第4話 校長先生のチョコが無くなった!?

 一時間目は校庭で理科の植物採集の予定だったの。


 なのに、突風が急に吹き荒れ滝のような雨が降り出し校庭へは出られなくなっちゃった。


 おまけに先に校庭で準備をしていた理科の先生が雨でずぶ濡れになってしまい、急きょ自習になったんだよ。


 見計らったように校長先生があたしたちの教室にやって来てちょっとお手伝いをして欲しいと、あたしと銀星を名指しで呼び出した。


 校長室に入ると、あたしと銀星に校長先生はいたずらな笑みを浮かべた。


「うふふ。ちょっと強引だったかしら? でも早く二人と直接お話してみたかったのよね」

「あの、放課後でも良かったのでは……?」

「だって事件は早急に解決しないと」


 たしかにそうだけど。

 あたしは授業も大切では? と思ったが黙っておく。

 そしたら銀星が代弁してくれた。


「授業も大切でしょう、校長先生」

「あらやだ、そうねぇ。私、事件で頭がいっぱいだったわ」


 どんな事件?

 校長先生の依頼ってなんだろう?


「ところで校長先生、天狗の妖力って天気を自在に操れるんですね」

「まあ私ぐらいの天狗の妖力では狭い範囲ですけれどね。この程度の風と雨だけよ。ちなみに晴れさせることは出来ないわ」

「やっぱり、妖術を使ってこの雨と風を起こしたんですね。どこか不自然だと思った。それで僕と雪華に依頼ってどんなことでしょう?」


 校長先生はあたしと銀星の正体を知っている。

 うちのママや銀星のパパのこともよく知っているんだって。

 かつては共にぬらりひょんって大妖怪と戦ったこともある仲間。

 校長先生って見かけは若い女性だけど、年齢は二百歳ぐらいだって言ってた。

 あたしと同じで人間の学校が大好き。好きすぎて先生になってそのまま校長先生にまでなったんだって。


「私が用意していたバレンタインデーのチョコのうち、昨夜7個もいっぺんに無くなってしまったのです」

「「えっ、7個もですか?」」

「そうなの。校長室は鍵が掛けてあったんです。鍵は壊されていなかった。私ね、チョコのことは誰にも言っていないし、校長室には誰も入れないはずなのに」

「ずいぶん食いしん坊な泥棒なんですね」

「でしょう? そんなにチョコを盗んだりして、よっぽど犯人はお腹が減っていたのかしら?」

「チョコは誰にあげるつもりでしたか?」

「先生たちよ。日頃頑張ってくれているお礼を兼ねて」


 自習時間に校長室に呼ばれた理由は、あたしと銀星の妖怪探偵社への依頼。

 校長先生の用意したバレンタインデーのチョコを盗った犯人を突き止めることだった。


「どうしてか知りたいの。何か事情があるかもしれない」

「分かりました! あたしと銀星の妖怪探偵社が調べてみます」

「ありがとう、心強いわ。今日から取り組んでくれるかしら?」


 伊達眼鏡をくいっと上げてから、うーんと銀星がうなる。


「……そうですね。真相を突き止めなくては学校の平穏はない……」

「うん、勉強どころじゃなくなっちゃうよね」


 チョコが無くなっただけで終わらなかったら、学校中が大騒ぎになるよね。


「次は生徒たちの大切な想いが込もったチョコが狙われたら困るわ」

「校長先生、夜に妖怪の姿でですが、私と銀星が学校内に侵入するのを許してくれますか?」

「雪華?」


 校長先生はどうしようかしら? と迷っていたけど、あたしはもう一押しする。


「あたしもチョコを盗った犯人を知りたいし、理由が知りたいです!」

「やれやれ……。危ないことはしません。僕が責任を持って雪華を守りますから、お許しをいただけませんか?」


 校長先生はいたずらっぽく笑って条件があるわと言った。


「私が選んだ者を一人同行者にするなら夜間の捜索を許可するわ。ただし、この依頼は校長としてではなく妖怪天狗としてってことで良いかしら?」

「良いですよ」

「はいっ、分かりました〜」


 校長先生が選んだ同行する人っていったい誰だろう?

 妖怪かな〜! きっと妖怪だよね? どんな妖怪かな?

 ちょっとワクワクしちゃったりして〜!

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