第2話

 津山はその日の仕事を終えて家に帰ると妻が堰を切ったように「このままでは美香がかわいそうすぎる、なんとかならないか」と詰め寄ってきた。

 土地の借主の名前は岩間松蔵70歳、代々農家である。周辺の農家が辞めていく中で休耕地を借りまくってきた。土地を貸した農家は法律の知識はまったくなく岩間の思う壺に時効取得されたようだ。JR、Q駅近くにも多くの所有地があった。Q駅は都内から30分の距離にあり最近の開発ラッシュで岩間の資産は莫大になっていた。多くの土地を有する岩間は土地の取引にはたびたび登場してきた。いつでも取引では我を通す傍若無人ぶりだった。不動産業者にとっては厄介な地主だった。

 津山は商売柄駅周辺にある売地の看板を思い出してみた。確か看板の一つに岩間の売地があったかもしれない。津山はある案を思いついた。誰にも言えない計画である、岩間を一泡吹かせてやる。

 津山は仕事で時々付き合っている不動産ブローカーの山信に電話をした。彼は津山より5歳上の60歳であり背が高く白髪交じりのオールバックで黒縁の眼鏡をかけていた。一見、知性を感じさせる風貌だった。

 山信は津山の美味しい話があるという言葉に反応してすぐにやってきた。事務所の応接室で互いに膝をつめよると津山は切り出した。「ある土地をうちの会社で買い、売主に手付金を払い契約をするが、それから先方に契約を解除させて手付金倍返しを頂く」山信はすぐに理解したらしく「俺に、売主に契約を解除させればいいんだな」

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