7.宇宙強奪団。それつまり宇宙海賊

『そこの宇宙船!! すぐに停まれっ!! 言う事に抵抗せず従えばよし、さもなくば撃沈するぞっ!!』


 いきなり、宇宙船の一般航行用のオープンチャンネルに、レーザー通信で飛び込んできた不快な怒声。


「ああん?」


 僕は、自分の眉間にビキっと強烈な皴が寄るのを覚えた。


「これは……。呼びかけ元の宇宙船舶には、登録所属コードがありません。不正規に宇宙空間に出港している船ですね」


 イデスちゃんが、相手船籍をとその船の位置を解析してそのように言う。その間にも、オープンチャンネルには野卑な声が飛び込んでくる!


『積荷をすべて渡せばよし! さもなくばすぐにでもこちらは攻撃に移るっ!! 嫌も応もない!! 貴様らは従えっ!!』

「ああんっ⁈」


 イデスちゃんが周辺宙域レーダーで捉えた、真っ赤な船体の敵船舶。そう、こんな事を言ってくる奴はもう敵だ!! そいつの勝手な言い分に、僕の眉間の皴は深くなり、気分も滅茶苦茶悪くなる!!


「ユハナス船長。どうするの? 宇宙悪霊を結構仕留めて。いま、積荷格納庫には結構な量の思念粘土が詰まっているのに」


 シオンさんがブリッジのコンソールを弄って、積荷格納庫の積載率を調べて言った。


「イデスちゃん。敵には所属惑星が無くて、こんな積荷の強奪活動をしているってことは……。アレだよね、コイツら」

「はい。これは宇宙海賊です」


 僕の問いに、そうすかさず答えるイデスちゃん。


「宇宙船で宇宙を航行するにあたって。海賊船を見つけたら、戦力を保持している船舶は進んでそれを撃退撃破することが、宇宙治安上推奨される。たしか、宇宙航行法にはそう言う記述があったよね、イデスちゃん」

「はい、確かにございます。いま、レーダーで捉えた敵船舶の型式はニュア・ザッド級。多少の戦力は持ちますが、このリジョリア・イデス号には遥かに及ばない戦力しか持ちえません。その程度の宇宙船です」

「ブッ飛ばす……、かな?」

「やるというのならば、ご命令には従えますよ」


 僕とイデスちゃんがそう話していると、シオンさんが間の抜けた声を放った。


「あーのー。あのさ、ユハナス君。それにイデスちゃん。この船って、戦闘で損壊したらどうやって直すの? 宇宙港にまで戻らないと直せないってことだったら、ちょっと危なくない?」


 あ、そうか。僕はそこのところに気が付かなかった。もし仮に、この宇宙海賊を片付けても、何らかの損壊を船体が負った場合。次の宇宙海賊が修理までの間に現れない保障はどこにもないんだ。

 でも。


「御心配には及びません、シオン司祭。この船の船体は、全てが生体金属でなっています。宇宙空間のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを物質化し、損壊部を修復するマシンリザレクションという機能を持っています」


 イデスちゃんがにっこりと笑ってそう言う。


『おい、そこの船ェ!! 答えが無いってことは、やる気なんだな? 軟弱そうな形しやがって!! ぶっ叩いてやるから覚悟しやがれェ!!』


 レーザー通信で飛び込んでくる、未洗練な蛮声に。


「上等だ、この海賊船!! 僕の船を舐めた代償を叩き込んでやるっ!!」


 僕はとうとう堪忍袋の緒を切って、戦闘に突入してしまった!!



   * * *


「レウペウ。仕事だ。あの宇宙商船を行動不能にして来い!!」


 ユハナスたちが戦闘を開始する決心をした時、彼らを襲った宇宙海賊船の船長が、自分の船内でとある男に出動を命じていた。


「ラージット頭目。こんなことをいつまで続けるつもりだ?」


 レウペウと呼ばれた男は、宇宙海賊の頭目であるラージットという男にそう尋ねた。


「はっ!! ウメエ思いができるうちは、いつまでもだ!! 最近はここらの宙域にも獲物が少なくなって来てな。縄張りを変えようと思っていたところに、あの戦闘力は低そうだが、やたらと豪華で綺麗な船が現れやがった。さぞ大した積荷を積んでいるんだろうさ。それに、あの船を曳航していって売り飛ばせば相当な金が手に入りそうだ。レウペウ、わかったらとっとと行ってこい。俺らの本拠地の小惑星で『飼ってやっている』お前の妹の命が惜しければな!!」


 ギリッ……! とレウペウは歯を軋ませて。


「わかった。もし妹に何かあったら。俺は貴様をどこまでも追って、その首を叩き落とすからな!!」


 そういうと、宇宙船の格納庫にある、機動武装甲冑である『アームドアーマー』のコックピットに乗り込んだ。


「レウペウ・シャルシーダ!! 敵船を沈黙させるために出撃するっ!!」


 アームドアーマーを推進剤で加速して。

 レウペウ・シャルシーダは宇宙空間に出撃した!


   * * *


「!! 敵所属アームドアーマー!! 急速接近! 速いっ!!」


 焦ったように叫ぶイデスちゃん。アームドアーマーって、あの宇宙白兵戦用の機動武装甲冑だよな⁈


「どういう事⁈ イデスちゃん!!」

「敵、ニュア・ザッド級船舶は、それ自体では低戦力しか保持していませんが、それに搭載しているアームドアーマーが高機能となれば話は別です!! 取り急ぎ船体防御シールド!! 張り巡らしますっ!! って、わぁー!!」


 うわっ!! 船に大震動が来た!!


「しまった……!! 敵初撃にシールド間に合いませんでした! 敵発射のミサイル、数弾直撃!! ダメージを算出いたします!!」


 チッっと舌打ちをするイデスちゃん。

 あらら、ちょい拙くないか? この状況。

 こっちは船に、アームドアーマーなんて積んでないし。


 そもそもパイロットもいないしなぁ……。

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