夜を過ごす(with シバ)※性描写あり
小屋に帰ると、思い出す。
「ああ、そうだった……小屋の掃除がまともにできてないんだった……」
このままホコリに埋もれた布団でネズミたちといっしょに寝る訳にもいかない。
……でも今さらギルドに戻っても誰もいないし、宿まで行って夜中に管理人を起こすのも忍びないしなぁ……。
「えっと、シバさ、悪いんだけど今日は野営でもいいか?」
「わんっ! というかご主人、忘れてるかもしれないけど……ボクは基本的に野営しかしたことないよ?」
「あ、そっか」
これまで柴犬として森で生活していたんだから、そりゃ別に小屋や柔らかい布団なんかも使ってないだろう。でもなんだろうな、年頃の女の子の姿を見せられるとちゃんと屋根付きの場所で寝かせてあげなきゃいけないのでは、と思ってしまうのだ。
「ねぇご主人、野営をするならあそこの平野に行かない?」
「あそこの……って、ああ。俺たちが初めて会ったところか」
「うんっ!」
「そうだな、そうするか」
俺は帝都で買った野営道具を持って、シバと並んで歩いて平野へと向かった。そこで草の伸びていない木の下を見つけたので、地面に厚めの毛布を敷いてふたりで寝転がる。体に掛ける用の毛布はシバに譲った。
「えっ、ボクじゃなくてご主人が使いなよ、風邪引いちゃうよ?」
「シバだって今は人間の姿なんだから風邪引いちゃうだろ」
「ボクは大丈夫! 体強いもん!」
「俺も大丈夫。体温高いから」
「むぅ~~~じゃあこうするもんっ!」
お互いに毛布を押し付け合っていると、シバが毛布を被りながら俺に抱き着いてきた。
「これならふたりで温まれるねぇ。ぬくぬく~」
「……はぁ」
まったく、本当に勘弁してほしい。
真夜中に、この人気の無い場所で……男女がふたりで横並びに寝るってだけでだいぶ意識してしまいそうになっているんだぞ、こっちは。
……相手が子犬の頃から知っているシバだからって、関係ない。今の俺の目の前にいるのは美少女そのもので、体の柔らかさも体温も全て女の子そのものなんだから。
「ご主人から反応がない……もう寝ちゃった?」
「……いや、まだ起きてる」
「そっかぁ」
シバは、俺の胸に顔を埋めながら笑う。くすぐったい。
「なあ、俺臭くない? 昨日からお風呂入ってないんだけど……」
「ちょっと汗の臭いがする」
「今すぐ離れなさい」
「えぇ~~~っ! いやぁ~~~!」
グイグイと押してもシバは離れようとしない。
「汗臭いんだろ? 寝にくいだろそれじゃあ」
「臭くないもん。ご主人の汗の、イイ匂いだもん」
「臭いじゃん……」
「臭くないのっ! 好きなのっ! 女の子はねぇ、好きな男の子のニオイはなんでも好きなのっ!」
「えぇ……?」
うーん、俺には分からん感性だ。臭いものは臭いだろって思ってしまう。
「何がそんなに良いんだ……?」
「嗅いでるとね、クラクラするところ」
「えっ、臭すぎて……?」
「もう、違うよぉ」
シバは顔を上げると俺の方をジッと見つめてくる……かと思えば、唇を重ねてきた。
「おま、また突然そんなことを……」
「突然じゃないもん。最初からずっとしたいって思ってるもん」
シバはそれからも俺の頭を抱えるようにして唇を求めてきた。
「あのね、今日のご主人……すごくカッコよかったよ」
「えっ……?」
「実はね、ちょっと離れたところから見てたの。キング・オークとご主人が戦うところ。すごかったよ……すごく強かった。逞しかったよ」
「シ、シバの方が強いだろ……」
「違うよ、そういうことじゃないよ……体格も何もかも全部ご主人の方が不利だったのに、それでも一歩も引かずに戦ってたからこそ、逞しく思えたんだよ。ボクが戦っても、あんな風にカッコよくはなれなかったよ」
「シバ……」
「カッコよかったよ、ご主人……」
ボソリと耳の側でささやかれて、理性で何とか抑え込もうとしていた生理現象が、限界を迎える。
「……シバ、すまん……我慢の限界だ……!」
「あっ──」
俺は衝動のままに、華奢なシバの腰を強く抱き寄せて……覆いかぶさった。
「嫌か?」
「ううん、そんなことないよ。ご主人、お願い……」
俺はその日、26年の童貞生活を卒業した。
* * *
お互いに汗を拭く。それから衣服を整えて、ふたりで毛布を被り直した。
「もう、ボクたち、離れなくていいんだよね……」
シバが再び、その身を寄せてくる。
「ああ、そうだよ」
「よかったぁ……」
シバはペットの犬のように俺の胸に顔を乗せてスリ寄ってくる。そしてそのまま、幸せそうな顔のままスヤリと眠りに就いた。
※内容修正について
修正日 :2023/04/20
修正内容:性表現の省略
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