その11(夢)

 その夜見た夢で、自分はまたあのスイレンの池にかかる橋の前に立っていた。

 池の向こう側には美しい鹿がおり、久しぶりに動物をみたなと思いながら、うっとりと眺めていると、

「どうして、戻ってきてしまったの?」

そう、後ろから声がして驚き振り返る。黒い髪のどこか村長に似た青年が、悲しそうな目でこちらを睨みながら立っていた。

「どういう意味?」

そういって、彼に問うと

「どうして、この村に戻ってきてしまったの?」

彼はそう言い直した。

「まって、ここに以前に来たことはないはずなんだけど...?」


そう彼に問いかけ、言葉を続けようとしたところで目が覚める。目を開けると、何か大切な夢を見ていた気がしたが、内容は忘れてしまってどうしても思い出せない。必死に思い出そうとしながらゆっくりと起き上がると、いつもの様にタイミングよく、小梅が朝の挨拶を襖の向こうからしてくれた。

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