第18話 姉とその友人がおかしい その1

「おい、今日は自習に付き合えないぞ。っていうか、誘っといて途中でサボるようなヤツには二度と付き合わん」


是親の後に続いて教室を出たらそんなことを言われた。


「すまんって。貸し1ってことで、今度なんか言うこと聞くから。というか、今日は俺も呼び出しがあって自習は無理だな」


「貸し1だからな。それより、呼び出しってなんだ?なんかやらかしたのか?」


是親は何故か教員からの説教呼び出しと決めつけている感じだ。


俺ほど真面目な学生が説教されるようなことは...多分...今の所はないと思う。


「姉からの呼び出しだよ。理由は教えられてないが、とにかく放課後に化学実験室に来いってさ。面倒だが無視すると後が怖い」


「お前、この学校に姉がいるのか!?どんな人?学年は?美人か?」


是親の喰いつきがうっとおしい。さっきまではあまり興味無さそうだったのに姉を、というか女の話になるといつもこんなガッツいた感じになる。


顔がそこそこ良いのにモテないのは、そういう所だろうなと、そっち方面に全く縁がない俺でもなんとなく分かる。


「近所ではよく似た姉弟だって言われてる」


「なんだ、メスのゴリラか...」


俺の言葉を聞いて、急にテンションが下がる。


別に顔が似てるとは言ってないのだが。


外では無口で無愛想な所が似てるとよく言われる。別に家族と話すときは普通だと思うのだが。


是親のテンションが上がるとうっとおしいので、姉をゴリラのままにしておく。


「まあいいや。さっきの貸し1だが、お前の姉ちゃんの友達を紹介してくれたら帳消しにしてやる」


「考えておく...」


「なるべく可愛いお姉さまでお願いします」


友達紹介しろなんて言ったらあの暴力姉から拳が飛んでくるのは確実だ。


姉に言っといたことにして、しばらく誤魔化すかな。


「おい、ちゃんと頼んだぞ。可愛い子だぞ!」


そんなことを言いながら是親は校舎の外に向かって去って行った。


是親と別れた俺は化学実験室に向かって歩き出す。


化学実験室は校舎の1階の奥にある。


姉は化学部に所属してるので、多分その活動場所に呼び出されたのだろう。


化学実験室の扉を開けて中に入ったら、奥の方で女子学生が5人ほど集まって何やら話しているようだった。


入ってきた俺に気付いたのか、5人のうちの一人がこちらに歩いてきた。


「遅い」


「一年生はさっきまで授業だったんだよ」


いきなり文句を言われたので言い返す。


俺の所に寄ってきたのは、俺を呼び出した姉だった。


相変わらず俺に対しては態度がでかい。内弁慶なくせに。


寮で見かけても話し掛けても来ないのに、自分の用件があるときはこうして呼び出すようだ。


姉はこの学校に入学して寮に入ってからは会う機会が極端に減ったが、俺に対する暴君ぶりは全く変わることはなかった。


いつもなんだかんだいいように使われるが、ちゃんと文句を言うことだけはやめない。


弟という弱い立場の俺が取れる精一杯の抵抗だ。


今回も結局は何かやらさせそうだが、面倒なので出来たら断りたい。


俺の心境はそんな感じである。

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