第14話、レベル上げの日々

 眠士郎がデュラハンを倒した日から3日後。

 探索者専門学校の教室で、眠のクラスメートたちが騒いでいた。


「じっつは俺、昨日レベル20になっちゃいました!」


 茶髪にピアスを付けたチャラい男子が、これ見よがしにスマホ画面を友人たちに見せながら言った。

 彼は満面の笑みを浮かべている。


「は!? マジか!!」

「すげー!!」


 途端に友人たちが目を丸くする。

 クラスの中でレベルが20を超えているのは、茶髪ピアスの他は吉良と西麻布だけだった。

 つまり彼はクラス内3位である。


「へっへー!」


 茶髪男子が親友たちにピースをする。


「お前最近ちょっとがんばりすぎじゃね!?」

「俺焦るんだけど!」

「どこのダンジョンでレベル上げたんだよ!」

「やり方教えろって!」


 嫉妬した友人たちが茶髪に詰め寄って訊いた。

 すると茶髪は友人の机の上に座り、高みから友人たちを睥睨する。


「いいけど、お前らには無理。

 だって俺、西麻布さんに一回だけダンジョン連れてってもらったんだもの。

 西麻布さんにお金払ってモンスターを倒させて貰ったんだけど、それだけでレベルが5も上がったんだぜ!」

「そういやお前、西麻布さんの荷物持ちするって言ってたもんな……!」

「畜生! ずりい!」

「俺だってCランクダンジョン行ければ! クラスの連中ブチ抜けるのに……!」

「へへっ! ワリワリ!」


 増々図に乗る茶髪。


 すると、そんな彼の姿が余りに眩しかったのだろう。

 友人の一人が「ハア……」溜息を吐く。

 そして友人は教室を見回した。


「あー……そういえばアイツ、いなくなったよな」


 彼が視線を留めたのは、誰も座っていない座席だった。

 ちょうど影になっている。


「アイツ?」

「眠ってザコ。いつも寝てる」

「そんな奴いたっけ。忘れてたわ。急にどうした?」


 茶髪が友人に尋ねる。


「俺さ……アイツがいる事を心の支えにしてたんだよ。

 だって眠がいるうちは、最下位にならなくて済むじゃん」


 友人がやや落ち込み気味にそう答えると、


「あー」「わかる」「わかるわ」


 他の男子たちも次々頷いた。


「俺以下の底辺が居るって考えると、心がスッとするもんな」


 それに茶髪も同意する。


「俺、アイツが居るだけで癒やしだったわ」

「わかる」

「ま、高校生でレベルが10代あるだけでも俺らマシな方じゃね? 一生一桁で終わる奴に比べればさ」

「それな!」

「眠クンに感謝感謝」


 そう言って、茶髪たちはケラケラ愉しそうに笑った。


 一方その頃。

 クラスの最底辺こと、眠士郎は黙々とダンジョンに潜っていた。

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