第8話 無双開始の味っ!!

「グアァァアアア!」

 

 道の先から、稲妻のような咆哮が聞こえてきた。ヌッと巨大な影が、不気味に揺れ動きながら現れる。

 

 ……ドラゴンだ。見た目は先ほど出会ったヤツとさほど変わらないが、色が異なっている。

 その巨体を一面、橙色の鱗で覆っているのだ。亜種といったところか。

 

 だが、もう逃げる必要はない。ヤツと互角にやり合える戦闘力は、充分に有しているから。

 

 グエアァァアアア! ドラゴンがこちらの存在に気付いた。

 長い尻尾を揺らしながら、ドカ、ドカ、ものすごい足音で迫って来る。

 

 エドワールは心の中で、特殊スキルを使用する自分の姿をイメージした。


「鋭爪連斬!」


 すると、たちまち両手の指先から、銀色に光る鋭利な爪が生えて、これまで感じたことのないほどの強大なエネルギーが、全身にみなぎってきた。


 エドワールは、思い切り足を蹴り上げ、ドラゴンの頭部に目がけ飛び込んでいった。


 ザシュ! ザシュ! ザッシュウウウ!!!


 ドラゴンの頭部は、鋭利な爪先によってズタズタに引き裂かれ、痛々しい傷口から、鮮血が勢いよく噴き出す。


「ギャアアア!!」


 ドラゴンは、苦痛に溜まらないといった様子で、断末魔の叫びを上げながら、その巨体を捩じりうねらせる。


 ヘイ、ドラゴンさん。あと96回、攻撃は残っているんだぜ。あんたは、この責め苦を耐え抜くことができるか? 火を噴く暇もねえんじゃないか? アンダースタンド? エエア?


 最高に心地いい気分で、ドラゴンの体躯に鋭爪連斬を繰り出すと、エドワールはスタッと地面に着地した。


 骨の髄までズタズタに引き裂かれたドラゴンは、見るも無残な裂傷をたたえて、バタリと倒れ込んだ。


 ……終わった。その戦闘時間、わずか10秒。余裕だった。


 ここで、固有スキル〈大食い〉が発動する。


 目の前に横たわるドラゴンの死体が、まるでエビチリの海老みたく、ぷりっぷりの肉感に見えて仕方ない。


 エドワールは、何を考える訳でもなく、ただ無心でドラゴンの死体にかぶりついた。


 ああ、旨い! 調理していない生肉であるというのに、昇天するかと思うほどに美味至極!! 

 まるで、叙○苑のユッケっ!!!

 

 どうして今まで、パーティーメンバーが討伐したモンスターを口にしようと思わなかったのだろう。

 過去の自分の愚かさを呪ってやりたい気分だった。

 

 綺麗に平らげたところで、ふたたびステータスを確認してみる。


「ステータスオープン」



エドワール・ルフレン


レベル:40

体力:250

攻撃力:75

防御力:75

素早さ:75


【固有スキル】

大食い


【特殊スキル】

鋭爪連斬+100


煉獄の超咆哮


効果

すべてを焼き尽くす地獄の炎を放つ。属性を貫通してダメージを与える、強力な範囲攻撃である。



 レベル40だって!? 

 戦闘に勝利した経験値に加えて、固有スキル〈大食い〉によってドラゴンの死体から得た経験値が重複したのだ。

 

 常人の二倍、十倍、いや数百倍の効率でレベルが上がってゆく。しかも、特殊スキルのオマケ付き。


「余裕じゃん。ざまあみろ、剣士ハンスめ。あいつら、今に見てろよ」


 エドワールは、鼻歌交じりにスキップをかましてやった。

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