第8話 試験が...試験の出来がおかしい

「死んだ...」


「お前いつもそれ言ってんな」


今日は定期試験の最終日だった。俺の悲しみと共に試験の回答が回収されていく。


最後の試験を終えた俺はその出来に絶望し、口から魂的な何かが抜けていくような感覚を味わっていた。


「ダメだ。俺はもうダメだ。座学はもう希望はない」


「まだ1年生なのに、今からそんなんで大丈夫か?」


前の席の是親が心配そうに声を掛けてきた。


「もう実習に賭けるしかない。俺には実習しかないんだ。実習でなんとかして2年生になるんだ...」


「お前、実習の方は凄い評価高いのに普通の授業は全然ダメだな。なんで実習と同じくらい座学の勉強も頑張れないんだ?」


「中学の時の受験勉強で燃え尽きたんだよ。まだこの学校に入って1年目なのに、また勉強頑張るとか、正直考えたくもない」


実習はまだ座学の勉強と違って、体を動かすことがメインだから楽しいし、いくらでも努力できる。


「最低限は座学もできないと2年生に進級できないぞ」


「今は考えたくない...」


寮に帰る準備をしているが、試験の間は実習もなかったのでなんだか体を動かしい気分だ。


「思いっきり体を動かしたい。帰って実習の自主練でもするわ」


「お前は運動神経もいいし、体を動かすのも好きなら、何か運動部にでも入ればいいのに」


是親の言うことももっともだ。


「やりたい部活もないし、なんかタイミングも逃したから、今更運動部に入るのもなあ」


何か切っ掛けでもあれば入ると思うが、今はまだ部活に入るような気がしない。


そんな話をしながら帰りの準備をし、カバンを持って教室から出ようとすると是親もついてくる。


「俺は山﨑達と打ち上げでカラオケ行くんだが、お前も来ないか?」


山﨑達と言えば、隣のクラスの是親の友達で、確かイラ研と映研の二人だったと思う。


いつものオタク三人組だけだろうから、カラオケの面子に女子が含まれるなんてことは絶対ないだろう。


「やめとく。どうせいつものオタク三人組だけだろ?女の子とかいるなら行くが」


「女の子は現地調達の予定だ」


「絶対無理だろ。それ」


「そうかな?他にもカラオケで試験の打ち上げしてるグループいそうだから、そこに声かけたらいけると思うぞ」


「お前は声かけられるだろうが、他の二人は無理だろうな」


「そうか?」


「せいぜい頑張ってこい。仲良くなったら俺にも紹介してくれよ」


その後、俺は寮に帰ってから自主練に精を出すのだった。


1年生のときの最初の試験からこんな感じだった。勉強、座学とは仲良くなれない、このときからそう感じていた。


それは予感ではなく確信だったと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る