第21話 化学部の活動がおかしい その1
その事件が起きたのは、花壇作りを手伝ってから1週間後くらいのことだった。
いつもとは違う状況になったのは、寮の夜の自習時間に同室者と熱い議論を交わしているときだった。
「尻穴に当たるのは放出した水であって、ノズルじゃないんだ。銃でうんこ撃っても汚れるのは弾丸であって、銃そのものじゃない」
「でも、ノズルから水が出ている間に、確かに尻穴とノズルは水で繋がった状態になるんだ。他人の尻穴と繋がったノズルを使うなんて気持ち悪い」
「水は常に放出されていて逆流するわけじゃない。尻穴に触れた水がノズルにかかることはない。気にしすぎだ」
「でも...」
尚も否定しようとする同室者の言葉を遮って、ドアをノックする音がした。
指導生の見回りかと慌てて机の教科書を真剣に読むふりをしたが、ドアから顔を覗かせたのは知らない教員だった。
「津村、ちょっと呼び出しだ。悪いが自習を中断してついて来てくれ」
教員からの呼び出しなら指導生である上級生にも話は通っており、自習をさぼって抜け出したとは思われないだろう。
俺は公然と自習をサボれることに安堵して、教員の後について行く。
心当たりは全くないので、多分説教ではないだろう。
何の呼び出しか不思議に思いながらついて行った先は、寮にある宿直や事務員が執務している事務室だった。
「中に入ってこっちに座ってくれ」
事務室の中に案内された俺は、教員と向かい合ってテーブルに座るように促される。
「今、寮生数人の居場所が分からなくて探してるんだ」
そんなことを言われても、俺にはどこにいるかどころか、誰を探しているのかにも全く心当たりがない。
「落ち着いて聞いて欲しんだが、その居場所が分からない学生の中に津村くんのお姉さん、伊吹さんも含まれている」
そんなこと言われても、俺には姉の行方など分かるはずもない。
「放課後、地下空洞への入場記録があるんで、地下を探してるんだが見つからなくてね」
地下空洞の退場記録を書かずに帰るとか、寮の門限に間に合わないとかはよくあるらしいが、両方重なることは今まで無いらしく、何か事件や事故が起こってるのではないかと、結構な数の教員で探し回ってるらしい。
「地下空洞が関係するかもしれないんで、部外者に情報を出せなくてね。弟の君が何か知ってないかと思って呼び出したんだ」
「緊急で実家に帰るという話も聞いてないですし、友達と外に遊びに行ってるんだったら、俺には分かりません」
俺からの有益な情報をそれほど期待していた訳でもないのか、分からないと言っても特にあせったような感じはなかった。
「ただ、放課後に地下へ行ったんだったら、多分化学部の活動だと思います。この前、花壇作るのを手伝ったので」
どうやら予想外の有益な情報だったらしく、詳しく話すように促された。
地下15階の花壇について詳しく説明すると、一緒に聞いていた何人かの教員はなんとも言えない表情になった。
やはり、化学部のマッドな活動は、特殊なこの学校の中でも常識外れな行動に分類されるようだ。
「とりあえず、化学部の活動については置いといて、その花壇の場所がどこか説明できるか?」
この場で、口頭で花壇の場所を説明するのはちょっと無理だと言うと学校にある地下空洞の地図を見ながら話そう、という事になった。
俺は花壇の場所を説明するため、とりあえず学校まで同行することになった。
学校に行く途中、寮に来ていた教員達が話し合っていたが、どうやら行方の分からない他の学生も化学部の面子らしく、地下空洞にいる可能性が一番高いと判断し、地下の捜索を今より重点的にやるという方針を決定していた。
寮は学校の敷地のすぐ隣にあるのだが、裏門から学校に入った教員達は。色々な所に連絡しながら捜索のために散らばって行った。
色々煮詰まったので学校の闇を暴露する〜地下実習ってダンジョン探索じゃね?〜 @Earl
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