98.太陽神の受肉
「くっ……そ!! アームドアーマーまで出てきた!! 敵の層が厚くて……!!」
太陽神大祭の大祭守護船団。コイツら、やたらと操船練度が高く、その上に船はほぼ最新式のエチュールト級軽戦艦!! 戦艦の火力と巡航艦の速度を併せもった、相当に厄介な船だ! それが、あと8隻!!
その上に、ヘルテ・ドルテという機種の先進アームドアーマーが、数十機!! 僕らのリジョリア・イデス号を取り囲んでちくちくやってくる!
「イデスちゃん!! 突破できる?!」
「難しいです! 一機一隻ずつ潰していくのが、一番の安全策なのですが……。それをしていると、その間に。あの太陽神の祭壇に、アマテラス神が降臨してしまう……のです!!」
要するに、敵の層に阻まれているうちに! アルテム君の計画通りに、この太陽神大祭はその儀式を完遂してしまう!!
いや、それどころかマルテロの言うように、あの巫女さんがアマテラス神に強い恐怖心を抱いているのならば。恒星アマテラスの霊性である、あのアマテラス神の化身と、巫女さんが接触したとたんに。
その二つの意識が、強烈な拒絶反応を示して、暴れまくることになるんだ!!
「頼むよ、イデスちゃん!!」
「黙ってください!! やっていますわ!!」
あ。イデスちゃんの額から。汗が流れ始めた。
ウィル・フォース装備を相当に使って、息が上がり始めたんだ!!
* * *
「来い!! アマテラス神!! 貴様の好む、エサとなる巫女はここに居るぞ!!」
アルテムは叫んだ。彼は、後ろでユハナスたちと自分の部下の大祭守護船団がぶつかり合っているうちに。前から来るアマテラス神の化身を挑発するようにそう言った。
アルテムは急いでいた。何故ならば。
彼の最大の目的である、太陽神が巫女の精神を喰らう瞬間に、巫女の身体がどのような変化をするかのデータ取りをすることに。
まだこだわっていたからだ。
アマテラス神は、すでに祭壇のほど近きところまで来ており。
やがて、祭壇に至った。
「畏みも畏みも申す……。太陽神、アマテラス様。わたくしは、此度の貴女様への供物たる、シトネと申します。貴女様に捧げられるため。この生涯を送ってまいりました。いざ、お召し上がりください!!」
シトネはそういうと。巫女の大祭の装いの上半身の着物をはだけて。
自分の豊かで滑らかな胸を晒した。
その存在が、物理的存在ではない、霊的概念存在のアマテラス神は。
それをみると、巨大な自分の身体を気体化させるようなイメージで。
形を崩していくと!!
クリスタル・プレートで覆われている祭壇の上に立っているシトネの中に。
凄まじい勢いで、流れ込んでいった。
アルテムはその様子をしっかりと克明に。機械のデータで吸収させながらも。
自分の目でもしっかりと見つづけた。
最初、シトネは、痛みを覚えるかのような表情を浮かべていたが。
その表情は、やがて。
光り輝かんばかりに美しくなっていき。
シトネ自身も悪くないというような、恍惚の表情になっていく。
しかし。
だんだんと、シトネの表情に翳が差してきた。
「いや……。だ!! いや、いや!! これは確かに、誇らしくて!! すごく気持ちよくて、清々しい事だけど!! わたくしは、わたしは、あたしは!!」
ものすごい大粒の涙を流し始めた、シトネ。
「あたしは、まだ!! まだ、死にたくないっ!!」
そうシトネが絶叫したとたんに!!
シトネの全身から、霊的な白い炎が噴き上がった!!
「アルテム!! アルテム助けて!! 怖い、怖い、怖いよぉ!! アマテラス神の、霊体が、意識が、知識が、知恵が、力が!! あたしの中に一気に流れ込んできて……!! 制御が……出来ないっ!!」
そう言って叫びを続けたまま。
祭壇から飛び上がったシトネは、クリスタル・プレートを割り破って、宇宙空間に飛び出し。
炎の奔流に弄られるようにもがき苦しんでいる!!
「ばっ……か……な?! シトネめ、甘やかしすぎたか!! 巫女としての覚悟など、とうに決めていたはずの、あの娘!! この私のミスか? あまりにも、あの娘にいい思いをさせ過ぎて、人としての未練を呼び覚ましてしまったのか?」
空気がどんどんと抜けていく、太陽神の祭壇の中で。
アルテムは叫びつつも、息苦しさを覚え始めた。
「システィマ!! 来い!! この私を助けろ!!」
マイクに向かって、そう命ずると。
『わかったわ、アルテム。貴方を死なせはしない』
そういうシスティマからの返答があり、祭壇のすぐ近くに、クワィエット・システィマ号が短距離転移してきた。
「ミスなど……!! 犯して堪るかっ!!」
システィマの手によって、クワィエット・システィマ号に救助され。
ブリッジのキャプテンシートについたアルテムは、大祭守護船団に総攻撃の命令を下した!!
それは、今まで大祭守護船団が戦っていた、ユハナスのリジョリア・イデス号に対する物ではなく、むしろ。
そんな敵は放っておいて、新しく敵になるかもしれない、脅威。
シトネを依り代にして受肉した。
太陽神アマテラスに対して攻撃を行えというものであった!!
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