第9話 地下の作業はちょっとおかしい?
「せんせー。なんかネズミが威嚇して来るんですが」
ここは地下15階、俺はでかいスコップで砕かれた石の山を崩してネコグルマに乗せていた。
俺の目の前には猫くらいでかいネズミがギーギー言いながら威嚇している。
「ぶっ殺せ!」
道の少し先でドリルを使って壁を削っている教員に指示を仰ぐと、単純明快な返答が返ってきた。
「うぃっす」
適当に返事をしてスコップを構えてネズミに相対する。
地下に出るでかいネズミは知能が低く単純なので、ちょっとしたフェイントに面白いように引っかかる。
今回も目線をちょっと逸らしてやると、隙を見せた思って飛びかかってきた。
空中で身動きが取れないところをスコップでぶっ叩く。
スコップがネズミに当たる時、スコップの縁、刃の部分をうまく立てて、ネズミの体に対して垂直にブッ込むのがコツだ。
今回は特にうまく入ったのか、ネズミの体が真っ二つになって、壁に向かって飛んでいった。
「あ!またお前がネズミ倒したのか!」
空のネコグルマを押して戻ってきた是親が騒ぎ出す。
「ネズミが出たら俺が倒すって言っといただろ!」
俺はうんざりしながら是親の抗議を聞き流す。
「急に出てきたんだからしょうがないだろ」
「次に出てきたらちゃんと俺に回してくれよ」
是親はやたらと地下に出る有害生物をぶっ殺す役をやりたがっていた。
本人曰く「もう少しでレベルが上がりそうだから」だそうだ。
こいつのゲーム脳は実習の最初から全く直る気配もなく、今でも
「もうちょっとだ。あとちょっと経験値を手に入れたらレベルが上がるはずだ」
是親はまた、ステータスとかいうのが見えないかブツブツ言っている。
是親じゃないが、俺たちも実習の最初の頃と比べるとだいぶレベルアップしてるような気がする。
是親の考えるゲームやアニメのようなレベルアップではないが、見えない所で俺たちも実力を身につけてきていると思う。
最初は5階くらいを往復するだけで動けなくなっていたが、今では15階で土木工事の肉体労働やってるし。
ネズミなんかも、最初は飛びかかられて腰を抜かしてるクラスメイトも多かったが、今では蹴っ飛ばしたりぶっ叩いたりして適当にあしらっている。
「ファイアボール!」
「何やってるんだ?遊んでないではよ働け」
俺は真剣な顔をして右手を突き出しながら叫んでる是親に、石が満載のネコグルマを指して早く運ぶように促す。
「これだけ長いことダンジョンで活動してるなら、そろそろ魔法かスキルを覚えてもおかしくないんだが」
もう1年生も終わりなんで、この地下実習も1年近くやっていることになる。
当初は絶対におかしいと思っていた実習にも馴れて何も感じなくなってきた。
人間、どんな環境にもある程度順応できるもんだなと、少し関心する。
「俺のよんだダンジョン探索系のラノベでは...」
なんかフィクションの内容を根拠に是親が持論を展開している。やっぱり、こいつはバカだなーと思った。
「俺も、似たような状況の漫画読んだことあるぞ」
その漫画ではどんな感じだったか、是親が期待を込めて俺に話の先を促す。
「確か、ギャンブルで借金背負って、地下で強制労働させられて、外出券を手に入れるためにチンチロ...」
最後まで聞かずに是親はネコグルマを押して去っていった。
これ実習だよね。成績をエサにした強制労働じゃないよね...
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