第12話 技術職員がおかしい その3

さて、ここは15階の階段前にある休憩スペースだ。


ここまで、すごい早さで移動させられた。


背中の荷物に気を使って歩くのは思ったよりストレスが大きく、大変疲れた。


5階毎に階段降りてすぐの場所に大きな休憩スペース兼荷物置き場があるのだが、今はそちらで一旦休憩となった。


早歩きみたいなペースで歩かされ、背中の荷物を揺らしてガチャガチャいわすと、もっと丁寧に歩くよう注意されたりもした。


北村の方も大きな荷物を手で持って移動しているのに、まったく疲れた様子も見せてなかった。


「ちょっと待ってろ、ここから先で必要になる道具を持ってくるから」


北村が座り込んで休憩している俺にそんなことを言って、奥の学生立ち入り禁止スペースに入って行った。


少しすると奥から何かを持って来た北村が帰って来た。


「俺の発明品、ランタンメットだ。ここからはこれを装備しろ」


北村が手に持ったヘルメットを渡して来た。


それは、単純にヘルメットの頭頂部にでかいLEDランタンが固定されているものだった。


試しに身につけているヘルメットを外し、ランタン付きのヘルメットを着けてみる。


「この階は途中までしか本道の整備がされてないのは知ってるな。未整備の道は灯りも少なく極端に暗くなるからライトが必須になる。そのランタンメットは両手をフリーの状態にしつつ、周囲を明るく照らせる俺の発明品だ」


ランタンメットと呼ばれるものを着けてみたが、頭頂部が重くて頭がフラフラしてしまう。


「なんか重くてフラフラするんですけど...」


「体幹を鍛えて体軸を安定させろ。移動や攻撃時に軸がぶれないように訓練すれば、余計な動きが減って体力消費も減る。戦闘能力なんかも見違える程レベルアップするぞ」


残念発明品を生かすための言い訳にしか聞こえながい、とりあえず頷いて納得したフリをする。


「あと、これを腰に下げておけ」


北村が渡して来たのはベルト付きの鞘に入った短剣だった。


「これ、短剣ってやつですか?」


「あー、1年生はまだ武器は解禁されてないんだっけか。これはスコップだ。ちょっと平べったいスコップだ」


いきなり武器を渡されてびっくりしたので聞いてみたら、北村は1年生が武器を使ったことがないのを忘れてたようで、何食わぬ顔をして無茶な理論を言い出した。


「そして、これが俺の自慢のスコップ、グレート北村3号だ!」


北村が大事に持って来ていた荷物から布を取り払うと、中から大剣が出て来た。


「先生、それ大剣っていうやつじゃ...」


「いやこれはスコップだ。ほら、持ち手の所とかまんまスコップだろ」


何言ってんだこの人は、という顔で見ている俺をまったく気にすることなく、北村は持って来たベルトを大剣の鍔部分に取り付けると剣を背中に背負った。


「2年生からは武器の扱いや規則なんかを実習の中で教えるんだが、今はスコップということにしておく。じゃあ休憩は終わりだ、先に進むぞ」


北村に促され、荷物を背負い直した俺は歩き始めた北村の後に着いて行く。


「ここからは敵、地下生物が襲ってくる頻度が多くなる。歩きながら対処法を教えてやる」


俺は話しながら歩く北村に歩調を合わせる。まだ結構な早歩きだ。


もう少し行くと整備した道が終わる。ここらへんは実習で工事の手伝いをさせられてるから知っている。


だが、整備中の道の奥には行ったことがない。まったくの未知に挑む俺は少し緊張していたが、北村の方は慣れたものもかまったく緊張している様子は無いのであった。

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