その25(夢)

 夢の中で、自分はほの暗い池の底にいた。息ができないのに苦しいとは思わず、ゆったりと温かい水が、優しく自分を包んでくれている感覚が心地よかった。水面を見上げると、水面からキラキラと輝いていて、その向こうで楽し気な声が聞こえる。自分も混ざりたいと思ったが、何故か身体が動かすことができず、そこから離れることは叶わなかった。楽し気な声がだんだんと遠ざかるのを、寂しく思いながら聞いていることしかできない。

しばらくすると突然、一人の少女の声がした。


そんなところでどうしたの?一緒に遊ぼう?


彼女は池を覗き込んで私にそう語りかけると、届くはずのない小さな腕を池の中に伸ばす。彼女が池に落ちてしまうと、思わず立ち上がろうとすると、それまで大きな岩のように重く動かなかった自分の身体が、ふわっと軽くなって少女の手が届くところまですっと上っていった。

 彼女の手を掴み、もうすぐ水面だ!と思ったところで、現実に引き戻される。ぼんやりした頭で、重たい身体を起こすと、それまで見ていた夢を綺麗に忘れていた。

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