第5話 実習がおかしい(初ダンジョン編)その1

さて、実習の最初の時間は座学だったが、次の時間からは実際に学校の大穴に入ることになった。


このときはただの見学だけだったが、分厚いツナギに鉄板の入った安全靴、手足のサポーターにライト付きのヘルメット、軍手までつけたらもう暑いし重いしでただ歩くだけでも大変だった。


俺が振り分けたられた実習班は男ばかり5人の大変むさ苦しいメンツだった。


出席番号(名字の五十音順)で容赦無く割り振られたので、5〜6人の班員のうち、女子が二人も入ってる班もあった。


俺の隣で女子のいる班を羨ましそうに見ている男が、後の相棒である是親これちかである。


是親がいうには、この時は俺の方が女子のいる班を物欲しそうに見ていたと主張している。この話になるといつもお互いの認識が一致せず、何らかの争いに発展するので、今は置いておく。


残りの3人の班員は、確かなんか運動部系の奴らだったと思う。2年に進級してからはクラスも別になって疎遠になり、今は会ったら話をする程度のそこそこの仲に落ち着いている。


さて、相棒という話題が出たが低学年、特に1・2年生の間はこの5〜6人の実習班か、それ以上の人数のグループでないと大穴に入らせて貰えないルールになっている。


高学年になるとルール上、最低二人から大穴に入れるようになるのだが、だいたい4人以上で大穴に入るグループがほとんどだ。俺と是親みたいにコンビで大穴に入る学生は少し珍しい。


さて、大して重要でもないが、この是親という男がどんな人間かという事に少し触れておく。この時期、特に学校生活の中で一番会話が多かったのがこの男だからだ。


是親という男はツラがそこそこ良く、コミュニケーション力もあるのだが、天然で空気を読めないような言動も多いので、周囲からは憎めないウザキャラみたいな扱いをされている。あと、ちょっとオタク趣味がある。


女子からも彼氏にするのはちょっと...とよく言葉を濁されている。


この1年の実習で同じ班になったことが切っ掛けで是親とは親しくなり、この関係は以降も長く続くことになる。


さて、是親のことは置いといて、このときは初めて地下の大穴に行く、という事で服装の準備・点検についてを教室で教えられた後、大穴の入口がある場所までクラスのみんなでぞろぞろ歩いていた。


大穴の入り口はなんか大きな機械がいっぱいある工場?の隣の建物の中にあった。


なんか、地下大空洞とか呼ばれていたので、鍾乳洞みたい洞窟をイメージしていたのだが、周囲はコンクリで固められてるし、LEDかなんかの照明もあるため、斜め下に進んで行くちょっと狭めのトンネルみたいな入り口になっていた。


先頭は担任、最後尾には副担任の先生が着き、班毎にかたまって地下に進んでいく。


「ダンジョン突入初体験だ!」


是親がやたらと興奮して挙動不審な状態になっていた。


このときの実習は地下1階をぐるっと歩いて見学するだけだったのだが、何もない整備された道を歩くだけなのに、慣れない装備でやたら疲れたという思い出が記憶にある。

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