84.プラネット・シャルドハイム

「くっそ!! 惑星爆撃などを!! 俺達にやらせるつもりかっ!!」


 シャルシーダ星系防衛艦隊を退けた、ゼキリス達ヴァードゼイル星系軍艦隊。

 そして、彼らはシャルシーダ星系首都星、シャルドハイムを包囲、そして降伏勧告を行ったが……。


 シャルドハイム首脳は、それを無視。その上に、衛星軌道上にいるヴァードゼイル星系艦隊に地上から超高度ミサイルなどを用いて攻撃を放ってきた。


『やるしかないでしょう? ゼキリス』


 オクシオが、自分の船からゼキリスのマイワ・ガルナに連絡を送って来てそう言った。


「しかし……! おそらくはこりゃ、シャルドハイムの惑星民が巻き込まれる事になる。そういうことは、俺は嫌いなんだが……」

『そう。なら、勝手になさい』


 オクシオからの連絡は、それであっさりと切れた。


「どうしたもんか……。コイツは参った。えらく頑固だな、メズキルアという王は」


 ゼキリスがそう言うと、後ろから激しい声が響いた。


「メズキルアは王などではない。奴は簒奪者だ。元々は宰相であり、王の臣下でありながら。その王が死んだ途端に、惑星や星系、更に傘下の星々も自分の物とするとは。厚かましさにも限度というものがある!」


 レウペウの声である。


「王子様よ、その気持ちはわかるけどよぉ……。実質、現状だぜ? まだこの惑星シャルドハイムは奴の物だ。そして、奴は惑星民を盾に。徹底抗戦をするつもりだぜこりゃ。どうすんだよ、この星の元王子様としては?」


 ゼキリスの問いに、一考もせずにレウペウは答える。


「惑星民は傷つけぬ。俺の隊のアームドアーマーで惑星に降下して。シャルドハイム城に攻め込み、偽王メズキルアの首を挙げて来てやる!!」

「……できるのか? 多分まだ惑星上には、アームドアーマー隊が腐るほどいるぜ?」

「……そうだな、ゼキリス殿。この数個艦隊のうち、半数のアームドアーマー隊。並びにヴィハ・ムとその部下を借り受けたい。それだけの兵員がいれば、俺は必ず! メズキルアの首を挙げてくる!!」

「……成算は? あるんだろうな?」

「やれるかやれぬかではない。やるのだ!!」

「……すっげえ精神論だが……。王子様、アンタはそれで今まで勝ち抜いてきた。とすれば下手な唯物論よりも頼りになると言う事だ。わかった、許可を出す。レウペウ・シャルシーダよ。シャルシーダ王、メズキルア。レウペウ殿、貴殿のいう偽王メズキルアを。討ち取ってこい!!」

「応!!」


 命令を受け、勇躍して部下たちの所に戻っていく、レウペウ。

 それを見送るとゼキリスは、ほろ苦い顔をして笑った。


「いいねえ……。若えってのは。活きの良さが違うぜ……」


 顎と頬に生えている、髭をジョリジョリ触りながら。そう呟くのだった。


   * * *


「ヴィハ・ム!! 頼って悪いが、前方の要塞線を! 貴様の隊お得意の炎魔導術で爆散させてくれるかっ?!」


 さて、惑星シャルドハイムに降下した、レウペウとヴィハ・ム。さらにその他十数人の隊長が所属している、ゼキリス指揮下の数個艦隊から出撃してきた、アームドアーマー隊。

 飛行推進能力で、大気中をグングン進んでいき。惑星シャルドハイム上の王城、シャルドハイム城に向かっている。

 その位置は、誰よりもレウペウがよく知っていた。


「見えてきた!! シャルドハイム城だ!! 地上要塞砲があるから、気を付けろっ!!」


 レウペウは、全アームドアーマー隊に注意を促す。


「おい、レウペウ!! 出て来たぜ、お前の母星の強烈な連中。惑星シャルドハイムのアームドアーマー隊だ!!」


 地上要塞砲からの、銃弾やエネルギー砲撃の嵐の中で。さらに襲ってきた惑星シャルドハイムのアームドアーマー隊と切り結びながら、ヴィハ・ムが精気を漲らせて叫ぶ。


「愚直に。愚直さが出るところだ、ここは。今までの戦闘技術の鍛錬、隊列訓練の成果。そう言った物しか頼りにはならん!!」


 そう叫んで。レウペウは隊員を指揮しながら、自らもビームスピアを振りかざして、シャルドハイム城から出撃してきた敵と戦い続ける。


「ケッ!! ウザってェ!! てめぇら、吹っ飛ばすぞ!! 炎魔導術詠唱開始っ!!」


 ヴィハ・ムは大きな破壊力をもつ、炎魔導術を用いようとしたが……!


「待て、ヴィハ・ム! まずい、止めろ!」


 レウペウがそれを止める。


「あん? なんでだよ? レウペウ!」


 ヴィハ・ムが反発するが、彼にもその理由が分かってきた。


「ははーん。なるほどな。シャルドハイムの連中は、確かに練度が高い。呪文詠唱している隙に、ダメージ喰らって二、三人くたばったぜ……。やってくれやがったな!!」


 ヴィハ・ムは、部下を酷く大切にする男である。部下がわずかでも傷つき、死んだことで。冷静なまま、キレた。


「要は、魔法使わせねぇってんだな? 上等だ!! 武技だけで圧倒してやるぜ!!」


 そう叫ぶと、ヴィハ・ムは。アームドアーマーのミサイルポッドからマイクロミサイルを乱射しつつ、ビームソードを振り回して、敵中に突撃。

 一突で、敵の一隊長を突き殺した!!


   * * *


 シャルドハイム城城外戦は、結構な激戦苦戦であったが。数の優位が最初からあったレウペウたちの勝利となった。


「……はぁ……はっ!! 城外の敵は、掃討した……。残る敵は城内に居る。行くぞ、皆!! この俺が、メズキルアを殺して。王位を得るかどうかはともかく、だ。少なくともあまりいい評判を聞かぬ、武威に凝り固まった形に変わってしまった、シャルシーダ星系を文化香る形に戻すためには。やはりあのメズキルアは除かねばならん」


 レウペウはそのように言うと。シャルドハイム城の正門を破壊して、アームドアーマーを降り。しつらえた機能的な槍を構え、部下には銃火器を装備させ。

 城外にヴィハ・ムを置き、退路の確保をしてから。


 城内に入っていった。

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