【第20話】『 悪魔の黙示録 』







 21.花束の約束【第0章】- episode of zero -〈第20話〉『 悪魔の黙示録 』







 1200万年前、天界と魔界は2冊の本を巡って争いをしていた。


 その一つの本が“エリアの魔導書”である。


 エリアの魔導書は元々は天界にあり、当時天界の王として君臨していたアーサー王が持っていた。


 そんな中、魔界に住む悪魔達は一斉に天界を目指し、エリアの魔導書を持つアーサー王に牙を向けた。


 それから300年もの間、アーサー王率いる騎士団と魔界に住む多くの悪魔達が対峙し、双方とも多くの兵士たちが死んで行く事になるのだ。



 俺達はその時代の事を“死者の時代ゴーストワールド”と呼んだ。



 そして天界と魔界の争いを良く思わない神々の仲裁によって、争いは終結した。

 しかし、その直後、一匹の弱い悪魔によって天界から一冊の本が盗み出されてしまう。


 その本というのが“悪魔の黙示録”と呼ばれる代物だ。

 

 悪魔の黙示録は、元来、天界に住む者達には読む事すら出来ない魔法の書物として有名であった。

 しかし、悪魔ならその本を解読する事ができるのは明白であり、当時天界に住む人々もそれを恐れていた。


 そして恐れていたように、その本を盗んだ悪魔は“悪魔の黙示録”を解読し、多くの上級悪魔を従え、魔界最初の皇帝となった。

 

 のちに奴の名前は語り継がれる事になる。

 魔界を支配してる悪魔の一族、ルシフ族は奴の末裔まつえいであるとの噂も囁かれる程に。


 それからその本は何処を探しても見つかることはなかった。

 幾億もの数を誇る異孵世界パラレルワールドを探し尽くしても、その本の行方は全く分からなかった。


 そもそも世界には、天世界、神世界、魔世界、獄世界、異孵世界、楽世界の6つの世界が等しく並んでいる。


 その中でも天界と呼ばれる世界には、日の栄、月の栄、星の栄の3つに区分されており、その全てを統治しているのがオレア・エウロパエア・ソロモン栄国王である。

 

 ソロモン王は知恵の権能を使い、悪魔の黙示録を発見するのだが、黙示録の後ろのページは悪魔の手によって破り取られていた。


 そして残りのページは、800年前にソロモン栄国王によって、天界の月の栄に封印される事となった。

 その時期と同時に、異孵世界パラレルワールドでは、恐ろしい災害に見舞われる事になる。


 それが“時の崩壊”である。


 “時の崩壊”は突然世界を侵食し始め、多くの異孵世界パラレルワールドを消滅へと追いやった。

 そして、その“時の崩壊”を食い止める手段を模索していた神々は、封印された悪魔の黙示録を解放し、解読を試みることにした。


 するとそこには、驚くべき事に“時の崩壊”について小さく書かれているのが分かった。


 異孵世界パラレルワールドを全て消滅させてしまう無常の天災を防ぐ方法はただ1つである。


 その1つの方法について、そこにはこう書かれてあった。


 《 時の権能を獲得した者であれば、時間を操る事が来る。そして、時間を操る能力を駆使して、時の崩壊を止める事が出来るであろう。 》


 その一節を読んだ神々は、幾億もの世界で王の器を見つけ出し、権能の力を与え始めた。

 しかし、一向に“時の権能の獲得者”は現れなかった。


 それから800年の月日が流れ、幾億もの異孵世界パラレルワールドが時の崩壊によって消滅していった。

 そして今、ようやく“時の権能の獲得者”が現れた。


 その事について、悪魔の黙示録にはこう書かれてあったそうだ。


 《 真っ暗な世界に雫が落ちた。その波紋は広がり、やがて世界を覆い尽くすであろう。そしてその中から這い上がった者が時の権能を獲得できる。 》


 この文がなにを意味しているのかは分からないが、現に今、時の権能者は現れ、異孵世界パラレルワールドは並行を取り戻そうとしている。


 俺の仮説が正しければ、時の崩壊が起こる原因も悪魔の黙示録やエリアの魔導書がここまで大きく関係しているのも偶然では無いはずだ。


 これら全ての予言的記述は、恐らく今後起こりうる事柄をも的中させてしまうだろう。

 だとしたら、俺達は対策を講じるべきでは無いだろうか?


 時の権能者が目を覚ます前に、俺達に出来ることはまだ多くあるように思える。

 その為にも情報を集め、ソロモン王に報告する事が先決だろう。



 全ては悪魔の黙示録を解読すれば分かるのかも知れない。



 俺達は月の書庫にある書物を片っ端から読み漁り、それらから得られた情報をソロモン王へ報告した。


 時の崩壊、時の権能、エリアの魔導書、悪魔の黙示録、そして新たに生まれた若い権能者。


 これらの関係性と接点について、俺達はまたソロモン王に謙り、事細かく報告した。


 これはあくまで仮説だが、これらの関係性を利用して裏で暗躍している人物が居るに違いない。


 悪魔の黙示録に書かれてあるよう時の崩壊を予知し、あの少年に時の権能の力を与える為にエリアの魔導書を渡した人物がいるのかも知れない。


 俺達が報告を終えると、ソロモン王は苦い目つきで俺達を玉座から見下ろしていた。


「……そうか。」


 その一言の返事に、俺達はまた腰を低くした。


「はい。ですので悪魔の黙示録を解読する事は、今後の事を決める上で非常に大切な鍵となるでしょう。」


 ソロモン王は少し考え、俺達に命じた。


「よし、いいだろう。この本はしばらくお前達が持っていていろ。そして時の崩壊を予知している事を俺に示せ。」


「御意。」


 俺達は報告を終え、今度は悪魔の黙示録の解読の為、言語学者の元へ行こうとする。

 すると後ろから大きな音を立てて、1人の若い王宮大臣がソロモン王のいる王室へ入ってきた。


「失礼いたします。報告、例の少年が目を覚ましたようです。」


 その一言に、ソロモン王はまた苦い目をしながら聞いていた。


 そして、その場にいる全員に向けて言い放った。


「俺が奴と話をしよう。お前達は悪魔の黙示録の解読に専念しろ。奴の話を聞きたい気持ちは分かるが、まずは俺が行って見定めてこよう。」



 




 

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