第7話 見える兄妹
「なんの用だよ、いきなり家に押しかけてきて。」
「ごめん、ごめん。
「それは、これを見れば分かる。」
俺は俺に抱きついてきている、小柄な女の子を指さして言う。
小さな体からは想像もできないくらい豊満な物をお持ちで、今も俺の体に押し付けられている。
その感触を堪能しようとする煩悩を咄嗟に振り払い俺は問い詰める。
「連絡の1つや2つあっても良かったんじゃないか、と言っている。」
「いや、麻衣が連絡はするなって。」
「どういうことだ、麻衣。」
「私、翔真先輩と同じ学校に入るために、中学校3年の半年間、会いたいという気持ちを押し殺して勉強して、合格して、やっと半年ぶりに翔真先輩に会えるってなったんですよ?何もしないわけないじゃないですか。
サプライズです!サ・プ・ラ・イ・ズ!頑張った私を褒めてください。」
麻衣は俺に抱きつきながら顔だけこちらに向け、上目遣いでそんなことを言った。
先輩呼びに少し戸惑ったが、そう言えばこの子はそんな子だったなと思い出す。
どんな時でも兄である大樹ではなく、どうしてか俺の方にくっ付いてきていた。
嬉しいことがあった時も、悲しいことがあった時もなぜか真っ先に俺の方に走ってきていた。これまで、事あるごとに好きと言われてきた。
どんなに鈍感な人でもこの好意には気づいてしまうくらいに俺に引っ付いていた。
案の定、彼女の額の上の数字は、
100
だった。
「そっか、頑張ったんだな。すごい、すごい。」
俺は軽く麻衣の頭をさすってやりながら褒めてやった。
「もう!そうやっていつも軽くあしらって。私、そんなに魅力ないですか。」
俺は、麻衣を女の子として、恋愛の対象として見たことはなかった。確かに可愛いが、友達の妹、とか、そういう立場に麻衣はいた。
「はいはい、麻衣は可愛いよ。」
「も〜」
麻衣は頬をぷっくりと膨らませながら俺の方を睨みつけてきた。
可愛いと思うのは嘘じゃないんだけどな。
「はいはい、お二人さん。イチャイチャはそのくらいに。麻衣もいい加減離れなさい。」
大樹はそう言いながら、俺にしがみついた麻衣を俺から引き剥がす。
麻衣も名残惜しそうな目をしながらもすんなりと俺から離れた。
「麻衣、来た理由はほかにあるだろ。」
「そうでした。私、翔真先輩のために料理を勉強したんです。今日の夜ご飯は私に振る舞わせてください!」
「それは、助かるけどいいのか?」
「はい、そのために来たんですから。」
「翔真の事だから、冷蔵庫に材料ないだろ。俺たち2人で買いに行くぞ。」
「あ、ああ。」
「麻衣は翔真の家を堪能しておけ。」
「分かった!」
堪能とはと思いながらも俺は大樹と買い物に出た。
★★★★★★
「翔真、お前今日何してた?」
「え?」
家を出てしばらくすると、いきなりの大樹の問いかけてきた。
「しらばっくれるなよ。お前が普段からそういう風にキメた格好はしないのは知ってる。麻衣は気づかなかったようだけど、俺の目は誤魔化せないぞ。何をしてた?」
俺の肩に腕を回してきて大樹は聞いてくる。
別に隠してた訳じゃないが、聞かれたので正直に答えておく。
「遊んできたんだ。」
「どこで?」
「猫カフェで。」
「猫カフェ!?お前が?誰と、」
「
「へ〜、坂原陽菜乃ね。」
「うん。」
「・・・・・・は?坂原陽菜乃ってあの?三大美女の!?」
「そ、そうだけど。」
「お前、そんなこと俺に隠してたのか?」
「隠してないって。」
「どんなことしたんだ?」
「別に普通に遊んだだけだって。」
「嘘だね。」
それからは、俺の言葉を信じられない大樹に今日あった事を事細かに言わされながら、買い物を済ませまのだった。
買い物から帰ると、麻衣がエプロンを着てお出迎えしてくれた。
「翔真先輩、ご飯にします?お風呂にします?それともわ、た、し?」
「ご飯で。」
新婚夫婦かと突っ込みたくなるようなやり取りを一瞬動揺しながらも、即答すると、そのまま部屋に入った。
「大樹、ちょっと俺疲れたからご飯出来たら起こしてくれ。仮眠とってくる。」
「分かった。」
と伝え、俺は寝室に入りそのまま眠りについたのだった。
「翔真先輩、翔真せんぱーい。」
眠っていた俺の耳に、そんな綺麗な声が届いて来て、俺はゆっくりと目を開け眼鏡をつける。
すると、その先には寝る前にも見たエプロン姿の麻衣が俺を起こしに来ていた。
「麻衣か、おはよう。」
「おはようじゃないですよ。私の料理姿まで見てもらおうと思ってたのに帰ってきてそうそう寝ちゃうんですから。」
顔を膨らましながらそう言う麻衣はとても可愛かった。
「すまんすまん。」
そんな会話をしていると、食欲をそそるようないい匂いが漂ってきた。
「ん、いい匂いがするな。」
「よく気づきましたね、先輩。今日はオムライスを作って見ました。早く一緒に食べましょう!!」
麻衣に連れられ部屋に行くと、テーブルの上には綺麗に盛り付けられたオムライスが2つ置かれていた。
「何で2つしかないんだ?」
「あ、言ってなかったですっけ?
兄は帰らせ、、、、、帰りましたよ。」
麻衣は何か怖いことを言いかけたような気がした。
「どうして?」
「ど、どうして、って、なんかやること思い出したらしい、です。」
「やること?」
「そ、そんなことは今は関係ないです。さぁ、冷めないうちに食べましょう!!」
そう言って、俺たちはそれぞれ席についた。
「いただきます。」
俺は鼻をくすぐるオムライスの匂いに食欲が耐えきれずすぐさまスプーンを持ち、口に運ぶ。
「おいしい。」
「本当です?それは、練習したかいがありました。どんどん食べてください。おかわりもあるので。」
「おう。助かる。」
そうして、オムライスを食べ続け、残りもあと僅かとなったところで、麻衣がとんでもないことを言い始めた。
「そう言えば、今日先輩の家に泊まらせてもらいますね。」
その言葉を聞いて俺は、食べていたオムライスを吹き出しそうになった。
「は~!!??」
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