81.炎の魔導司祭、参戦

「てめえ……。はっは! よくわかってんじゃねーか! 流石に、俺と刃を交わしただけはある!!」


 僕が一度。マイテルガルドに戻り連れてきた炎の魔導司祭ヴィハ・ムが。

 ユユ・ウトク星系の首都星、惑星マルフールの軍庁舎での軍務会議の席で、レウペウさんに向かってそう言い、ニヤリと笑った。


「うむ。そうだなヴィハ・ム。貴様は強い。その腕を見込んで、我が軍でアームドアーマー隊を指揮してほしい。むろん、貴様自身もアームドアーマーに乗り、戦ってほしい。やるか? ヴィハ・ムよ?」

「アームドアーマーってのは俺は知らねえが。窓の外に立っている、あのでっけえ甲冑の事か? アレどうやって動かすんだよ?」

「そこのところは心配いらない。アームドアーマーは、人の動くパターンを脳電流を読み取ることにより、忠実にトレースする。ようするに、考えるだけで動く」

「ふむ。なるほどな」

「そうである以上、戦いに関する経験が多い貴様や、貴様の部下たちはアームドアーマーに乗るのに極度に適していると言う事になる。何しろ、マイテルガルド最強の武闘派軍団だからな、貴様ら炎の魔導種族は」

「フッ……。いかにもその通りだ。こと肉弾戦闘や、それの延長線上の戦闘行為で。我ら炎の眷属が負けることはない」

「ふむ。そう思ったから、ユハナスに頼んで貴様を連れて来てもらった。存分に戦ってくれよ? ヴィハ・ム」

「フフフフフ……。楽しくなってきやがった。任せろ、レウペウよ!!」


 これから。この近隣では最大の版図を誇る、シャルシーダ星系の本土に攻め込むことになる。

 僕は、このユユ・ウトク星系で。総軍のバックアップを行うことになるんだ。

 出撃する艦隊は、親父と親父の部下の提督たちの五艦隊。

 それプラス、艦隊指揮が巧みなオクシオさんの率いる艦隊も出撃する。

 計六艦隊、8000隻での規模で。

 シャルシーダ星系防衛艦隊、12000隻とやりあうことになる。

 敵の数はこちらの1.5倍。何らかの策が無ければ難しい所であるが……。

 親父は何やら腹案があるらしく、別段悲壮な表情は浮かべてはいない。


「矛を。上手く使うには何よりも。盾の使い方が大事なんだよな……」


 そんなことを呟いていたが……。


   * * *


「バリアー艦を。前面に立てる。そして、そのすぐ後ろに戦艦隊を並べて、バリアーで喰いとめられている敵艦隊に主砲斉射の雨を浴びせる。敵が崩れたところで、巡航艦と駆逐艦を突っ込ませ、ミサイル攻撃を展開。止めに空母からアームドアーマー隊が出撃。ダイレクトアタックで敵を掃討する。骨子はこんな所か」


 さて、後方、ユユ・ウトク星系にユハナスを残し。

 前線に出てきた、ゼキリス、オクシオ、レウペウ、ヴィハ・ム、その他提督や高級軍人たちがゼキリスの旗艦、マイワ・ガルナのブリッジで会議を終えた。


「ゼキリス・ユヴェンハザ……。ユハナス君の、お父上か。いい男ねえ……。ね、ヴィハ・ム。そう思わない?」


 会議後の休憩時。オクシオはそんな事をヴィハ・ムに向かって言った。


「あん? オクシオ。お前相変わらず男好きだな?」


 ヴィハ・ムは、オクシオが美しく淑やかな見た目と発言と挙措ながら、それを用いて男を思いのままに動かす女であることを知っている。彼とオクシオは、マイテルガルドの六魔導司祭同士の仲だ。


「あの男、きっとすごいわよ。もういい歳になってるけど……。そこが味っていうか。体力が落ちている様子もないし……。あーあ、残念。奥さんの事、愛しているらしいし。私は、男が好きだけど愛人の座で満足できるほどプライド低くないし」

「バカ。諦めろ、このバカ女。今は戦闘前の大事な時だぞ?」

「バカは貴方よ、ヴィハ・ム。臆病で弱い女が、戦いに臨むことができるとしたら。そのモチベーションは何だと思うの?」

「……なんだよ?」

「性欲。それしかないわ。この戦いが終わったら、男に満たしてもらえる。そう思えば、女はとてつもない力を戦場で発揮するの」

「……はいはい、そう言うもんかね。じゃあ、頼んできたらどうだ? あの男によ」

「うぅん……。そうね! 頼んでくる!!」

「?! お、おい!!」


 即座に席を立って、ゼキリスの方に歩んでいくオクシオを見て。ヴィハ・ムは呆気にとられた。

 その上に。


「はぁ……。いい男よ、本当に。ゼキリスはいい男。この一戦が終わったら、抱いてくれるって約束してくれたわ……」


 と、戻って来て嬉しそうに言い放つオクシオを見て。


(女ってのは、スゲェ生き物だな……)


 と少し引くあたり、ヴィハ・ムはまだ少年っ気を多分に残している男であるようだった。


   * * *


「ミサイルや、補給物資の量は存分にある!! 総攻撃の際は物資を惜しむな!! この一戦、宇宙中央銀河に進路を開くには、決して避けては通れぬ!! 各々将校兵士、臆することなく戦え!! もし貴様らに何かあれば、その家族の面倒は我らの後方がしっかりと見てくれる。我らは狩りに出た狩人だ!! 命を惜しんで、成果が上がると思うな!! では、進軍開始! シャルシーダ星系宙域に斬り込む!!」


 ゼキリスの指令が、ヴァードゼイル星系軍全軍艦隊に響き渡る。


 そして、艦隊が進み始めた。


「ゼキリス、敵艦隊確認!! 二個艦隊がまず先鋒として向かってきているわ!!」


 マイワ・ガルナ号のブリッジで、ナビゲーションドールのガルナがゼキリスに告げる!


「はっ!! バカがっ! 戦力の逐次投入してきやがったか! 美味しいもんだぜ、喰い殺してやるっ!!」


 ゼキリスはそう嘯くと、全艦隊に戦闘開始を発令。


 宇宙艦隊戦闘に没入していくのであった。

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