第47話 もう戻れない
***
「その……明かりを少し暗くしてくれると嬉しいのだけど……」
「こ、ここのツマミを回したらいいのか……?」
「……あっ、これぐらいでいいわ」
ついさっきまで沙月にソファの上に押し倒されていたはずが、今はベッドの上に移動している。
俺は沙月に対して性的な魅力を感じることはない――そのようなことあるわけがない。
ラブホテルというある意味異質な空間で、沙月と二人きり。沙月の方から半分襲われ誘われてもなお、理性を保てるほど俺は悟りを開いているわけでもないのだ。
「その……平野さんと違って胸もないし肉付きもいまいちだから、ガッカリするかもしれないけど……」
上下下着姿になった沙月が、胸の前で腕を交差させながら下を向く。
俺は沙月の手を取って、ゆっくりと腕を広がせながら後ろに押し倒していく。
「平野が大きすぎるだけで、沙月が小さいってことはないと思うけど」
「そ、そうかしら」
俺はそっと沙月の片方の胸に手をやる。掴んでみるとちょうど手のひらに収まるぐらいの、弾力のある触り心地だった。
むちゃくちゃ着痩せする……とまではいかないけど、服の上から見るよりは、明らかに目を引く大きさをしていることは確かだ。
「痛かったら言ってね」
「……うん」
今度は両手で、それぞれ十本の指と手のひら全体で押し込むように揉んでいく。
沙月の口から僅かに吐息が漏れる。それを察した俺は上体を傾けて沙月にキスをする。
「んんっ」
沙月は自らメガネを外して俺の顔をガッシリと掴むと、そのまま離れることは許さないと言わんばかりに舌を入れてきて激しく絡ませてきた。
それに合わせて、下着越しでも分かるぐらいの突起物が左右それぞれ俺の手に伝わってくる。
わざわざ目で確認しなくても中央にあるそれに対して、俺は指の爪と腹を使って重点的にそこに狙いを定めていった。
「〜〜っ!」
沙月は唇を離そうとしない。けど必死に声を抑えようとしているのがよく分かる。
それを象徴するかのごとく、静かだった沙月の腰がさっきから浮いたり横にくねらせたりと、意志を持ち始めたかのように動き出しているのだ。
俺は左手を胸から離し、そのまま線を引くように下へと滑らせた。
上と同じで下の方も、綺麗な白の下着を纏っていることはさっき確認していた。
今度は揉むのではなく、包み込むようにして撫でていく。
上から下へとゆっくり指でなぞり、すぐに生暖かい感触がした。俺がもう一度確認しようとその部分を上から押してみると――
「ち……違うのよこれは……!」
俺の肩を軽く押して目をぎゅっとつむる沙月。
「違うって何が……?」
「だってほら……こんなすぐに濡れるなんて、まるで私が変態みたいじゃないの」
「いや、十分変態だと思うけど……」
過去に散々俺に対してセクハラ紛いの発言をしてきたのは記憶違いなのだろうか。
とは言え、いつも余裕ぶって大人びた態度を取る沙月がこういう初心な反応を見せてくれると、そのギャップをもっと独占したいという欲情に駆り立てられる。
そして今ここで主導権を握っているのは沙月ではなく俺なんだと、分からせてやりたくなる。
「嫌ならもう触るのやめるけど」
「……嫌だなんて言ってないわよ。けど……」
「けど……?」
「そろそろ焦らすのはやめて……直接触ってほしいわ……」
「勝負下着じゃなかったの?」
「み……見たいならまた今度好きなだけ見せてあげるから……でも今は……」
俺が言うよりも早く、沙月は背中に手をやるとホックを外しにかかる。
同時に俺も、片割れである下の方に手を伸ばす。沙月が器用に腰を少し浮かせてくれたおかげで、スムーズに下っていき沙月は一糸まとわぬ姿となった。
「ねえ、私も速斗の触りたい。触り合いっこしようよ」
「うん……」
沙月は起き上がると俺のパンツに手をかけた。
体の関係だけの偽カノと、転校生の元カノ 西木宗弥 @re__05
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