その13

 2冊目は、村の伝統的な保存食や祭りでふるまわれる食事等が書かれた資料だったので、あの佃煮の事がわかるかもと、少し心浮き立って読んでみたが、「佃煮」と書かれたページには、


滋養強壮の効果がある、女神さまから作り方が伝授された物


と書かれているのみで、詳しい作り方等の記述は無かった。少しがっかりしながら、2冊目を読み終えたところで小梅がお昼ご飯の用意ができたと、呼びにきた。書籍の持ち出しは許されていないので、3冊目はまた後で読もうと棚に戻す。


 部屋を出ると小梅が少し申し訳なさそうに、こうきりだした。

「本日は昼食後に先生の診察があるのですが、先生が昼食を一緒にどうかとおっしゃっていて。別の客室で先生と昼食を取っていただいたあと、その部屋で診察していただくよう準備をしても大丈夫でしょうか?」

「勿論、問題ありませんよ。誰かと食事をするのは久しぶりだし、嬉しいです。」

そう返事をすれば、小梅が安堵したように胸をなでおろして、

「それでは、ご案内しますね。」

と、可愛らしい顔で微笑んでそういって案内してくれた。

 部屋へ行く道すがら、明日読む本の参考にしようと、この村の事やスイレンの池の事が書かれた本があるか聞いてみる。

「そうですねぇ、もう女神様と巫女様の話は読まれましたか?」

それはもう読んだ事を伝えると、

「それ以外でしたら、ごめんなさい。私は本を読むのが苦手であまり知らないのですが...そういえば、女神様がこの池に降り立った時のお話の本があったと思います。童話なのですが....。私も幼いころよく読んで貰いました。」

「童話か。面白そうだね。ありがとう、探してみるよ。」

小梅にお礼をいうと、ちょうど例の客間に到着したようで、ここですと小梅が襖を開けてくれた部屋に入る。

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