その6(夢)

 夢の中で、池のほとりにある東屋の椅子に、あの少女と共に座っていた。東屋には白檀の香がかすかに感じられ、心地よいそよ風が肌をなでる。彼女は心配そうに、私を覗き込むように見てくるが、彼女の顔は相変わらずぼんやりとしか見えない。彼女のいでたちは今朝みた夢と同じで、光り輝くような肌と髪がまぶしかった。

 ふと自分に目をやると、藍色に白いスイレンが描かれた着物を着ている。着付けを知らない自分がどうやって着たんだろうか...そう疑問に思うが、何故か自分はこのスイレンの着物を知っている気がして、無意識に太ももあたりに手を置いた。すると、彼女が私の手に自らの手を重ねるように触れてくる。彼女が触れた箇所がじんわりと暖かくなり、彼女の手が私の手から離れると、そこには奇妙な青い文様が浮かび上がった。それと同時に、私は得も言われぬ幸福感と恐怖に支配され、涙が止まらなくなってしまう。

 この気持ちは一体誰のものなんだろう。

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