第5話
津山は山信に電話をした「ハイ山信です」「津山です、契約はうまくいった、手付金は1500万だ、あとはよろしく頼む」「うむ」山信は自信のある声で切った。
山信は早速、計画を練った。社名、住所、事業計画、名刺等、会社に必要な物はすべて揃える。社名は(株)p不動産、住所は大阪、住所を大阪にしたのは会社の場所がすぐに悟られないようにするためだ、岩間に対する切り口のキーワードはタワーマンション、関東進出のため、材料費の高騰で契約を急いでいる、都心の土地は高すぎるのでQ駅周辺の土地を捜している等である。よし準備は整った。直接乗り込むぞ。
後日、山信は大安吉日の験をかついで訪ねた。岩間の家は日本庭園をかまえる
堂々たる和風の家だった。山信は軽く深呼吸をして玄関の戸を引いた。
4.5畳ほどの玄関には金屏風が立ててあり来訪者を圧倒している。「ごめんください」 奥から野太い返事で「はい、どなた」岩間は和装で現れた。「こんにちは私はこういうものですが」山信は名刺を差し出すと深々とあたまを下げた。岩間は怪訝そうに名刺を眺めた。山信はすかさず続けた「実は、弊社はタワーマンション用地を探している」ということと用意してきた切り口のことばで続けた。「駅前の売地看板を拝見しまして突然お邪魔して申し訳ございませんが、急いで用地を探しているもんですから、失礼を承知でお邪魔しました。」岩間は突っぱねるように答えた「あの土地は決まったよ」事情を承知している山信はひるむことはなく「それは残念です、弊社でしたら精一杯出せたのですが」岩間は山信に次の言葉を要求するように顎を突き出して「それでいくら出すっていうんだい」山信は腹の中で、(よし、乗ってきたぞ)「材料費は毎日高騰しています、早くマンション建設の契約をすれば原価計算からすると2億までいけます。とにかく毎日が勝負です。」岩間は2億という数字に思わず眉をひそめ「契約をしてしまったからな」内容を承知している山信は落ち着いた声で「それで契約はどこまで進みましたか」「まだ手付までだ」「それでは岩間様が手付倍返しをして2億のほうが得だと思えば先の契約を解除すればいいんじゃないですか」山信はさらに畳み込むように続けた「岩間様が前向きに検討してくれるなら今日、買い付け証明書と申込金100万を置いていきます。もし先方の解約が難しい場合は今日の件は白紙でも結構ですから」岩間は山信のゆるい条件についに乗った。山信は手際よく買付証明書と申込金100万を差し出し「先方の解約がうまくいきそうだったらお電話ください次は本契約に入りますから」山信は重要な一連の行為を玄関であっけなく済ませ岩間の家を出た。
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