第32話、神種撃破Ⅱ
―――頬白視点―――
「ははは……ッ!
やべえやべえ!!
咄嗟に仮眠スキル使わなかったら死んでた!!」
やがて、嬉しそうな少年の声が聞こえてきた。
どこだ?
見れば、僕の左方10メートルぐらいの所に少年が座り込んでいる。
全身黒焦げで、とりわけ黒ジャージの上衣が完全に溶けていた。
だが、生きていた。
生きていたのだ。
(バカな……!?
あれを直撃して生き残ったのか!?
魔鉱石でできた地面が溶けるような一撃なんだぞ!?
なんという耐久性。
いや、躱しもしたのか?
どちらにせよ見えなかった……!)
そこまで考えた時、
『ちなみに頬白。
スケイルレギオンを倒した青年のランクだが、恐らくBの中から上位。
キミの少し下だ』
不意に僕の脳裏に先日夏目が語った言葉が過ぎった。
(そうか……!
こいつが市ヶ谷でスケイルレギオンを倒した『黒ジャージの少年』。
それなら辻褄が合う……!)
僕がそう思っていると、神種を倒した事で発生した大量の積乱雲が、まるで掃除機にでも吸い込まれるかのように、少年目がけて落ちてきた。
とてつもない魔素の量だった。
余波で僕の髪が逆立つぐらい。
全体の10分の1にも満たない量の魔素がお零れとして、僕の体にもまとわりついてくる。
「レベルが上がりました」
ポケットに仕舞っていたスマホから、ステータスアプリの声が聞こえた。
お零れだけでレベルが上がってしまったようだ。
一方少年は、スマホを掴んだまま、両手を上げて喜んでいる。
「は!?
レベルアップやば!?
10も上がってるし!!
っつか、こんな奴が通常モンスターとかBランクダンジョンやばすぎだろ!
めちゃめちゃテンション上がるんだけど!!」
「……」
嬉しそうにしている彼の姿を見て、僕は率直に驚いてしまっていた。
(死にかけたんだぞ……!
一歩間違えれば、いや10回やって9回以上は死んでいた……!
なぜなら、あの敵は間違いなく格上だったから。
今生きてるのは偶然の産物。
それなのに奴は戦闘を楽しんでいた。
格上と戦う事に喜びを見出しているんだ。
そして生き残れた自分を心から賛美している)
「……」
(間違いない。
こいつは恐らく天才。
それも僕が一番苦手なタイプ。
恐怖心が抜けているんだ。
だから格上ともガンガン戦える。
それでどんどんレベルアップしていく。
許せない……!
僕を超えていいのは、今僕を超えている者たちだけだ。
そいつらだっていずれ僕が超える。
なぜならこの頬白聖こそが世界一の探索者であるべきだから。
僕以上に優秀な人間は存在してはならない……!)
僕は黒ジャージの少年に、奥の手を使う事に決めた。
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