9章 ジャスティス・リソース・コントロール

97.対・大祭守護船団

「いっけぇ―――――――――――っ!! 主砲、三連斉射っ!!」


 シトネという名前だと、放送で流れた巫女のいる祭壇に。近づいてくるアマテラス神の化身に向かって!!

 イデスちゃんが、フルパワーチャージされたこのリジョリア・イデス号の主装備、ウィル・フォース・レーザー砲の三連斉射を浴びせ。


 更に!!


「エネルギー充填、急速に行いますっ!! 叩き込みますっ!!」


 そう言ってイデスちゃんがエネルギーの充填を始めたのは!!

 リジョリア・イデス号の船の腹に取り付けられている、巨大な大砲!!


『ウィル・フォース・キャノン』!!


 この船の最大最強の威力を誇る、一撃必殺武装!!


「エネルギー充填、95%、97%、99%!! さて、100%に満ちましたが!! さらにオーバーチャージ開始!! 115%まで引っ張ります!!」


 船が揺れる。イデスちゃんが、ウィル・フォース・キャノンに力を注いでいるのはよくわかるが!! それだけでない揺れが船をゆさゆさと揺らす!!


「イデスくんの……! 凄まじい理力に呼応して……。空間理性が目覚めたかっ?! 砲身に力が集まっているぞこれは!!」


 マルテロが意味わかんないこと言ってる!!


「115%、充填完了!! 発射します、ウィル・フォース・キャノンブラスト!!」


 うわぁっ!!

 船の下部についている、大砲身から!!

 発射された、白熱する青緑の極太光線が突っ走って!!


 超ロングレンジにも関わらず、見事にアマテラス神化身に直撃したっ!!


   * * *


「なんだっ?! おい、なんだっ?! 貴様ら、周囲を固めろっ!! アマテラス神に攻撃を加えた奴らがいるぞっ!!」


 アルテムは、祭壇に近づきつつあったアマテラス神化身が、青緑色の白熱光線の直撃を受け、悶絶した様子を見て。

 何者か不逞な連中が、この荘厳で神聖なる神事儀式を穢そうとしているのかと思い、頭に血を昇らせた!!


(俺は、この大祭の実行委員長だぞ!!)


 アルテムは、今まで仕事でミスというものをしたことがほとんどない。

 生粋の秀才肌で、また極度のエリート思想を持っている。


(この俺が、私が!! ミスなどという汚点に染まってたまるかっ!!)


 そう考え、この際はその不逞分子を捕えて、神事を穢すものとして。全宇宙の見せしめにしてやらねば気が済まぬ。そこまで一瞬考えた。


「大祭守護全船団!! おそらくは、観客船群の中から、不意打ちにしてきた奴がいるっ!! しらみつぶしに探して、犯人を検挙しろっ!!」


 アルテムは、祭壇から。神官服に仕込んだマイクで大祭守護船団にそのような命を降す!!


 すると!!


『その必要はないぞ、アルテム君!! 僕はここに居る!! アマテラス神を撃ったのは。この僕だ!! 僕らの船だっ!!』


 宇宙の交信電波全域に伝わる、広域発信で。

 ユハナスの声が、響き渡り。

 アルテムの耳にはまったイヤホンからも声が流れてきた!!


「きさま? 誰だというのだ?! 私は貴様などを知らぬぞ?! 名を名乗れっ!!」


 マイクに叫ぶ、アルテム。それに答えるように、ユハナスの声が更に響く!!


『ユハナス・ユヴェンハザ!! 昔は、カルハマス星系最大の貿易商船団、ユヴェンハザ・カンパニーの総帥、トイロニの三男、ゼキリスの一人息子!! そして今は、ヴァードゼイル・シャルシーダ星系国家同盟の1の商人!! もう一度言うぞ、アルテム君!! 僕は、君の従兄弟のユハナスだっ!!』


 その言葉に続いて。

 祭列を組んでいた、大祭守護船団の正面に。


 リジョリア・イデス号が短距離空間跳躍で、瞬時に姿を現した!!


「ユハナス……だとォ?! あのクソ叔父ゼキリスの軟弱息子かっ!! 貴様如きが、何をしに!! この神聖たる宇宙の中央!! ソリアル星系の恒星アマテラスの太陽神大祭に現れたのだっ!!」

『それは、後で話す!! いまは、その可哀想な!! 怖がっている大祭の巫女を救うことが全てだよ、アルテム君!!』

「貴様ぁ!! 自分が何を言っているのか!! わかっているのか!! この大祭は、ソリアル星系の恒星アマテラスの神霊性を維持するためのもの!! 宇宙の中心である、このソリアル星系!! しいては、宇宙中央議会政府!! それの維持のためには、この儀式は避けては通れぬっ!! 邪魔をするなっ!!」


 さて。アルテムが叱咤とともに飛ばした命令により!!


 大祭守護船団のエチュールト級軽宇宙戦艦が十隻!


 リジョリア・イデス号に襲い掛かる!!


   * * *


「ウィル・フォース・レーザー!! モード・ホーミングっ!!」


 うおおおおお?! イデスちゃん、敵の軽戦艦隊が襲い掛かって来ても!!

 全く動じないで、主砲をぶっ放し!!

 発射された理力レーザー光線を、自分の理力で捻じ曲げて、丁寧に敵軽戦艦に叩き込んで!!

 行動力を奪っていく!!


「来るぞ!! 敵もただやられてはいない!! 敵の主砲、ネガアトムス砲の発射の予兆が見える!!」


 マルテロが叫ぶ!! こいつ、なんでマイテルガルドの出身なのに、こんなにこっちの宇宙の技術や事情に詳しいのかというと、実は夜な夜なネット通信で、様々な情報を取り込んでるせいなんだけど。

 それにしても、異常な情報吸収率を持つ奴だ。


 それはさておき!!


 赤色に白熱する、敵のネガアトムス砲が五隻分、こちらに向かって!!

 一気に発射された!!


「イデスちゃん!! 回避ッ!!」

「間に合いません!! シールドを張りますっ!!」


 イデスちゃんは、そこで息を一瞬ついて。

 両手をバッと前に出して、叫ぶ!!


「ウィル・フォース・シールド展開ッ!!」


 すると即座に、リジョリア・イデス号を青緑の光のシールドフォースが包み!!


「反射っ!!」


 イデスちゃんの掛け声とともに、敵のネガアトムス砲の強烈なエネルギーを受け止めてから反射発散させた!!


「さて、これからです!! 参りますわよっ!!」


 戦闘モードに、完全に入ったイデスちゃん。頼むよ奥さん!!

 僕ら家族の命運は、君にかかっているー!!

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