修学旅行 編

第20話 見える沖縄

朝早くから学校に集合し、俺たちは修学旅行の出発の時間をバスの中で今か今かと待ちわびていた。


「さあ、君たちお楽しみの沖縄へ修学旅行だ。羽目を外し過ぎないように楽しめよ。パスポートは持ったか~?」

「先生、沖縄行くのにパスポートは要らないんですよ!」

「何年前のことを言ってるんですか。」

「50年前は要ったんだぞ~。」


先生の渾身のボケにクラスメイトの何人かがツッコミを入れ、和やかな雰囲気に包まれる。

そして、そのすぐ後にバスは空港に向けて出発した。


「翔真、いよいよ沖縄だな。沖縄と言えば、海!!色々、楽しみだな。」

「そうだな。折角の修学旅行。思う存分楽しもうな。」


隣の席に座る戸田とだ大樹だいきとそんな風に話していると、大樹の方のスマホの通知が鳴った。

大樹はその通知の内容を見た時に一つため息をついた。


「どうした、大樹。誰から?」

麻衣まいだよ。麻衣。」


俺が尋ねると、大樹はそう答えながらスマホの画面をこちらに向けてくる。

その画面には大樹の妹である麻衣とのトーク画面が開かれていた。


『欲しいものリスト

 ・ちんすこう

 ・紅イモタルト

 ・シーサーの小さい可愛い置物(センス重要)』


「な、なんか、業務連絡みたいだな。」

「そうなんだよ。最近、麻衣の奴が冷たいんだよ。どうにかしてくれよ~。」

「どうにかしてくれって、どうせ大樹がまた悪いんだろ。俺にも今日の朝にメッセージが来たけど、普通だったぞ。」


俺はそう言って、麻衣から来たメッセージを大樹に見せた。


『おはようございます!翔真先輩。

 今日から沖縄に修学旅行だそうですね。

 お土産とかは要りませんし、先輩が無事に帰ってくることが私へのお土産です!!

 帰ってきたら二人で遊びましょうね。それでは、楽しんで来てくださいね!!』


「……俺と違い過ぎね~か?」

「知るかよ。日ごろの行いだな。」


そんなことを話していると空港に到着した。




到着するや先生方がいろいろな手続きをして、僕らは手荷物検査と皆は金属探知機ゲートへ向かった。



ピンポーン



ハイやらかしましたね、お決まりの様に大樹が引っ掛かる。

何を持ち込んでいたのだか。

そんな大樹とは違い他の生徒たちは何事もなくゲートを潜って行き、飛行機に搭乗した。



『シートベルトをお付けください。』 


機内放送でそんな音声が流れて、いよいよ離陸の時間となった。

俺は三人席の真ん中に座り、両隣は窓側に大樹が、そして通路側には何故か増田ますだ彩香あやかがいつも通りヘッドホンをして本を片手に座っていた。


「どうして、彩香あやかがここに座ってんの?」

「ん?」


ヘッドホンで聞こえなかったのか片耳だけヘッドホンを上げて、聞きなおして

くる。

そのしぐさはどこか色っぽく感じた。


「あ、え、なんで彩香あやかがここに座ってんのかな~って。」

「あ~、ここの席の男子が彼女の隣に座りたいから変わって欲しいって頼んできたから変わってあげた。」


彩香がそう言いながら指さした先に目を向けると、確かに二人席についてイチャイチャしているカップルの姿が見えた。

羨ましいなと思いながら、その光景を見ていると彩香が今度は目を輝かせて尋ねてくる。


「そんなことよりも、沖縄、楽しみだね。木羽優きうゆ先生の聖地巡礼できるかな。」

「そうだな。到着してからすぐに結構な自由時間があるから、出来ると思うよ。一緒に回ろうな。」

「うん!」


そんな会話をしながら、彩香の額の上に見える数字が”ー”から100に戻っていることを確認した。

そんな中、飛行機が動き始め彩香とは逆の方の腕が掴まれた。

その方向に目を向けると、大樹が俺の腕にしがみ付いて震えていた。


「なんだ大樹。飛行機、怖いのか?」

「う、うん。飛行機初めて乗るし、落ちるかもしれないと思ったら外なんて見れない。」

「大樹って意外にビビりなんだな。そんなんだったら何で窓側座ったんだよ。」

「だって、みんな窓側の方が楽しいって言ってたし。」


大樹がそんな風にぶるぶると震えていることなど露知らず。


『離陸いたします。』と機内放送が流れ、次の瞬間強烈なG加速が襲い掛かって来る。

座っている座席が斜めになり街の景色が小さくなる。

しばらくすると雲海を抜けて8000mまで駆け上がり水平飛行になった。


俺の隣の二人は、外の光景なんて気にせずに黙って本を読み始めていたり、俺にしがみ付いていたり。周りの生徒はおおはしゃぎなのに……。




そうして飛行機は長めのフライトを無事に終え、那覇空港へ降り立った。

飛行機から降りたら、大樹はトイレに駆け込んでいった。

そして、次は水の飲めるコーナーで水をガブ飲みしている。


「大樹の奴、マジで怖かったんだなあ。ちびっていたりして。」


その光景を見て、クラスの皆が大笑いしていた。



荷物を受け取り、空港を出るとシーサーさんがお出迎えしてくれた。


「沖縄だ~!!」


皆がそんな風にはしゃぐ中、先生たちは何とか生徒たちを取りまとめ観光バスへ乗車してまず宿泊ホテルへ向かった。


俺は、アロハシャツに白のGパンに着がえて、レイバンをかけ、彩香は、ハイビスカスのワンピースに白い麦わら帽子を被って出て来た。


「さあ、行こう!」

「うん!」


こうして俺たちの修学旅行は始まった。




★★★★★




この度は


「LOVE GLASSES ~俺への好感度が0の彼女と別れたら、学校のマドンナ達が言い寄って来た。~」


を読んでいただきありがとうございます!!!!

皆様のおかげで好評のまま節目の20話まで書くことが出来ました。


続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを押していただけると嬉しいです。


みっちゃんでした( ´艸`)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る