99.陽光乱舞、陽炎猛撃
『何故カ?』
アマテラスの叱咤の霊声が。周囲の人間の頭にダイレクトに響く。
『何故カ? 何故、汝ラハ』
大祭守護艦隊であった、惑星テラアース所属の。エチュールト級軽戦艦8隻からのネガアトムスビーム砲の猛攻と。その軽戦艦から出撃してきているアームドアーマー、ヘルテ・ドルテ数十機の放つ、ビームライフルの狙撃を受けて。
シトネと一体化したアマテラスは、何やら穏やかならぬ様子を見せ始めた。
『我ヲ襲ウ!! 理由ヲ述ベヨ!! 然モ無クバ!!』
シトネの姿が、変容していく!! 先程までの、アマテラス神化身の姿ともまた違う、陽光と同じ光を放つ光円盤を背負った、翼の生えた、人型の巨神に。
その形を取るために、凄まじい勢いで、シトネの肉が増殖していく!!
「やれっ!! 奴は暴走したっ!! 制御不能になった脅威は!! 速やかに排除すべきものだ!!」
アルテムのクワィエット・システィマ号が、エチュールト級軽戦艦8隻の背後について、アマテラス神への攻撃の総指揮を執り始める!!
『アルテム……! 酷イ!!』
「……?! シトネの声? まだあの娘……、意識が残っているのか?!」
『アルテム、アルテム、アルテム!! 酷イヨ、ソンナノ!! 許セナイ!!』
そのシトネの霊声が響き渡ったと思うと!!
凄まじい閃光が、巨神アマテラスから放たれ!!
「システィマ!! 防光バラージシールド!!」
咄嗟に指示を出して、防光のシールドを張ったアルテムのクワィエット・システィマ号以外の軽戦艦や、アームドアーマーが。
見事に目くらましを喰らって、大きく怯んだ!!
更に!!
『神ニ仇為スナラバ!! ソレナリノ力ヲ見セヨ!!』
という、アマテラス神の霊声が響き、今度は恒星フレアもかくやというような、凄まじい熱量を誇る、炎の巨槍が八本。巨神アマテラスの背負った陽光円盤から放たれ!!
それぞれ、狙い過たずに、エチュールト級軽戦艦8隻を貫き爆散させて、全隻を仕留めてしまった!!
「アームドアーマー隊!! 奴のコアを突けっ!! コアは、あのシトネという巫女だ!! 当たれば、一撃で奴を仕留められるぞ!!」
アルテムはどんどんと、シトネの心を踏みにじるようなことを言うが。
じっさい、アルテムにとっては。シトネは太陽神と人間の接触データをとるための検体に過ぎなかった。
その彼の心持ちが、見事に露呈した形になった。
『アルテム……。ワカッタワ。貴方ハ、ソンナ人ダッタ。本気デ惚レタ、私ノ馬鹿サ加減ネ!!』
どうやら。シトネとアマテラス神の意識は別々に存在しつつもリンクしている、という状態のようで。
アマテラス神の力の流入により、シトネは己の意志である程度は巨神アマテラスを操れるようだ。
元々は怖がっているだけの、暴走したシトネと巨神アマテラスではあったが。
今は、シトネの意識が強く出ており、その意識の思う事とは。
『裏切ッタ男ハ。殺スノガ女ヨ!!』
という、タダの単なるシトネの怨恨に代わってきたのかもしれない。
* * *
「……ははははは~」
僕は、自分の声帯から。乾いた笑いが出るのを覚えた。
「何笑ってんのよ?! ユハナス君!!」
シオンさんが、僕の頭を杖でボコっと殴る。
「シオンさん、見えてるでしょ? ヤバいって、あれヤバいよ!! 太陽神アマテラスが、なんか巨神って感じになっちゃってるし!!」
「だからどうしたのよ!! ブッ込むわよ!!」
「いやいやいや、シオンさん!! 僕らまで死んじゃうって!!」
僕とシオンさんがそんなやり取りをしていると。
「ユハナス様!! ここまで来て、ここに至って!! あの、宇宙悪霊に恐れをなしていた頃のボンクラお坊ちゃんに、本袈返りですか?! イデスは情けなくて!! 涙が出ますっ!!」
敵が、巨神アマテラスの方に向かったので、一時的な休憩時間を得て。
シャワーを浴びて汗を流し、髪をバスタオルで巻いて頭に乗せ。タンクトップとパンツ姿のイデスちゃんが、エナジードリンクを飲みながら。
いつかも僕が怖かった、ドスの利いた視線を撃ち込んでくる。
「ユハナス様、お降りになりますか? この船を。そうすれば、貴方は全てから自由になり。またすべてを失います」
怖い怖い怖い!! イデスちゃんは何言ってるんだ?!
「降りるって、言ったら?」
「うふふふふふふ」
妖しい視線を僕に向けて、色っぽい笑いを浮かべるイデスちゃん。
「真空中に。宇宙服なしで放り出します。それで、貴方は全ての恐怖から解放されますわ!!」
とか!!
とんでもないこと言い始めたよっ!!
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