第11話 技術職員がおかしい その2
「北村先生?」
「おう、北村だ。1年生は担当してないんで、会ったことないと思うけど、もう少し学年が上がったら実習とかを担当することになるな」
「今日はよろしくお願いします」
何させられるか分からないが、とりあえずは大穴に連れてってくれるみたいなので頭を下げておく。
「俺の言う通りに鍛えたら、どこの研究室も欲しがるスーパー人材になれるぞ」
「研究室?」
このときは実習と研究室の関係がよく分からなかった。
「そうか、1年生は研究室とか卒業研究についてはまだよく分かってないのか...」
このときは北村が簡単に説明してくれたが、この学校は普通の高校と違い、卒業するのに卒業研究というものをやって合格しないといけないらしい。
そういう高校というより、大学に近いシステムがあるらしい。
この学校の教員は教育者だけでなく研究者という一面もあり、それぞれ研究室というものを持っていて、学生は高学年になるとその研究室に所属して教員の指導を受けながら研究というものをさせられる。
ほとんどの教員は大穴に関係する研究をしていて、学生も卒業研究で大穴に関係する研究をするらしい。
なので、大穴の研究を大いに進めることができる、実習の評価の高い学生をどこの教員も自分の研究室に欲しがるらしい。
「大穴に潜ってるだけで卒業できるような、圧倒的な実力が欲しいです...」
「...ああ、うん。悪くない、その目標自体は悪くないと思う。でも、座学を全部捨てるというのは...ちょっと...決断が早すぎると思うんだ」
北村がなんだかうろたえたように言ってくる。
「もうちょっとだけ、座学の方も頑張ってみよう。まだ1年生なんだし...」
「分かりました。とりあえず、勉強の方も努力してみます」
俺のそんな返事に北村はなんだか安堵した様子だった。
後から知ることだが、実習の高評価だけで成績がどうにかなるわけもなく、最低限でも授業の方の赤点を減らさないと進級できないという事実を、この時はまだ知らなかったのであった。
「よし、とりあえず今日は俺の手伝いということで、大穴の下の方に連れてってやる。大穴の下の方でお前の実力を見てやろう」
「ありがとうございます」
「そこにある荷物を持ってついて来てくれ」
北村が指定した荷物は結構大きな段ボール箱だった。その段ボール箱には、肩に通して背負うためのショルダーストラップが取り付けられていた。
俺は北村の用意したサポーターを手足に着けてヘルメットを被ると、その段ボール箱を背負った。ちょっと重いが、動けなくなるほどではない重さだった。
「中に壊れ物が入ってるから、あまり揺らしたり落としたりしないように注意してくれ」
「分かりました」
俺が準備してる間に北村は奥から白い布で包まれた大きな平べったいものを抱えて来た。
「よし、行くか」
北村はそのまま布に包まれたその何かを抱えて大穴に行くつもりのようだ。
俺は邪魔そうな大きな塊を抱えた北村の後ろについて、地下の大穴に降りて行くのだった。
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