける。まだ、その部屋はうす暗かった。


「まだ夜じゃん……ぐぅ……」


「早朝だよぉ! 起きよーよぉ~~~! お散歩行こうよぉ~~~!」


「ぐぅ」


「ご主人起きてぇ~!」


……いや、マジで勘弁してほしい。昨日は討伐依頼を3件こなして疲れた体で宿を取って、それから割と深夜まで起きてたんだぞ? シバだってそうだったはずだ。だってつまり、ベッドに入ってから俺とアレコレ致していたわけだから。


「ご主人、ご主人っ! 今日もいっぱい依頼を受けるんでしょ~~~? だったら早起きして運動して、体を温めておいた方がいいよ~~~!」


「……運動は、昨日の夜にシバといっぱいしたからいい」


「あ、アレは運動なの……?」


「ぐぅ」


「あ~! もう、ご主人はすぐ寝る~~~!」


シバの苦言に寝返りで応えて、俺は再度寝直しの態勢に入る。だいいち、俺はロングスリーパーなんだ。寝不足の状態じゃまともに体を動かせな……ぐぅ。


「むぅ……そんなにお外に出て朝の運動がしたくないんなら、ボクにだって考えがあるもん……!」


99%眠りに落ちた意識の片隅で、なんだかシバがゴソゴソと布団の中を動き回っている気配を感じるけど……何をしようとも無駄だ。いったん眠りに入ると決めた俺の睡眠力で右に出る者はいない。シバには悪いが、あと3時間は布団の中でこのままぐっすりと……


「──レロンっ!」


「……ッ!?」


突如として、顔面に濡れた感触。頬をなぞるようにベロベロと繰り返されるそれは……!


「こらっ、シバっ! その最終手段そろそろやめないっ!?」


目を開ければやはり、シバが俺に覆いかぶさるようにして顔をベロベロ舐めまくっていた。朝っぱらから俺の顔はシバのヨダレまみれだ。


「えへへ、でもこれやったらご主人一発で起きるんだもん」


「ったく……犬じゃあるまいし……」


「だってボク犬だもん。今は人の姿に変化してるけどー」


「それもそうか……」


それを言われたら納得せざるを得ない。とはいえな……朝は眠れるだけ眠りたいのが俺だ。なんとかシバのその最終手段を止めさせたいのだが……。


「むぅ、ご主人は本当に寝たがりさんだね。じゃあこうしようっ!」


シバはそう言って両手を広げた。


「朝ちゃんと起きれたら……エッチなことしてあげるっ!」


「……!?」


おいおい、シバよ……男は朝、ただでさえビンビンに元気なのだ。それなのに、そんなご褒美までをも目の前にぶら下げられてしまったら……!


「よしきたっ!!!」


「ちょっ、ご主人!? 今日は全然ちゃんと起きられてないからダ──きゃうんっ!?」


そんなわけで、朝っぱらそれはもう激しい運動になりました。




* * *




朝10時。身支度を済ませた俺たちは、泊まっていた宿のあるその町の冒険者ギルドまでやってきていた。


「さて、今日やっておきたい討伐依頼は……」


掲示板に張り出されている依頼は俺とシバによる連日の受注によってだいぶ少なくなってきているとはいえ、それでも平時に比べれば多い。それに、討伐対象も強力なモンスターばかりだ。


「ゾンビロードにキング・オーク、ゴブリン集団(レッドキャップ、ゴブリンキャスター込み)……強いのばっかだねぇ」


「そうだな。魔王軍の支配地域が増えているからか、世界を満たす魔力が強まっているらしい。魔力が強まるとモンスターの発生率が高まるだけじゃなくて、進化系モンスターが増える傾向にあるんだとさ」


「へぇ……あっ、見て見てご主人! キング・ブルの討伐依頼があるよっ! これを狩ったら当分お肉に困らないんじゃないかなっ!? 牛肉だよ牛肉っ!」


「……まあ、シバが居ればどんな上位モンスターもエサにしかならないか」


「へっ?」


まったくもって格が違うのだ。これまでの討伐依頼も半分以上シバの活躍だったしな。依頼を受けるやいなや風にも負けぬ速さで討伐対象まで駆けつけて、それからは一方的な蹂躙だ。


「ホント、すごいやつだよお前は」


「えぇ? なんかよく分からないけどボク褒められてるの〜? やったー!」


グリグリとシバがその頭を俺の胸に押し付けてくるので撫でてやると、シバは気持ち良さそうに目を細めた。尻尾は千切れんばかりにブンブンと振られている。


で、そんな風にシバとじゃれ合っているところに、


「あ、あの〜、テツト様? 今少しよろしいでしょうか……?」


おずおずと、この冒険者ギルドの受付嬢がこちらの様子をうかがうように声をかけてきた。


「あ、はい。なんでしょう?」


「実はテツト様宛に手紙が届いておりまして……」


「手紙?」


そうして受付嬢に手渡されたのは、なんだかすごく厳重に封のされた、俺が活動拠点としている町の冒険者ギルドから送られててきた手紙だった。




※内容修正について

修正日 :2023/04/20

修正内容:性表現の省略

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