Story 9 晩餐の後

初めての訓練が終わり、フェリックスさんに案内され晩餐を済ましたあとの事。

皆また部屋に戻った。

しかし私は戻る最中に創作魔法で作った

「消音」「透明化」「認識阻害」を発動させて帝国の城の窓を開け、外に出た。

そして三角柱型の屋根の尖端に立ち夜空を見ていた。

「これが、ラルジュの空か。月のような星が3つも浮かんでいるぞ…サイズは……満月より大きく見える。潰されるほどの存在感を持っているな。それに色は白、紫、赤と来た。改めてここが異世界だと認識したよ。」

ラルジュに来る前に私たちにスキルや加護を与えた女神、ルーナは今頃どうしているだろうか?会ってみたいものだな。

それはさておき、まだ使っていない空間魔法の試しがしたいな。

(白く光る星の方へ向かいなさい…)

「なんだ?」

(その方向へ進めばあなたの欲するものが見つかるでしょう)

こ、これは脳内に直接話しかけているのか?…

いわゆるテレパシーと言うやつか。

ま、私の求めてるものがあるなら言ってみるか。

「…ふぅ」

「創作魔法、空中歩行。発動」

フワリ。

体が空へと浮き始めた。

成功だ。さぁ目指す所へ行こうか。

████████████

白き月の光に照らされながら空中歩行をする楓華のその姿はまさに夜空を駆ける燕のようであった。

歩行と言いながら目に追えない速さで移動することも燕と言える要因のひとつだろう。

時が経つこと10分程であろうか。

眼下には透き通る水に沈んだ古代都市があった。

「美しい…これは、私が前世でよく想像した夢のような場所。最高じゃないか」

(こっちです。こっちへ来なさい)

「ん?これはまた…」

その言葉の後水に沈んだ古代都市の上空が白く光り輝いた。

正直勘づいている。

声を聞く限り、確実にルーナだ。


私古代都市の中心にそびえ立つ半壊した塔の最上階へと足を踏み入れた。


しかしそのひとつ下のフロアに人影が見えた。ルーナだ。


予想が的中したわね。


「おや、あの声はやはりルーナ様だったのですね」

「バレてしまいましたか。コホン、またもや突然呼び出してしまいましたね。実は私、帝国アイラン・サイラルに転移させる最中に大きなミスに気付いたのです。既にご存知でしょう。それは―」

「全次元神統括神の加護、誘惑でしょうか?」

「え、ええ。その通りです。その加護は私が間違えて与えたものなのです。…ですがその、常時発動でエッチなその加護どうですか?実の所」

こ、この人いきなりズバッといいやがった?!

「ま、まあまさか夢に見てた女子への転生、加えてムフフな経験ができるとは夢にも思っていませんでしたわ。」

「実はね、私ずっとあの次元からあなたのこと監視してたのよ。」

「監視って…」

本気で言ってるの?ちょっとそれはさすがにプライバシーが…

「ええ、言葉の通りです。何せ私重度の百合好き、女の子同士の交わりが大好きなのよ!」

えぇ……

「…ま、まぁその話はまた時間がある時に。それで、私をここに読んだ理由はそれだけですか?こんな美しい都に招待した理由は如何に?」

「また見抜かれましたね。ここに招待した理由は2つ。1つはこの美しい景色を見せるため。1つはこの都に眠る秘宝をあなたに探させ、あなたの願いを叶えるため。

それともうひとつ。私からのプレゼントがあります。これを受け取りなさい」

ルーナはそういうと、空間に穴を開け、その中からフリルの着いたレースの手袋、そして薄い水色に白いフリルの付いたゴスロリ服、そしてうさぎの形をした肩掛け鞄、白い靴を出して渡してきた。

「それを着なさい。この世界であなたが着れる服は今あなたが来ている露出の高い服かそれより上位の伝説級に値するこのゴスロリ服しかないわ。他にあるとすれば私以外の神に作ってもらうしかないわね。でも、何故かあなたはこの世界で下着をつけることが出来ないのよね。そこは勘弁してちょうだい。」

ゴスロリ…か。

でもノーパンからは脱出できないのね。

興奮しちゃうじゃない。

素肌に直接ゴスロリ服を着るなんて。貧乳だからブラも無いし、いいじゃない。

「分かったわ、どこかで着替えてくるわね」

「気をつけて、わたしはこの辺りで待っているわ(ボソボソ)」

「?うん。じゃあちょっとお待たせするわ。」


わたしは吹きさらしになっている最上階で着替えることにした。美しい景色を眺めながら着替えるのだ。


静寂に包まれた最上階には衣擦れの音が鳴り響き、背の低い少女の体が月の光に照らされて露になる。

その肌は白く、美しい。


とりあえず脱いだ服は空間魔法で作ったアイテムポーチにきちんとしまっておこう。


それにしてもありのままの姿になるというのは素晴らしい。

興奮し体が火照ったわたしは冷たい床へと裸のまま大の字に倒れた。

半壊した塔の最上階であるため、もちろん天井はないし、壁もほとんどない。

無防備な姿で横になる私の体を夜風が心地よく包む。

横にごろりと転がれば冷たい石の床に乳首や筋があたり、その度に興奮が増す。

ここにいる間だけ、ありのままのこの姿で過ごそう。

そう考えわたしは貰った靴とレースの手袋だけを付け、ほとんど露のままルーナの元へ戻った。

当然と言えば当然だが、ルーナは驚いている。

「エッ そ、そんな破廉恥な格好しちゃって…もう!あ、誘惑が発動してるものね、なら仕方ないわね!いやー眼福眼福。」

先程まで女神の威厳を持っていたルーナはただの変態になった。

まあいいよ。

わたしはこの状況にも興奮している。


「さて、まだ夜も深い事だし、少し私のこの都を見てまわりましょ。」

そう言ってルーナは歩き出した。


ルーナについて行き、たどり着いたのは水に沈んだ大きな神殿の前。


「ここよ」


「これは…神秘的、いや神秘ね」


わたしは衝動的に泳ぎたくなり、一際大きな石段の上に手袋と靴を置き、歩いて水の中へと歩き出した。


少し冷たいしかし体が凍えるようなものではなくむしろぬるめの風呂のようで心地がいい。


「気持ちいい」


思わず口に出した。

それを見たルーナは服を着たまま水の中へと入ってきたが魔法を行使しているのか水に濡れていない。


しかし気にせずわたしは泳ぎ続け、神殿の真正面にやってきた。

サイズは目秤、800m×600m×50mとかなりのサイズである。

ここに人が住んでいた頃はどんな目的で作ったのだろうか。

非常に気になる。


「創作魔法、水中呼吸、水中目作成、発動」


そして水の中に潜った。そこは天国のようであった。


薄い月明かりに照らされた水中に沈むその建物はまさに神の作りだした楽園。


最高だ。


そして数分間見とれ、水から上がるとルーナの姿は既になかった。


月も沈み少しづつ空が明るくなってきたからであろう。


わたしは風で体を乾かし、そのまま素肌にゴスロリ服を来て靴を履き、手袋をつけ、最後にうさぎの鞄を肩からかけた。


そして無人となった塔の上に登り、空間魔法の応用で作りだしたゲートを帝国の城内にある部屋の入口の前に生み出し水の都を去った。


部屋に戻ると女子達はみんな心配し、服が変わっていることに驚いたり、悶えていたりと様々な表情を出していた。

私が心配かけてごめんと謝ると、

「可愛いから許す」

と言われた。

甘々である。

しかし少し疲れた。

わたしは一言断りを入れて眠りについた。


明日男子たちにあったらなんと言われるのだろうか?


反応が少し気になる。


ゴスロリ姿を今すぐにでも遊田や燈威に見せたいものだ。きっと驚く。


とても楽しみですわ。


そして楓華は眠りについた。




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