第31話、神種撃破

 ―――眠視点―――




 無事モンスターを倒した俺だったが、暫くその場から動けなかった。

 まだ体が震えている。

 今倒したモンスターは間違いなく格上だった。


 通常攻撃が効かない。

 パワーナップを使っても、素早さAGIで負けていた。

 器用さDEXでは恐らく俺が勝っていたが、それだけで勝てる相手じゃなかった。

 しかも体を掴まれてしまい、散々頭突きを食らわされた挙句超至近距離で敵の必殺攻撃を食らう所だった。


 どのみち攻撃は避けられない。

 そう思ったから、敵の眼前で眠ったんだ。

 そして攻撃の寸前、目を覚ました俺は力づくで敵の拳の中から脱出し、敵の攻撃とほぼ同時タイミングで敵の力核コアを斬った。

 俺が生き残るにはそれしかなかった。

 コアを斬った時点で敵の攻撃が止まったために、ギリギリで生き残れた。

 俺のジャージがこんなにボロボロにされたのは、デュラハン以来だ。


(この感覚、久しぶりだ。

 めっちゃ苦戦してる。

 嬉しい!)


 俺は喜ぶ。

 苦戦するってことはそれだけ経験値も高いって事だ。

 事実俺は今のモンスターを倒しただけでレベルが10も上がっている。


 それに、今回はアイテムも手に入った。

 金色の布でできたベルト。

 さっき魔素を吸収した時に、一部が結晶化してアイテム化したのだろう。

 あれだけの大物が落としたからには、相当のレアアイテムなはずだ。

 さっそくどんなアイテムなのか鑑定してみたい。


 そこで俺はスマホを取り出し、ダンジョン探索者向けフリマアプリ『Mercury(マーキュリー)』を起動した。

 これは、全世界の探索者たちが採掘したアイテムをオンライン上で売買するアプリ。


 その機能の一つにアイテム鑑定があるのだが、これが非常に便利なのである。

 手に入れたアイテムをスマホカメラでスキャンすると、過去にアプリ内で取引された全売買品のデータから、そのアイテムが何なのか照合できる。


 アプリによると、このアイテムは『金剛手こんごうしゅ石帯せきたい』というそうだ。

 名前は2年前に初めてこのアイテムを発見したヴィンソン・ヴェスターズというアメリカのAランク探索者が付けている。

 世界でまだ3個しかドロップしてない超レアアイテムらしい。

 同じアイテムをアプリ内で探すと、1件だけヒットした。

 9800万円で売却済みと書いてある。

 ほぼ1億じゃねえか。

 すげえ。


 更に、身に付けた時の効果も説明欄に書いてあった。

 これを腰に結ぶと、耐久性VIT筋力STRが10パーセントずつ向上する他、『物理的に破壊されない』効果があるそうだ。

 今の俺のステータスで10パーセント上がったらかなり強いぞ。

 破壊されない効果も有難い。

 身体に巻いておけばいざという時役に立つ。


 というわけで、早速腰に巻いてみる。


 ……。

 うん。

 死ぬほどダサい。

 正確には、石帯自体はカッコイイんだけど、ジャージにはクソ合わない。

 なので俺は裏技を使う。

 ジャージの下に巻くのだ。

 よしこれでダサくない。


「……」


 なんか根本的に間違っている気がしてきた。

 そもそも他の探索者はどうしてるんだ?

 基本ソロだから分からないけど、みんなガチャガチャ装備付けてたっけ?


 思って『チャットGPDT』に聞いてみると、Bランクまでの探索者は基本その時持っている最強の装備をバラバラに身に付けているらしい。

 だが、Aランクの探索者たちは『ボス化』を使ってアイテムを自分好みの形にカスタマイズしているそうだ。

 なんでもアイテムを構成している魔素に含まれる色や形を決定づける因子を弄ることで、姿を透明にしたり、軽量化させたりできるらしい。

 この技術を使えば、同じアイテムを何重にも身に付けたり、同時に武器を何個も持てたりする。


(すげー。

 どんどんできる事増えていく感じだ。

 よし。

 この調子でレベル上げるぞ!)


 俺はそんな風に息巻いていた。

 すると、


「眠くん」


 背後から声を掛けられる。

 振り向けばそこに頬白さんが居た。

 いつもの笑顔でニッコリ佇んでいる。

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