第2話 ヒロイン

 太陽が天頂に届く真っ昼間、王立学園の前の通りに食欲を刺激してやまない匂いを漂わせる屋台や荷車が列をなすのは日常の景色で、懐事情の寂しい平民出身者や、ちょっとした放蕩を家族にバラしたくない貴族――つまり深刻な、あるいは瑣末な事情で食費を削らなければならない学生たちが、それらに群がり『夕食までの時間をやり過ごすための譲れない一品』を真剣な眼差しで吟味し奪い合うのもまた、ごくありふれた光景であった。

 ベルタは金欠病患者の一人として贔屓の屋台に陣取り、腕を組み、唸っていた。「やあ、ベルタ・セレーニ」

 真剣そのものの後ろ姿に、声がかけられる。

「セルジオ殿下!?」

 慌ててスカートのすそを指でつまみ、片足を引いて膝を曲げる。いくらか低くなった頭上から、かしこまる必要はないと陽気な声が聞こえたが、そういうわけにはいかない。普段は買いに来る学生をすべて客として等しく扱う商人たちも、どうしたものか目配せし合っているではないか。

「どうして、殿下がここに?」

 いやしくも王族である彼が、昼休みに食堂を利用しないはずがない。

 学園のそれは食堂という名の厨房であり、ベルタのような懐事情ではない学生たちに雇われた料理人が、腕を振るう場である。

 学び舎とはいえ、学生はみな貴族の子息子女、または何らかの才能を評価された特別な者ばかりであり、昼食一つとっても社交の場なのだ。

 王子ともなれば、お抱えの料理人の二・三人も呼び寄せ、取り巻きの数人と優雅な食事に舌鼓を打ちながら、ちょっとした戯れの議論を楽しんで過ごすものである。というか、現に今まではそうだった。

「なんというのだろう……今日は本当に、運が悪い日なんだ」

 肩を落とすセルジオによれば、王城で開かれる行事のために普段の料理人の都合がつかず、代理に来るはずの者が今朝になって体調を崩してしまったのだと言う。

「それで町で食事を、と思ったのだが……」

 慣れないことが簡単にできるはずもなく、近くの通りをぐるりと周って、文字通り周るだけで学園に帰ってきてしまったところなのだった。

「いくら興味があっても、素直に友人に誘われておけばよかったかな」

 状況が生んだ好奇心が更に悪い結果になってしまったことを、セルジオはあっさり反省の言葉に変える。特にプライドが邪魔する様子もない口ぶりに、ベルタは今まで出会った貴族と比べずにはいられなかった。

「ところで、僕が出かけてから戻ってくるまで、君は同じ場所から動かずにいたようだよ」

「えっ?」

「それに君は腕を組んで唸っているのに、顔は笑っていた」

 ベルタは、はっと頬を指で押さえる。指先がかすめる感触は北風の温度で、ベルタは自分の頬がどれだけ熱くなっているか思い知る。

「一体何を見ていたんだい?」

 尋ねられ、恐る恐るといった動きの指が一つの商品を示す。丸や四角の至極オーソドックスな形から、三つ編みを模してった形状まで種々の商品が並ぶ中、それは最も大きく、両手で持ってもはみ出るほどに、ふっくらこんがり焼き上がっていた。大きさなりに値も張っている。

「私のおすすめなんです! 中に果物と蜂蜜と乳を一週間かけて煮詰めたクリームがたーっぷり入っていて、この世のものとは思えないくらい甘いんです!」

 真昼の太陽を反射する眼差しに、店主が力強く頷く。値段なりに力作であることは間違いないらしい。

「このクリームさえあれば、生地なんて無くていいくらいですよ!」

 店主が一瞬ものすごい目でベルタを見た。セルジオは申し訳ない気分になる。

「でも値段が……」

「では、僕がそれを買おう」

「え?」

 丸くなった目が考えていることを読み取って、セルジオは笑った。

「その代わり、君は二番目におすすめのものを買ってくれないかい。二人で半分ずつ味わおうじゃないか」

「あ、ありがとうございます」

 それでは、とベルタが次点に選んだのは、至極飾り気のないものだった。やはり柔らかそうな優しい丸い形をしているが、荒く挽かれた穀物の香ばしさが香る。大きさも片手で収まるほどである。

「それは?」

「……穀物を挽いた粉を練って焼いた食べ物?」

 今度はセルジオが目を丸くする。ベルタは慌てて、それが実にシンプルに焼き上げられたもので、素材の風味を余すことなく味わえる一品であることを述べた。極めて早口であった。

「僕は君に、随分な人物に見られているようだ」

 中庭の長椅子に並んで座り、それぞれの買ったものを分け合ってからもセルジオは何とも言えない苦笑を隠せずにいた。

 王太子の言葉を甘んじて受けながら、ベルタは極めて慎重に、手の中で柔らかく形を変え、下手をすれば潰れてしまいそうな生地を半分に千切る。

「どうぞ、お召し上がりください」

 よく煮詰まったクリームは重たげに揺れても垂れることはなく、ふかふかの生地と一緒に、二人の手の中に納まった。こってりしたクリームを、ベルタは一飲みする勢いで齧りつき、セルジオは更に一口分だけ千切って口に運ぶ。

 二度ほど噛んだところで、セルジオは手のひらで口元を抑えた。

「どうしました?」

「舌……っ」

「?」

「舌と歯が、逃げ出すかと……!」

 広がった甘さを口の中の一切が拒否しようとしていた。幸い本当に舌や歯が凶悪な味の前に逃亡することはなかったけれど、どうにか飲み込んだ後の二口目を、口に運ぶことができずにいた。その隣で、ベルタはセルジオの三倍ほどの速度で食べていく。

「実は、私は以前、友人に同じものを勧めたことがあります」

 すでに半分ほどを飲み下したベルタは言う。

「二人とも一口で胸が悪くなるといって、一人はそれ以来口をきいてくれません」

「そんなものを僕に勧めたのかい!?」

 おまけに先に二人も犠牲者がいるなんて。

 ベルタの弁明によれば、王族ともなればこれくらい甘いものは食べなれていると思ったし、ひょっとしたら、たまたま友人が嫌いな味だっただけという可能性も考えられたと、そういう判断により勧めたらしい。やはり早口であった。しかもその間にも、手の中のものは消えていくではないか。

「あ、ソフィー!」

 長椅子から立ち上がったベルタが中庭の向こうに手を振る。小柄な赤い巻き毛が大股に歩いていた。

 赤毛もまたベルタに気づくと右手を上げようとするが、傍らのセルジオを見つけ、気安い挨拶の動作を途中で止める。しかし、戸惑いを含んだ表情は、二人の手の中にあるものを見て変わる。猫が毛を逆立てるように、眉の毛の一本一本が天を向いた。

「この糖蜜女! あたしはまだ許してないからな!」

 左手の本を両手で抱えなおし、大股を更に早く動かして、小さな背中はずんずん小さくなっていく。ソフィーは学年で最も背が低かった。

「ソフィー・カルナウフか」

 友人のフルネームが正しくかつ美しく発音されたことにベルタはいささか驚くが、すぐに納得する。城下一の薬種商であるカルナウフ家のほまれは、王城の内でも伝え聞くまで高まっているのだ。

「僕はむしろ、君と彼女が親しかったらしいことに驚いているよ」

「私たち、近所で暮らしていたんです。幼馴染、みたいなものですね」

 セルジオは首を横に振る。まるで試合中にとんでもない反則を犯す瞬間を目撃したような表情で。

「セレーニ家は仮にも貴族だろう」

 ベルタの視線が落ちる。乾いた指先が確かめるように膝のあたりを撫でた。

「……養女ですから、私は」

 駆け落ち同然で出入りの商人と結婚した母、ベルタが生まれて間もなく破綻した家業、父方の親戚に預けられお針子として食つなぐ日々……その波乱万丈な幼少期を、ソフィーは近くで見てきた数少ない存在である。

「そうこうしているうちに、母の遠縁にあたるセレーニ家から養子取りの打診があったんです」

 生まれた時から、移ろう環境に流されるまま生きてきた。そうすることでしか生きられなかった。養子取りの話とて、より家格の高い貴族にベルタを輿入れさせ、家同士の繋がりを作る野心あってのものである。セレーニ家の若者は皆、男に生まれていた。

「勉強は大変です。ねえさんたちにステッチの直しをいくつも押し付けられたときより、もっと頭を抱えることもあります。でも、ここの生徒になって、いろんなことをしてもいいんだって、初めて思えたんです。そういう風に、自分で決めていいんだって。それに、ソフィーともまた会えましたし」

 勉強の合間に昼寝をしてもいい、好きな本を読んでもいい。好奇心に任せて勉強を続けて、夜更かしのためにランプの油を多く使っても口やかましく言われない。好きな昼食を選べるということも、ベルタにとっては楽しい変化の一つだった。

「……だから君は、笑っていたんだね」

 選択に悩むことも、選択の結果と付き合うのも、ベルタにとっては新鮮で刺激的な経験なのだ。そして残り二年余りの学園生活で、ベルタは与えられたものを存分に選り分けて、吸収し味わうだろう。卒業後、セレーニ家が望む相手との結婚を引き換えに。

「あ、すみません。私、午後の授業の準備をしないと」

 はっと焦りの色を浮かべたベルタは、最初と同じように軽く膝を曲げて挨拶をすると、小走りで去ろうとする。もう勉学のことしか頭にない真面目な背中に、セルジオがその名を呼びかけた。

「よかったら、また一緒に昼食を買ってみないかい」

 ぽかんとした顔が振り返る。彼女の答えを聞く前に、セルジオは残していた甘さの塊を、さっきのベルタと同じくらいの速さで咀嚼した。

「おいしいよ! ものすごく甘いけど」

「!」

 白い歯がこぼれる笑顔で、ベルタが肩から両手を大きく振る。

 つられて頬が緩ませながら小さく手を振り返すセルジオは、カメリアとの婚姻を半年後に控えていた。


 時間でいうと一年前の出会いになるが、ともかく、この昼食をきっかけに二人は共有する時間を増やし、仲を深めていくことになるのだが、それはもう一進一退、亀より遅い歩みなのである。

「……甘酸っぱいんですのよ、まったく」

 カメリアでなくても、二人の応酬を同じように形容したことだろう。ほうっと息を吐いて、カップを受け皿に戻し、目を閉じる。カップの中にはまだ紅茶が残っていた。

「も、申し訳ございません……お口に合いませんでしたか?」

 斜め後ろに控えていた小間使いの少女が、茶を注ぎ足そうと傾けたポットを直立に戻す。

「いえ、昔食べた果物のことを思い出していましたの。とっても良い香りのお茶よ。淹れ方がお上手なのね」

 カップを少し持ち上げれば、まだ暖かい澄んだ赤茶色の液体が音もなく注がれる。少女は嬉しそうに一礼して、やはり音もなく元の位置に戻った。

 主人がくつろげるよう存在感を最小限にする、この気配りは厄介だ。海石榴美瑠の生活にはなかった存在に、まだ頭がついていかない。なのにカメリアの体は、物に影があるのと同じくらい当たり前の存在として、それを受け入れている。労働を知らない青白い指を閉じて開いた。

 一七年かけて次期女王となるべく育て上げられた感性がそうさせていることは、間違いない。カメリアとセルジオ、同じ年に男女が揃って生まれた年から、二つの家は二人の結婚が揺るぎない未来であると信じ、カメリアもまた物心ついた頃から、セルジオこそが自分に相応しい世界で唯一の存在であり、また彼の隣に立つことかなう存在は世界中にたった一人自分だけであると信じて疑わずに成長した。

“美瑠”の意識が蘇らなかった場合、カメリアが学友の域を越えつつあるセルジオとベルタに一切の理解も妥協も憐憫も示さないことは明白だ。だが、私の意識は、記憶とともに目覚めた。

(できれば、もっと早く思い出したかったなぁ)

 理想を言えば、セルジオとの婚約に否を唱えて十分間に合うくらいの時期には。残念ながら、記憶が蘇ったのは一七歳の誕生日だったのだけれど。

 しかし今からだって、手段はあるはずだ。先日の儀式は言うなれば前座である。婚約破棄を避けるため、形だけでも二人を夫婦の形に押し込むためのもので、公にセルジオとカメリアが夫婦として立つのは、彼が正式に王位を継ぎ王座に座る時である。

 幸い現国王であるセルジオの父は健在で、退位の噂の気配さえない。許された時間はまだある。そして何といっても、この世界で“美瑠”だけが持ち得る情報の価値は大きい。

(……でも、どうすればいいの?)

 二人を引き裂こうとした場合に生じる未来を知ってはいても、カメリアが後腐れなく離婚するための方法は知らない。

 穏便に離婚の上、実家にでも帰らせていただければ結構な話なのだけれど、婚姻の破棄を願い出たとして、セルジオ個人はともかく、状況が決して許さない。埋められて固められ跡形もなくなった外堀を掘り返すために、国中の誰もが納得できる正当な理屈が必要なのだ。どうしても。

 壁にかかった上下揃いの制服を睨む。紺碧に白い縁取りを施し、胸元には校章のアンティークゴールドが光る。くったりぶら下がっている腕章は、二つ目の学年の所属を意味していた。

 現在のヴァーチェ家に王位が取って代わった後に設立された学園は、学び舎であると同時に、貴族の子息子女の交流の場であり、一部の平民の入学を認め学問の道を開く教育福祉の場としての役割を担っている。

 特に前者の役割は、各々の屋敷で勉学に励む傍ら、閉じた貴族の世界に作られていく派閥の芽を摘み、過ちを繰り返さないことを大義名分としていたが、現在はむしろ、生徒同士がお互いに目を光らせながら時に友情を育み、時に冷静に相手を値踏みする、新たな社交の場になりつつあるらしい。

 それを理由に、セルジオは編入を望む私にいい顔をしなかった。未来の王妃として、何も今から気苦労な日々を送ることはないだろうと。私は、だからこそ将来各々の家を背負って立つ若者たちを見知っておきたいのだと押し切った。

「私を学園に行かせたくないのは、あなたの密かな思い人がいるからでしょう。知っているのですよ」――反対するセルジオに、いっそ言ってしまおうかと思ったけれど、幸いにもそれを口にすることなく私は明日、学び舎という戦場を生き抜くための戦闘服に、腕を通すことになった。

 有象無象が喋喋ちょうちょう喃喃なんなんと語る、数多の噂話と探り合いをかき分け、運命を変えて生き延びる手掛かりを手に入れるために。

(戦闘開始、ね。正しく……)

 だが引き締めた気持ちとは裏腹に、学園の敷地に一歩踏み入れた途端、待ち構えていた、いわゆる有象無象に取り囲まれ、私ときたら速やかに動きを封じられてしまった。

「教室までご案内しますわ」「なんでもお尋ねくださいな」「ランチは是非ご一緒願いたいですわ」あたりから始まり「ぜひお見知りおきを」で終わる会話を、昼までに百か二百はこなしたように思う。体の疲労を推し量るに間違いない。

 疲れた体は「昼食を用意させましたわ」という誘いに惹かれ、華やかな料理が並ぶ大きな卓の、一番いい席に腰を落ち着けた。料理が取り分けられると同時、右に左にべったりと、重要な内緒話をする時の距離で張り付いたクラスメートたちは、どうやら私にゆっくり食事をさせるつもりは無いようだ。

 誰かが天気の話題に触れる。その通り、今日もまたよく晴れていた。中庭に突き出したテラス席を占領し、陽射しの下で舌鼓を打つにはもってこいの日である。

 誰かが中庭を横切る数人の少年を、その中に混じるセルジオの姿を見つけた。幾人かがそれに続き、今度はセルジオがテラスから注がれる視線に気づく。王太子としては非常に気さくな風に会釈をして見せた彼に、小さな歓声が上がる。

 そのセルジオの二歩後ろを歩いている少年が、まったく同じ動きで会釈をして見せた。頭半分ほど背が高いのに、緩めた速度や狭めた歩幅まで、あらかじめ練習したようにそっくりだった。歓声を上げた口が一斉に閉じられ、「あら、あれはどうするべきかしら」と含み声の視線が行き交う。

 一人だけ顔を真っ青にした少女がいた。一つ下の学年の腕章をつけている彼女は、深く頭を下げながら、「申し訳ございません。兄のロベルト・エルメンラインの無礼をお詫び申し上げます」と歯切れよく洗練された謝罪を述べる。

 エルメンライン。記憶にかすかな引っ掛かりを残す名だ。しかし“美瑠”より早く“カメリア”の体が反応した。カメリアとして培った十七年の時間の中に、その名は深く刻まれていたのだ。

「まあ! エルメンライン! 私ったらすぐに気付かなくて……こちらこそ、申し訳ないわ」

 席を立ち、まだ頭を上げようとしない少女の手に触れる。恐る恐るといった様子の、潤んだ瞳が見上げた。

「エルメンラインの家名は、幼少の時分より聞かない日はありませんでした。忠勇の血脈を受け継ぐあなたとお話できて光栄ですわ」

 再び伏せられた顔は紅潮していた。その頬には、賛辞を当然のものと受け止める確かな自負の色が見える。賛辞だけではなく、周囲の子女らが必死に隠す焦りや嫉妬さえも、華奢な体で難なく受け止めているだろう。貴族とはそういう生き物で、しかしそれ故に、過去のあやまちが国を滅ぼしかけたのだ。

「そして、今日同席くださった皆様にも同じように感謝申し上げます。私の学園生活最初の一日を華やかに迎えることができたのは、皆様のおかげです。そして何より……」

 今や、頬を紅潮させているのは、エルメンライン嬢だけではなかった。次にかけられる言葉を待ついくつもの目が私に向けられている。それらは全て期待の色に輝いていた。

「今ここにいらっしゃる皆様は、押しなべて先の戦争で共に苦難を戦い抜いた、勇気ある先人の子孫であるということです。今こうしてヴァーチェの血脈が続き、国があるのは、共に立ち向かってくださった皆様の祖先のお陰なのです」

 国王と佞臣ねいしんの問題は多くの国が少なからず経験するもので、ヴァーチェ王国も同じ問題に直面した。見限り国外に去る者がいる一方、当時の国王に反発し国を立て直そうとする貴族は決して少なくなかった。

 いよいよ大きくなった反発に対し、国王が隣国の協力を仰いだことで事態は一変した。もともとヴァーチェは東西を大国に挟まれた比較的小さな国だが、東西の直接の接触を阻み、無用の衝突を避ける役割を担う地理的な役割が認められていた。故に、反乱の芽を摘むために東の武力を招き入れることは、近隣国の均衡を崩すことに繋がるのだ。当然、西からは警告じみた通達があり、もしもの場合にはヴァーチェのための温情など一つも期待するべきではないとはっきり述べられていた。

 国の存続が危ぶまれた時、旗振り役として貴族たちをまとめ上げ、新王家の樹立を宣言したのが当時の国王の従兄筋の貴族であり、現在王冠を頂いているヴァーチェ家である。

「この学び舎は、過ちを繰り返さないよう、閉じた貴族の世界を開放するためのもの。今は貴族と選抜された市民だけですが、いずれ多くの有望な者に教育を施す場になることを期待されています。私が王妃の名を頂き優れた公人になるためには、一人の私人として豊かな経験が、多くの学びが必要だと考えています。どうか次の世代を育てること、そのために私を育てるお手伝いを、皆様にお願いしたいのです」

 私を見つめる目は一様に蕩けていた。長い長いお預けの末、ようやく好物にありついた赤ん坊のように純粋に、かけられた言葉に浸っている顔だ。幸福感や感謝が呟かれる中、誰かがひときわ大きく「カメリア様万歳」と唱えた。万歳は次第に数を増やし、重なり、大きくなっていく。

 輪唱のように中庭に響くそれが、私には恥ずかしくてたまらなかった。カメリアとして教育を受けた十七年は、貴族の子女の心に響く文言を心得ていたが、“美瑠”は自分が仰々しい言い方を抵抗なく操ったことや、欣喜雀躍きんきじゃくやくする人々に囲まれたことなどない。一般的な高校生なりに内省する私にとって、この三十秒の間に生じた物事は何もかもが不釣り合いだ。

 小間使いが施した化粧の下で、頬は真っ赤になっているに違いない。耳も首も熱い。やはり恥ずかしいに違いないのだ、この感覚は。なのに、どうしてだろう。心臓が喜びのリズムで打っているように感じるのは。賛美を浴びることへの高揚と充足感、腹の奥の欠けていたものが満たされる、不思議な熱が喉の奥にあるではないか。

「皆様、お止めください」

 その喉は、カメリアの経験に基づき、相応しい静止を発した。

「万歳は、どうか国王陛下ならびに女王陛下に捧げてください。セルジオ様の父母であり、私の父母となった両陛下はご存命であり、今のこの瞬間も国のために心を砕かれているのですから」

 少女たちははっと口元を覆うと、恥じ入ったように身を縮ませる。

「もっとも、人生には様々のことが起こりますから、どんな不幸不運が生じるか分かりません。あるいは普段から想定して備えておくことは重要に思いますわ」

 子供を慰めるような口ぶりで、唇に人差し指を立てて、注目を促す。えくぼから溢れた笑いが、こわばった空気を変えていった。

「まあ、カメリア様。どんなことを考えられますの?」

「そうですわね、例えば待ちに待った小説が出版された時は、かなり危ないと思いますわ」

 中庭を小柄な赤毛が横切ろうとしていた。分厚い本を、けれど椅子まで待てないというように広げて持ち上げて、活字を視界いっぱいにしながら歩いている。

「少しでも早く読みたくて、屋敷の門をくぐり、馬車を降りて、すぐに本を開きますでしょう?」

 文章に集中する上半身を、足は着実に中庭の向こうに運んでいく。右足を足先から蹴りだすように前へ。支える左足は僅かに膝を曲げて体を支え、膝が曲がった分だけ癖毛の頭が低くなる。頭頂部の寝ぐせか巻き毛か判断しかねる部分がぴこぴこした。

「そうすると、目が文字だけに集中して、視野がぐっと狭くなって、足元なんかは特に疎かになってしまいますわね?」

 右足の裏が着地したと同時、膝がぐっと伸びて、頭の位置が高くなる。

「思いがけず穴に足を突っ込んだり、どこかにつまづいたりするかもしれませんわね。そうしたら、完全に注意を払っていなかったその人に何ができるかしら」

 低くなって、高くなって、低くなって。赤毛が揺れる。ひょっこり、ひょこり。

「悲鳴を上げる間もなく頭をぶつけ、哀れ一巻の終わり! まったく、危ないことこの上ありませんわ」

 高い笑い声が起こる。皆、私の話をあまりに冗談じみた不運を例えた冗談の一つだと断じたようだ。

「もう、カメリア様ったら!」

「おほほ、ほほ……ほ……」

 笑い飛ばされるほど不運な死因は、海石榴美瑠のものである。

 あの日、私は帰宅の途中、スマートフォンをいじっていた。お気に入りのウェブ小説『ヴァーチェ王国の救聖女~ベルタ・セレーニ奇譚』が完結して半年、執筆者から突然「近日、お知らせがあります」という短い近況報告があった。

 まさかの更新再開か、はたまたスピンオフの執筆開始か。逸る胸を抑え、手汗を意識しながら、そうだ折角だからもう一度読み直して復習しておこうと、ブックマークに指で触れた、その瞬間だった。

 踏み抜く勢いで片足を側溝に突っ込み、何が起こったか理解するより先に、後頭部と側頭部に衝撃が走り、視界がぶれて暗くなった。痛みよりも、突然の停電に見舞われたような暗黒ばかりの記憶と大きな混乱。それが、女子高生・海石榴美瑠の最期だった。

 我ながらなんて死因だ。

 あのスマートフォンは家族や第発見者に見られたに違いないし、人の口に戸は立てられないので広まった噂を聞いたクラスメートは一頻ひとしきり泣いた後の赤い目を丸くして「え、美瑠っぴこういうの読んでたんだ、へー」なんて言うだろうし、そもそもの死因についてはあんまりにあんまりで、厳しい祖父などは悲しむと同時に「まったくひどい不注意だ」と叱責し、嘆いているのか怒っているのか判断しかねる状態になって血圧を上げてしまうに違いない。自分自身でさえ、落ち込むより先にまるでコントだと呆れてしまうほどには、近年稀まれに見る不運なのだから。

 しかし、私の意識は新たな肉体を得て目覚めた。

 十七年分のカメリアの記憶、学んだ歴史や文化、そして何より夫となるセルジオ・ヴァーチェ――蘇った“海石榴美瑠”は全てに「読んだことがある」という印象を抱き、その感覚の正体を突き詰めれば、文字通り死の直前まで愛読していた小説の世界に覚醒したとしか、考えられなかった。不運は、想像を逸脱する奇異なる運でもあったらしい。

「まっ、あんなところに!」

 きんと響く声の持ち主が、皆の意識を惹いた。異物を見つめるような眉間に力を込めた眼差しの先で、赤毛のソフィーがぴょこぴょこ歩いていた。ようやく中庭を半分ほど進んでいた。

「まるで尺取虫ね!」

 まったく白けてしまったとでも言いたげな、歪んだ笑いが起こる。例え虫だって、その冷たい笑いを聞けばその意味を理解するだろう。

 いわんや相手はソフィー・カルナウフである。一般市民でありながらこの学園に入った彼女は、実家の薬種問屋を継ぐべく、人並み以上の地頭を更に鍛え上げることに日々余念がない。努力を怠らない自分に厳しい秀才という、怠惰にふける理由を見つけるのが得意な凡人にとっては、脅威といえる存在であり、彼女自身もまた、自らが恐れられるべき人間であることを理解していた。

 故に、どんなに冷え切った笑いにも恐れることなく、その中に進み出ることができるのだ。音を立てて閉じた本を小脇に抱え、まっすぐにこちらに向かって来る。幾人かはソフィーのへの字の口を見て尻込みし、幾人かは近づく重い足音にもけろりとしていた。

「やあ、次期女王。取り巻きはべらせてご機嫌だな」

 真っすぐに私だけを見て、にっと片側だけ吊り上げた唇が無礼とも類される挨拶を吐く。

「おっと、すまない。あたしはどこの誰にでも同じように接することにしているんだ。薬と同じようにな。薬ってものが公平無比である以上、薬種商も同様じゃないといけないと、少なくとも、あたしの哲学ではそうなっていてね。確認だけど、薬は貴族と平民で効き方が同じだって知っているかい?」

 誰かが口を慎むようソフィーを諫めた。ソフィーは口の両端を上げてせせら笑う。薄い色の虹彩の真ん中で瞳孔が小さくなった。

「馬鹿にしているなんてとんでもない、貴族様。取り巻きのあんたらの様子をみて、次期女王のおつむの程度を推し量って話しただけじゃあないか。ほら、言うだろう。その人を知るには友人を見ろってさ」

 非難に変化した抗弁を身に受けて、ソフィーは天を仰ぎ軽快に笑った。本を抱えたまま、愉快な小走りで去る後姿は、これこそ勝ち逃げであると見せつける。一方の私はというと、自分では何もしていないのに、「カメリア様、気にすることございませんわ」「所詮平民のひがみですわ」と何種類かの慰めの言葉を掛けられている、まったくの敗者だった。

 文字通り、最悪である。ベルタの腹心の友であるソフィーは、是が非でも良い関係を作っておきたかった人物なのに。頭を掻きむしりたくなる“美瑠”の後悔の裏側で、“カメリア”の感性は、あんな物言いしかできない人物に話しかける必要性を感じていなかった。もっとも、何もソフィーに言話しかけられなかったのは、相反する二人分の価値観のためだけではない。

 どのようにソフィーと話すのが最善なのか、分からなかったのだ。

(だって……だって、小説には……)

 カメリアとソフィーが会話するシーンなんてなかった。二人が同一のシーンに登場したことすらなかったのではないか。

 考えるまでもなく、至極当たり前だ。私が読んだものはあくまでもベルタ・セレーニという人物の物語であり、私が現在生きているのはカメリア・ヴィヴァーチェの、最近カメリア・ヴァーチェになった人物の物語なのだから。

 そして同時に、海石榴美瑠のものでもある。ソフィーとの付き合い方を考えるのは、“美瑠”の役目だ。切り替えろ、多分まだ本当の最悪ではない。大袈裟にため息をつきたくなる喉を叱りつけ、可能な限り陽気な声を振り絞る。

「さあ皆様、名残惜しいですがお帰りの時間でしょう」

 学び舎が賑やかなのは午前中だけだ。午後には各々の雇う家庭教師による声楽や楽器、絵画などの習得のために屋敷へ帰る。ごく少数の者は、錬金術などというものに手を出して、屋敷の一角に専用の実験室をこさえたりしているらしい。取り巻きの面々の中にも、時間を意識する素振そぶりを見せる者がいた。

「皆さんにお願いがありますの。帰ったら絶対にしていただきたいことが」

 私が提案したのは、今度は私から皆を招いて茶会を催す計画だ。そのために、午後の時間を空けておいてほしいことを伝えると、それならすぐ明日にでもと声が上がる。

「学びを疎かにしてはなりません。そんなに急では、予定を組まれている教師の方々にも失礼ですわ」

 はっとする顔と、疑問の顔とはちょうど半分くらいか。にっこりと弧を描いたままの双眸は、“カメリア”の観察眼で少女たちをより分ける。カメリアの言うことには肯定しやすい者と、自分の中の基準を確立している者。もっとも、後者もやや渋々といった様子ではあったが、中庭を貸切る許可だって必要であることを指摘すれば、ようやくと了承した。勿論、友人知人を招いてもらっても構わないと付け足すと、全員が一斉に色めき立つ。自分でなくてもいい、誰か一族、王家に気に入られる者がいれば。あまりに正直に語る顔で、少女たちは千々に帰宅の途についた。

「……誰もかれも、なってないですわね」

 そうやって時の王位の周辺で甘い汁を吸おうとした結果が先の争いだったというのに。今尚、貴族たちは昔の習いとして、口先で売り込もうとする。

 やはり、学園を設立したのは正解だった。平民にも高度な学問への道を開いたこと、その道を大きく広くしていくことで、おべんちゃらでは太刀打ちできない優秀な者が国に取り立てられていくべきなのだ。

 そして、私が探しに行く人物もまた、そういう類の一人だ。彼女は間違いなく、午後の学園に残っている。

 午後まで残る生徒は、家庭教師が雇えない者や、器具や道具を揃えられないために学園の備品を利用する者ばかりで、その数は極々わずかだ。家庭教師といえば、爵位が継げず法職にも聖職にも就けなかった貴族が第三の選択肢とする場合が多く、その給料も推して知るべしものである。ごく一部、教育というものの価値を見出し、道を極めた者があえて家庭教師という肩書きになっていることがあるが、それこそ傷のない翠玉ほど希少な存在だ。

 今日お話ししたお嬢さんたちの、いったいどれだけが翠玉に等しい家庭教師を抱えているのやら。意味のない思考だが、だがもし、これから会おうとしている人物がそういう教師を雇っていたら、きっと私が彼女に接触することはできなかっただろう。

 校門で待っていた迎えに、これから学園内を案内してもらうので夕方出直してくるよう伝え、そのまま校舎の裏側の薬草園を目指す。尋ね人はすぐに見つかった。

 小柄な赤毛が、自分よりこぶし一つ分だけ背の高い木を見つめていた。細い枝が分岐した先に、やはり細長い鳥の羽に似た形状の葉が茂っている。裏と表で色が違うらしく、風に揺れるたび白くも深く緑にも見えた。ひるがえる様を一心に見つめていたソフィーは、枝先を辿り幹に手を伸ばし、根元に近い部分を思いきり掴む。

「ちょっ、あなた!」

 抜く。仮に木の一本でも学園の、生徒皆に共有される財産であるべきものを、抜こうとしている。かける言葉を選ぶ間もなく叫んでいた。

 振り向いたソフィーは私を見止めると嫌そうな顔を隠さなかったが、しかし自分の両手がしでかそうとしている事態がよろしくないことも理解しているらしく、すぐに気まずそうに目を泳がせて、手を幹から離す。しなった幹が元の位置に戻った。

「やあ、次期女王陛下。こんな草と虫の楽園に何か御用で」

「私のことよりっ、今、何をしようとしていたのですか!?」

 強烈な舌打ちが返ってきた。それから非常に不服そうな言い方で、この木はこんなところに植わっているよりもカルナウフ家で育ったほうが幸せである旨をつらつら主張した。

 しかも話しながら私を追い出す算段を企てていたようで、

「そっちこそ、ここに何の用さ。庭と薬草園の区別もついてないだろう、あんたの友達と一緒で。そういうヤツがいたって意味のある場所じゃないぞ」

 などと言い出す始末である。

「……昼の無礼は代わってお詫びいたします。けれど、その理屈によるとベルタ・セレーニ嬢がどういう人物か、私はあなたを見て判断しなければならなくなってしまいますわ」

 通じるか。美瑠にもカメリアにもまるで未知の相手に、生前の知識からどうにか絞り出した一手が。

「……ベルタを知ってるのか?」

 探る眼差しは、まさかの相手から飛び出た親友の名前に素直な驚きを隠せずにいる。けれどこれはまだ掠っただけに過ぎない。

「仮にも次期女王になる身。ヴァーチェ家を取り巻く家筋は、全て確認したつもりです」

 ソフィーは短く息を切って、軽薄に笑った。

「セレーニだぞ、セレーニ。言っちゃなんだが、あんなちっぽけな家まで調べているっていうのかい?」

「ええ。佞臣にへつらい、国の混乱を招き、しかし国外に逃げる当てもなく、今はまるで不義理の代名詞の一つの如く隅に追われた、あのセレーニ家でございましょう。そんな家が、ある日突然養女を貰ったと聞いて……」

「待て、あんた、そんなことまで?」

 彼女の興味が、はっきりと私に向いた。初めて美瑠の知識が役立ったことに、内心でガッツポーズ、しかしそれをおくびにも出さず、唇に薄ら笑いだけを浮かべ、ソフィーの視線にただ見つめて返す。

「……あんたのこと、見くびっていたかもしれないな」

 ひそやかな笑みと沈黙は、十分な効果を発揮してくれたようだ。ソフィーは右手を制服の裾で拭いてから差し出し、自身の名前を告げた。

「ま、知ってると思うけど」

「ええ、実家の周囲には薬用の植物を育てている農家も多くいましたから」

 当然、それらを買い付けにカルナウフ家のつかいがやって来る。ソフィー自身は田舎の薬草農家というものを直接見たことがないらしく、今度は仕事人のような目で話を聞きたがった。けれど全体の雰囲気を聞くと、すぐに中断を求めて首を振る。

「やっぱり、どこもそうなのか」

 不服極まるその表情の理由を聞けば、ソフィーは「薬草は広い敷地でのびのび育つより、小さくとも徹底的に管理の行き届いた環境で育てた方が、質が改善するはずである」という自論を切々と語り始めた。彼女曰く、栄養をかすめ取る雑草の侵入を許し、病気の運び手になる虫を見逃しやすい状態など、まったくけしからんということらしい。

 その正誤は分からないが、薬や植物に関する話題を振れば彼女はたちまち食いついて、小鳥が集団でさえずるが如く口を動かした。

 小説では気が強く口が悪いヒロインの友人として描かれていたけれど、ひょっとしたらこういう、好きなものを思いきり喋りまくりたいという一面をベルタに見せないようにしているのかもしれない。

 ソフィーは、珍しい花が咲く木の開花が間近なこと、庭園とは別に薬草園を作ろうと提案したのは先々代のカルナウフ家の者で、その時から代を重ねている植物もあること、最近は新種の購入を提案しているがなかなか学園から許可がおりないこと――すべてが一つの定理のもとに関係しているように並べたてた後、

「あんたとこういう話ができるとは予想外だったよ」

 と締めくくった。一方的だったものが途切れた瞬間を逃さずに口を挟む。

「私も大変興味深く伺いました。よろしければまたお話しませんか。ちょうどちょっとしたお茶会を計画しているところですの。学友として是非招かれてくださいな」

 ソフィーも友人を伴って参加してくれて構わないと付け加えると、ソフィーは相好を崩して笑った。

「ベルタなら、甘いものがあるって誘えば一も二もなく了承するだろな」

「勿論、心づくし用意させていただきますわ。もっとも、甘いお菓子がお二人の友情の妨げにならなければよいのですが」

「……あんた、ほんと、どこまで知ってるのさ?」

 少し、慎重に考えてから、答える。

 ソフィーは左目を細めた。傾き始めた日の橙が照らす頬を、まなじり目掛けて持ち上げた笑い方だ。それは果たして、満足の現れだろうか。そうであればと願わずにいられなかった。


 * * *


【件名】ありがとう

【本文】私も色々話したいこととか相談したいことあるの。前に行きたいって言ってたお店、おごるからおいでよ。

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