第30話、黒ジャージの少年Ⅱ
――頬白聖視点――
神種が光を放った。
次の瞬間、物凄い爆発が起きる。
直前に危険を察知していた僕は、咄嗟に近くの地面の窪みへと飛び込んだ。
直後に凄まじい振動と風圧と爆音が僕の全身を揺らす。
まるで津波のような衝撃。
僕は必死に地面にしがみ付く。
今吹き飛ばされたら終わりだ!
「……」
音と振動と風が静まった所で身を起こすと、辺りは爆心地のようになっていた。
爆弾でも壊せない魔鉱石の地面がすり鉢状に大きく抉られている。
付近に展開していた機動戦闘車も戦闘機も何もかもが吹き飛ばされていた。
無論、黒ジャージの少年の姿は無い。
生き残ったのは僕だけのようだ。
他には巨大な仁王像のような神種だけが佇んでいる。
今、神種が放ったのは、恐らく炎と水二種類の最上位呪文スキルだろう。
相反する属性のそれらを無理矢理一塊にして発射することで、魔素の対消滅現象を誘発させ、呪文スキルの威力を10倍近く引き上げたのだ。
この僕でさえ、直撃すれば死は免れない。
一介の人間にはどうすることもできない。
まさに天災のような存在。
それが神種。
そんな風に脅威に感じる一方で、僕は安心もしていた。
黒ジャージの少年が死んだからだ。
彼はまずかった。
なぜなら、この僕を越えかねない人材だから。
彼はまだ高校生だ。
今の時点であの実力ならいずれ国内ランキングでトップになるだろう。
世界一の探索者になるかもしれない。
そんな奴を生かしておけるはずがなかった。
「フ……!」
(見殺しにして、正解。
これで僕の国内ランキング10位という地位も安泰だ)
僕がそんな風に思っていると、
「ズズズズズズズ……」
突然神種が苦しみ出した。
両腕を元の長さに戻して、顔をペタペタ触っている。
見れば、天女ごと
誰かが切ったのだ。
直後に爆発が起きる。
余りにも高すぎる魔素密度のせいだ。
恐らくダンジョンバーストと同じ原理だろう。
爆発は次の爆発を連鎖させて、遥かな上空に魔素の白煙……いや、真夏の積乱雲の如き雲を出現させた。
辺りが一気に暗くなって、魔香水の雨が降り出す。
もしもこの雨を全て集めることができたら、恐らく市場価格で数百億円分にはなるだろう。
ここには溜めておく手段も持ち帰る手段もないが。
(だが、なぜ神種が倒された……!?
まさか……!?)
「ははは……ッ!
やべえやべえ!!
咄嗟に仮眠スキル使わなかったら死んでた!!」
やがて、嬉しそうな少年の声が聞こえてきた。
見れば、僕の左方10メートルぐらいの所に少年が座り込んでいる。
全身黒焦げで、とりわけ黒ジャージの上衣が完全に溶けていた。
だが、生きていた。
生きていたのだ!
(バカな……ッ!?
なぜ生きているッ!?)
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