目には目を歯には歯を

小深純平

第1話

9時のオープンと同時に電話が鳴った「はい、もしもし、津山です。」「奥様の同級生の土田美香と申します。突然、朝早くから申し訳ございません、ご相談があるのですがお伺いしてもよろしいでしょうか」「すぐおいでになるのでしたらお待ちしております。」津山はQ不動産の社長ということもあり朝から予定はたくさん詰まっていたが妻の同級生ということもあり予定を割いて待つことにした。

 土田美香は10分くらいで現れた。少し興奮しているらしく呼吸が乱れていた。前髪をかきあげながら津山をにらんだ。「悔しくて昨夜は眠れなかったんです。実は家を建てようと思い先祖の貸地を借主に買ってもらおうとしたら、借主がこの土地は時効取得ができるので手続きをさせてもらうというんです、そんなことができるんですか」「時効の条件が整っていると可能です。20年以上所有権を主張しないでいると現に所有使用している方が法的な手続きをするとその方のものになる可能性が。」津山は感情を表わさずに淡々とこたえた。美香は泣き出しそうな声を出しながらも「なんとかならないかと」、津山は貸借の経緯を聞くと借主の主張が通りそうな条件が整っているなと思い、土田に「残念ながら」と答えざるを得なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る