非モテ俺、【女の子にモテる】転生特典もらっても非モテ。もうモテ路線は諦める。それより子供たちが困ってるみたいだし助けに行くとするか(10年後、何故か急にハイスペック美少女たちにモテ始める)
困ってる子供3号 奴隷商に捕まったアマゾネス少女(1 / 2)
困ってる子供3号 奴隷商に捕まったアマゾネス少女(1 / 2)
俺が異世界に来て3年が経った。
木剣から鉄製の剣に変えてから、これまでよりもはるかに楽にモンスターを倒せるようになり、腕前もメキメキと向上した。
俺は拠点としている町で1番の、地域全体で見ても指折りの冒険者となっていた。冒険者ランクはB。冒険者登録をしてからたったの3年でBランクまで昇級するというのは異例の速さらしい。ちょっとした有名人だ。
「いってらっしゃいませ、テツトさん」
当初、俺のことを不審者と勘違いした冒険者ギルドの受付嬢のお姉さんも、今やとても丁重に俺のことを扱ってくれる。少しお喋りできるくらいの仲にもなった。でも昨年結婚したようです。おめでとうございます。好みのタイプの女性だったんだけどなぁ……うぅ……。
「って、いやいや、メンブレ(※1)してる暇はないんだった」(※1 メンブレ…メンタルブレイクの略。精神崩壊とも)
俺が今回冒険者ギルドで請け負った依頼は【奴隷売買組織の壊滅】だ。近頃、魔王軍の活性化に伴い治安が急速に悪化している。あちこちの村で物資を強奪する盗賊団が出没しているほか、人の誘拐も後を絶たない。
「勇者様には早く魔王を討伐してほしいところだ」
この世界にも勇者は存在する。というより最近になって誕生したらしい。なんでも伯爵家の長女だそうで、14歳にしてすでにSランク冒険者並みの剣技を持ち、領主としても将来を期待され、退魔の魂をその身に宿すハイスペック美少女なのだそうだ。俺にとっては雲の上の存在って感じがする。
「まあ、しがない冒険者の俺には関係ない話だけどね。あー、でもハイスペック美少女なら一度は会ってみたいものではあるなぁ」
いったいどんな美少女なのだろう。俺の好みのタイプだろうか……? いや、でも14歳はまだ子供だなぁ。そんな風に雑念を抱えつつ、町の教会の前を通り過ぎようとした時、
「ああ、テツトさん! ちょうどよかった!」
「えっ!?」
その教会の主である神父が飛び出してきたかと思いきや、俺の腕を引っ張ってくる。
「なっ、なんすかっ!?」
「神のお告げです! テツトさんを呼ぶようにと!」
神父は鼻息荒く、グイグイと俺を教会に連れ込もうとしてくる。
「女神ですよっ! いやぁ、私も長年神へと祈りを捧げて参りましたが、実際に神のお声を聞いたのは初めてですっ! ホントに居たんですねぇっ!」
「女神……? あっ」
そういえば、そんな存在がいたなぁ。この3年の異世界生活ですっかり忘れてたけど。
『おい、伏見鉄人っ!』
「うわっ!?」
教会に足を踏み入れるやいなや、頭の中に久しぶりの女神の声が響く。
『おぬし、完全に使命を忘れておるじゃろうっ!?』
「えっ? 使命?」
『魔王の討伐っ! おぬしに任せたじゃろうがっ!』
「……あっ、そっか」
そういえば俺、魔王を討伐するためにこの世界に転生させてもらったんだっけ?
「この世界で生き抜くのに必死で完全に忘れてたわ……完全に勇者様に頼り切りになってたわ……」
『アホめ』
「ヒドいっす」
俺、転生特典のスキルも無いままにここまでよくやってると思いませんかねぇ?
『いいか? その世界はいちおう、魔王によって滅びの危機に瀕しておるのだからな? ちゃんとやれ』
「はーい」
『分かればよろしい。ではがんばるのじゃ』
女神は本当に用件だけ言うと、俺の頭と回線を切った。また異世界の天界に不法侵入してきたのだろうか?
……しかしそうか、魔王か。魔王を倒さないとこの世界って終わっちゃうのか。
「それも考えていかないとなぁ……ま、とりあえず今は目先の奴隷売買組織の壊滅依頼をこなすとしますかね」
そんなわけで、俺は拠点としている町を出る。
──で、1週間が経過した。
「クッ……まさか我が組織がここまで追い詰められるとはァッ!」
俺は奴隷売買組織の拠点に単身斬り込んで、その元締めの男を最奥の部屋まで追い詰めていた。
「年貢の納め時ってやつだ。観念しろよ。酷いマネしやがって……!」
俺は剣を片手に元締めの男へと迫る。ここまでの道のりは本当に悲惨なものだった。拠点の中にはコロシアムがあり、奴隷売買組織の人間たちはそこで奴隷たちを殺し合わせて楽しんでいたのだ。
地下の一室に人々の死体がゴミのようにして詰め込まれているのを見たときは本当に吐きそうになった。その中に子供の死体を見つけたときは……怒りで
「クソッ……オレ様の部下たち、天下最強の
「ん? ああ、あのやたら拳のデザインが強調されたマントを羽織ったオモシロ集団のことか? なんか非常に腹立たしかったし普通に悪人のようだったから、容赦なく首を
「あ、ありえん……裏世界で名を馳せた、Aランク冒険者にも匹敵するほどの強者たちだぞっ!?」
「ふーん」
そんなのは知ったことでは無い。まあ確かにフィジカルが強かったり武技が豊富だったりした気はするけど、でも俺も毎日訓練してるからなぁ。
「くそ、『別にぜんぜん手応えありませんでした』みたいな顔しやがって……! なら、これでどうだ!」
元締めの男が最奥の部屋にあった檻に飛びついて鍵を開けた。すると、その檻から歩き出してきたのはオークの群れだった。しかも、通常の個体よりも体が大きい。
「オレ様が愛情たっぷりに調教したハイオークの群れだ! 強力な冒険者が攻め込んでくることも想定して備えておいたのさ! いけっ、ハイオークたち!」
〔ブゴォォォッ!〕
なるほど、どうやらオークの進化種らしい。しかしモンスターを囲って育てるなんて……。
「魔王の手先みたいなマネしやがって!」
俺はハイオークたちの間を駆け抜けて鉄製の剣を流れるように振るう。剣を鉄製の物へと持ち替えてはや1年半。もはや自分の手足に等しい感覚で扱うことができるようになっていた。
「さて、と」
俺がひと息吐いて剣を肩に担ぐと、ハイオークたちの首が落ちた。
「なっ!? いったい今の一瞬で何が起こったとぃうるれれっ??」
「お前もすでに死んでいる」
「えぅょ……???」
最後に、元締めの男の首も落ちた。
「よし、終わったな。じゃあ捕まって奴隷にされてる人たちを解放するとしよう……」
俺はその拠点の牢という牢を解放して回る。ほとんどが近場の村や町で攫われた人たちで、そんな彼らは俺に感謝を言い残して去って行った。
……さてさて、終わった終わった。俺もまた近場の冒険者ギルドへ行き、奴隷売買組織の拠点の後始末などを任せるとこれで依頼は完了……のハズだったのだが。
「どうしたものか……」
牢から解放した中でひとりだけ、身寄りのない子供がずっと俺に引っ付いたままだった。しかも良くないことに、たぶんその子……その褐色肌の少女は俺の【女の子供にモテる】特殊能力のせいで俺に惚れてしまっている。
「……」
でも、無口だ。無反応というわけではない。いったい組織の人間たちにどんな扱いを受けたのかは分からない。でも、恐らくは精神的なダメージのせいで、口を閉ざしてしまっているようだ。
まだ10歳前後だろうに、酷いことこの上ない。
「……安心しろよ、ちゃんと俺が君の居場所を見つけてやる」
その頭を撫でてやると、少女はくすぐったそうにして目を細めるのだった。
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