第25話 見える海


賑やかな昼食を終えた後、大樹が元気よく提案してくる。


「さっきの海の家でスイカ売ってたからスイカ割りやろうぜ。」

「スイカ割りするの!?やったあスイカ割り久しぶりなんだ。やろやろ!」

「私は初めてです。」

「俺もスイカ割りは幼稚園の頃以来だなあ…」


スイカ割りをすることになった。


「「「「最初はグー、じゃんけんぽん。」」」」


じゃんけんで順番が決まる。順番は大樹→陽菜乃→彩香→俺の順だ。

まずは大樹。


「おっ。いい方向だよいい方向だよ大樹。」

「そうか?じゃあこのまま… えいっ!」


俺の言葉を信じ、大樹が勢いよく棒を振り下ろす。


「あれ?」


大樹の持った棒はスイカ一歩手前の砂に入り込んだ。


「クソ~。ちょっと早かったか。」

「次は私ね。」


陽菜乃の番だ。


「いいですよ今です!」

「じゃあ行くよ。えいっ!」


陽菜乃が力いっぱい棒を振り下ろす。


”コンッ!”


棒がスイカに当たる乾いた音が聞こえてくる。


「あれ?」

「割れ… てないな…」


当たりはよかったように思えるが、それでもスイカは割れなかった。


「やっぱり割れてないや。このスイカ硬すぎるのかな?」


目隠しを取って陽菜乃そんなことを言った。


「じゃあ次は私が。」


彩香の番になった。

彩香も良い線行っていたのだが。


「そこ!そこだよ彩香ちゃん!」

「よーし!えい!」


彩香は勢い良くスイカに棒を振り下ろす。


”カーン!”


棒がスイカに当たる乾いた音が鳴り響いた。そしてそれと同時に彩香の声が響き渡る。


「いったーい!」


彩香は目隠しをしたままその場にしゃがみ込む。


「だ、大丈夫!?」


陽菜乃が彩香の元に駆け寄って行く。


「うっわ見るからに痛そー。」

「じゃあ… 翔真。頑張ってください…」

「ああ…」


息を荒くして俺にそんなことを言い、相当痛かったようだ。

幸いケガはなかったようだが。

そして、最後の俺の番になった。

目隠しをして、大樹たちの指示を手掛かりにスイカを目指す。


「いいぞ!その辺だ!」

「OK?」

「そうそう!」

「じゃあ、思いっきり行くぞ。おりゃ。」


俺は思いっきり、スイカに棒を振り下ろす。


”カーン!”


乾いた音が鳴り響く。


これ割れなかったやつかな、と思って俺は目隠しを外す。

そういえば、なんだか周りが騒然としている。


「うわあ折れたぁ!」


なんと、俺が持っていた棒が折れていた。折れたのがスイカの少し手前ポツンと転がっている。

俺は割るはずだったスイカと折れた棒を持って、逃げるように大樹たちの元に戻った。


「見た!?棒折れたよ!」

「私も見た… すごくびっくりした…」

「はい。」

「スイカの硬さに対して棒が貧弱すぎたんじゃね?」

「大樹、この棒どっから持ってきた?」


結局、スイカは海の家の人に切ってもらうことにした。

大樹がスイカを海の家に持って行ってる間、俺はトイレに行った。

大樹が戻ってきたのは、俺がトイレから戻ってきたのとほぼ同時だった。


「よーしじゃあみんなでスイカ食うか。海の家の人もめっちゃ硬かったって言ってたぜ。」

「マジかそんなか。」


ビーチパラソルの下で、俺達4人は横並びになってスイカを食べる。

時間は今さっき午後2時になったところだ。


「んじゃ、いただきます。」


スイカを食べ始めるとともに砂浜に流れるトロピカルな曲を聴きながら、海でスイカを食べる。これはこれでいい。


「なあ翔真。この後どうする?」

「どうするも何も。まあこうしてのんびりするのもありかなあと俺は思ってるけど。」

「せっかくボール持ってきたのにな。」

「ビーチバレーでもやろうとか思ってた?」

「どうだろ。なんかみんなのんびりした感じだしな。」

「増田さんに至っては寝っ転がってるしな。」


半身浴みたいな感じで海に浸かってただおしゃべりする。これはこれでいい気がする。


その後は海から出てみんなで簡単に男女に分かれて結局ビーチバレーをすることにしたのだ。


「じゃあ行くよ。」

「それっ!」

「えいっ!」


3点先取。結果は女子チームの勝ちだった。意外とすぐに終わった。


「それにしてもこんなに体動かしたのなんて久しぶりだなあ。」

「そうだな… ちょっと疲れた。」

「じゃあ私海入ってくるね。」

「なんか疲れたからお風呂入りに行く人みたい。」


陽菜乃は浮き輪で浮かんでいた。大樹は陽菜乃の側で何かを話している。

2人の様子をビーチパラソルの下から見守るように見ている俺ら。

彩香との二人は少し気まづさを感じる。


「ねぇ、翔真。」

「なにいきなり?」

「楽しいね。」

「な、何いきなりそんなこと。 まあ、そうだな。楽しいな。」

「私、友達と一緒にこうやってはしゃぐなんて初めて。」

「そっか、それはよかった。大きな事件もなかったしね。」

「もし、もし私がナンパされたら、翔真どうしてた?」

「そりゃあ、止めに入るよ。でも本当のところは分からん。実際起こらなかった訳だからなあ…。」

「そっか。私はナンパされたときの断りの言葉、考えてたよ。」

「なんて言うつもりだったん?」



「ごめんなさい。好きな人が居るので。だよ。」



「……そっか。」


彩香のその言葉に俺は、なんて返していいか分からなかった。

大樹と陽菜乃が海から上がってくる。時刻はもう3時半過ぎだ。


「そろそろ、集合の時間だな。」

「じゃあ帰るか。」

「ああ。」


更衣室で着替えて荷物をまとめ、浮き輪もしぼめて、俺たちは時間通り集合した。

それからバスに乗って俺らは宿に帰る。

翔真と彩香は疲れたのか眠ってしまっていた。


「ねえ翔真。」


俺は小声で陽菜乃から話しかけられた。


「どうした?」

「私の服と水着、褒めてくれてありがとう。」

「あ、ああ。どういたしまして。」

「翔真の着ていた水着もかっこよかったよ。」

「あ… あ、ありがとう。」

「どうしたの翔真、こんなに照れちゃって。」

「いやーあれ俺が自信持って選んだやつでね。大樹とこの前一緒に買いに行ってたんだ。」

「そうなんだ。話聞きたい聞きたい。」


俺は陽菜乃に、大樹と水着を買いに行った時のことを話した。


「変なの2つも勧められたの?それは大変だったね。」

「ああ。俺にビキニは無理だろ。」


もちろん、冗談とはいえ変なのを2つも勧められたのも含めて。

それからは二人で静かなバスの中、語り合った。

その時間はとても楽しかった。



しばらくバスに揺られて、宿に到着した。

それぞれが眠い目を擦りながら自分の部屋に戻って行った。




――――――――――――――――――



この度は


「LOVE GLASSES ~俺への好感度が0の彼女と別れたら、学校のマドンナ達が言い寄って来た。~」


を読んでいただきありがとうございます!!!!

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